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ベルギー・アントワープで開かれた第16回の世界最優秀ソムリエコンクールは、ドイツのマルク・アルメルト(Marc Almert)が優勝した。2位はデンマークのニナ・ジェンセン(Nina Jensen)、3位はラトヴィアのレイモンズ・トムソン(Raimonds Tomsons)。森覚氏(日本代表)と岩田渉氏(アジア・オセアニア代表)は、準決勝に進出し、森氏は17位、岩田氏は11位だった。
コンクールは63か国から各国代表と3大陸代表の66人が出場し、実技、ブラインド・テイスティング、理論やビジネス知識を問う筆記などの試験をくぐり抜けた19人が準決勝に進んだ。理論の試験では、キプロスの甘口コマンダリア(Commandaria)を生むすべてのアペラシオンを挙げるなどの難問が出され、実技も落とし穴が多い難しい内容。15日に3人によって公開決勝が行われた。
27歳のアルメルトは初出場で栄冠を獲得した。繰り返し挑戦してもなかなか優勝できない選手もいる中で、なぜ短期間で可能になったのか?
ケルン生まれ。18歳まではアルコールが嫌いで、最初はホテルの支配人を目指していた。料飲業界で働き、6年間にわたりソムリエを務める。ラインガウで最初の職を得て、ハンブルグのレストランでも働き、ソムリエの魅力に目覚めた。2017年1月から、チューリッヒの5つ星ホテル「ボー・オー・ラック」(Baur au Lac)で、ソムリエを務める。17年11月、ドイツの最優秀ソムリエに選ばれた。
ボー・オー・ラックはミシュラン2つ星レストランを抱える名門ホテル。アルメルトが就職したのは、ワイン目当ての目利きの客が来るホテルだったからだという。レストラン支配人はアルメルトのメンターとなった。1844年に始めたスイス初のワイン商「Baur au Lac Vins」がホテル内にあり、レアワインを含む各国の3000本以上のワインコレクションを取り扱っている。充実したワインリストと最高の顧客を抱えるホテルの選択によって、短期間で世界のワインに精通し、失敗の許されないサービスを身に着けたようだ。アスリート同様に、環境を自ら作るのも能力のうちだ。
ドイツの主要紙「南ドイツ新聞」のインタビューによると、コンクールの準備を始めたのはドイツ最優秀ソムリエになった約1年半前から。ドイツのソムリエ協会のサポートを得て、他国の出場選手との共同トレーニングも行った。これはお互いの能力を知ると同時に、自己の実力の客観視につながる。カナダ・モントリオールでは、オリンピック選手とストレス管理について話し合い、睡眠の研究者から健全な睡眠時間や睡眠のとり方について教わったという。実力が伯仲すると、オリンピックと同じく、メンタルトレーニングが勝負を分ける。
アルメルトのコンクールの集中的な準備の仕方は、難しい資格試験の挑戦法、本番の戦い方、ビジネスの課題の克服など多彩な分野に応用できる示唆を含んでいる。
2位のジェンセンは26歳。2013年東京大会のカナダ代表のヴェロニク・リヴェストに続く女性の2位。トムソンはヨーロッパ・チャンピオン。田崎真也・日本ソムリエ協会会長が事前に予想していた通り、中央から北部ヨーロッパの若手選手が健闘した。
セミファイナリストのうち、前回の2016年アルゼンチン大会では、3位だったジュリー・デュピュイ(アイルランド)が8位、2位だったダヴィッド・ビロー(フランス)が12位。若手の台頭が目立つ激戦だった。日本選手も含めて、実力が接近している戦いだったのは間違いない。
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