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高テンションで疾走、ルシアン・ル・モワンヌのムニール

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 落ち着いた造り手の多いブルゴーニュで、ムニール・サウマだけはテンションが高かった。

 ルシアン・ル・モワンヌを20年足らずで、トップ・ネゴシアンに育てた。レバノン生まれだが、ピノ・ノワールにひかれて、1994年にやってきた。当時は22歳。昔はジャーナリストになりたかったそうだ。95年に初のワインを手がけて、99年に会社を立ち上げた。

 現在のワイン造りとは少し違う手法をとる。

 樽熟成期間が長い。2012年は赤も白もまだ樽の中。6月から7月に瓶詰めするそうだ。大半の生産者は昨年末から3月までに瓶詰めするというのに。ここでは、2011を詰めたのも昨年11月だ。

 「ワインは澱の上にある。自然のガスに守られているから平気だ。還元状態になったらハッピー。酸化防止剤は使わない」

 勢いよくまくしたてる。

 昔の手法に戻っているだけという。牛を飼い、野菜を育て、ブドウを栽培する。ワインは蔵で熟成させるだけ。カーヴは今より涼しかったから、発酵は長く続いた。そうかもしれない。彼のセラーはボーヌの外周道路からちょっと出たところにあり、自宅と一緒になっている。ワインと暮らしている。

 ブルゴーニュのライブラリーを作るのが夢。様々な区画のワインを少量生産する。テロワールの違いこそがブルゴーニュの本質だという。ワインは言うほどには還元していない。ジューシーで、シルキー。抽出過剰でもない。自然な味わいだ。

 彼のテロワールの定義は、多くの造り手の定説とは微妙に異なるが、彼の解釈するブルゴーニュだと考えればそれでいい。

 白の最後はモンラッシェだった。ピュリニー・モンラッシェ村側と、シャサーニュ・モンラッシェ村側を1樽ずつ仕込んでいる。

 「どちらかわかるか。両方飲むまで答えを言うなよ」

 これは案ずるまでもなかった。

 最初がミネラルサイドに寄り、2番目はふくよかで熟している。

 「後の方がシャサーニュだろ」

 「その通りだ。シャサーニュの方がリッチなんだ。たいがいは逆に答えるのだが」と、うれしそうだった。

 でも、最後に落とし穴が待っていた。

 「罠があるからな」と差し出された赤ワイン。ボンヌ・マールかと思ったら、彼が自社畑で造るシャトー・ヌフ・デュ・パプ2010。16%のアルコール度を感じさせない優雅な味わいだった。

 ボブ・ディランのファンということもわかり、私がインタビューした話で盛り上がった。妙に気の合ういい男だった。

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