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スペインのルエダから産するベルデホが今、スペイン国内だけでなく、世界を席巻している。キレがよく、リフレッシュさせられるお手頃な白ワインとして、アペリティフから魚介類まで、幅広く使われている。和食との相性もよく、日本でももっと注目されていいワインだ。スペインをベースに活動するサム・ハロップとアンドレアス・クバックという2人のマスター・オブ・ワインが来日したのを機に、輸入されている主なベルデホ19銘柄をすべて試飲した。
ハロップ&クバックMWは、試飲したボデガス・フォンタナの醸造に関わっているが、評価はすべてブラインド・テイスティングで行われた。2人ともスペインのコンサルタント会社「ペニンシュラ・ビニクルトーレス」を運営しており、スペインワインはもちろん、醸造家の見地から、細部にこだわる客観的な評価を披露した。
ベルデホ(Verdejo)という品種名は、「Verde」(緑)から来ている。主要な産地はカスティーリャ・イ・レオン州のルエダ。ルエダはバリャドリッドの南に位置し、トロとリベラ・デル・ドゥエロにはさまれている。ムスリム支配下のイベリア半島で暮らしていたキリスト教徒のモサラベが植えたと考えられている。DNA分析によると、スペイン北西部ガリシアのゴデージョと兄弟とされる。
ベルデホは、スペインの白ワインでは4番目の栽培面積を誇る。アロマティックで、レモン、白桃、ローリエ、アーモンドのノートがあり、酸は高め。ルエダではソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多い。DOルエダは少なくとも50%のベルデホを含み、残りはソーヴィニヨン・ブランかビウラ。ルエダ・ベルデホは85%以上だが、大半は100%ベルデホで造られている。
ルエダは典型的な大陸性気候で、昼夜の温度差が大きい。土壌は小石、砂、シルトなどが混じった沖積土壌。標高が600m以上と高く、テンプラニーリョが熟しにくいため、白ブドウの産地として発展した。かつては黒ブドウ中心の産地だったが、フィロキセラによって白ブドウが主体になった。
ルエダの白ワインは、スペインで最もよく売れている白ワインだ。1970年代までは、パロミノがルエダの主要品種で、酒精強化スタイルに仕立てられてきた。リオハのマルケス・デ・リスカルが、ボルドー大のエミール・ペイノー教授と手を組んで、ベルデホからクリーンでフレッシュなワインを造り始めて、流れが変わった。それ以前は酸化したスタイルか、酒精強化スタイルで、評価が低かった。80年にカスティーリャ・イ・レオン州初のDOとしてDOルエダが誕生し、多くの生産者がドライで香り高いベルデホを生産し始めた。
ステンレスタンクで醸造されるフレッシュなワインが多いが、樽を使うワインも一部にあり、酒精強化タイプのドラドも復活している。ハーブやレモンのアロマがあるベルデホは、ソーヴィニヨン・ブランと似たところがあるが、果実の厚みがあり、日本の食卓で、応用範囲の広いワインだ。
19銘柄のうち13銘柄が平均点85点以上の「優良」と評価された。最も平均点が高かったのは、意外なことに酒精強化の「デ・アルベルト ドラド NV」で、「ナイア 2017」、「ベロンドラーデ・イ・リュルトン 2016」と続いた。
個別のワインの評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/1989/
山本昭彦「ワイン単体で評価した場合、飛び抜けたものは見当たらなかったが、全体的にアフォーダブルな価格帯で、日本の魚介料理と合わせやすいワインが多かった。カジュアルで、アプローチャブルなワインが多いのは大きな魅力だ。ソーヴィニヨン・ブランと共通する柑橘類やハーブのニュアンスがあるが、熟度が高く、まろやかさやがあり、オリーブオイルを使ったタパスや料理と合わせやすい。樽を使ったワインも魅力的だが、フレッシュなうちに早飲みしたい」
大橋健一MW「ベルデホはMWの履修プログラムには欠かせないワインだが、プロヴァンスのロゼの時と同じく、傑出したワインが見当たらなかったが、スタイルに多様性があった。幾分グラッシーなタイプや、スキンコンタクトからくるフェノリックスの感じられるものもある。グラッシーだが、その理由はソーヴィニヨン・ブラン用の4MMPを高生成する酵母からくるものかどうかは判断が私には難しいところだ。テクスチャーは全体的に丸く、エッジのきいたスタイルはなく、標高の高い畑でも暑いことがうかがえる。酸がゆるいので、うんと冷やせば、香りがアプローチャブルになって使いやすいだろう」
サム・ハロップMW「高品質で一貫性のあるワインは少なく、やや失望させられた。品種としては、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランのように若いうちに飲むべきワイン。ソーヴィニヨン・ブラン用の酵母を使って、サイオリックなスタイルに仕上げたプロトスやガルムは、フルーティでフレッシュ。成功しているが、一方でやや疲れたワインも見られた。2017年は試練のヴィンテージ。酸と果実が統合されず苦しんでいる。ベロンドラーデ・イ・リュルトンは、オークが溶け込んだテクスチャーがあり、グラーヴのようなタイプのワイン」
アンドレアス・クバックMW「ナイアやプロトスはよくできている。グラッシーでガスを残して、フレッシュ感を保ち、品種の特性をきれいに表現している。基本的には保管せずに、早めに飲むべきワイン。ベルデホとオークが調和するかについては、多くのワイン専門家が論争しているが、プロトスはオークが支配的でも、果実がきちんとあり、成功している。2017年は暑くて、乾燥したヴィンテージで楽しめるものが少ない。安価なワインは補酸もしている。酒精強化されたドラドは古いスタイルだが、興味深く、復活の動きがある」
大越基裕「オーキーなものや熟成しているものも見られたが、フレッシュで柑橘類やリンゴのような果実感にグラッシーで、若くして楽しむべきワインが主体。ワインの質だけに注目すれば、まとまりがあり際立ったものは少ないが、世界中でライト&フレッシュな料理シーンが注目されている中で、素材をよりリスペクトしたタイプの軽い火入れの魚介や野菜料理などと相性の良い高品質なワインを産している、世界でも数少ない産地と品種の一つだと思われる。」
ハロップ&クバックMWは、試飲したボデガス・フォンタナの醸造に関わっているが、評価はすべてブラインド・テイスティングで行われた。2人ともスペインのコンサルタント会社「ペニンシュラ・ビニクルトーレス」を運営しており、スペインワインはもちろん、醸造家の見地から、細部にこだわる客観的な評価を披露した。
ベルデホ(Verdejo)という品種名は、「Verde」(緑)から来ている。主要な産地はカスティーリャ・イ・レオン州のルエダ。ルエダはバリャドリッドの南に位置し、トロとリベラ・デル・ドゥエロにはさまれている。ムスリム支配下のイベリア半島で暮らしていたキリスト教徒のモサラベが植えたと考えられている。DNA分析によると、スペイン北西部ガリシアのゴデージョと兄弟とされる。
ベルデホは、スペインの白ワインでは4番目の栽培面積を誇る。アロマティックで、レモン、白桃、ローリエ、アーモンドのノートがあり、酸は高め。ルエダではソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多い。DOルエダは少なくとも50%のベルデホを含み、残りはソーヴィニヨン・ブランかビウラ。ルエダ・ベルデホは85%以上だが、大半は100%ベルデホで造られている。
ルエダは典型的な大陸性気候で、昼夜の温度差が大きい。土壌は小石、砂、シルトなどが混じった沖積土壌。標高が600m以上と高く、テンプラニーリョが熟しにくいため、白ブドウの産地として発展した。かつては黒ブドウ中心の産地だったが、フィロキセラによって白ブドウが主体になった。
ルエダの白ワインは、スペインで最もよく売れている白ワインだ。1970年代までは、パロミノがルエダの主要品種で、酒精強化スタイルに仕立てられてきた。リオハのマルケス・デ・リスカルが、ボルドー大のエミール・ペイノー教授と手を組んで、ベルデホからクリーンでフレッシュなワインを造り始めて、流れが変わった。それ以前は酸化したスタイルか、酒精強化スタイルで、評価が低かった。80年にカスティーリャ・イ・レオン州初のDOとしてDOルエダが誕生し、多くの生産者がドライで香り高いベルデホを生産し始めた。
ステンレスタンクで醸造されるフレッシュなワインが多いが、樽を使うワインも一部にあり、酒精強化タイプのドラドも復活している。ハーブやレモンのアロマがあるベルデホは、ソーヴィニヨン・ブランと似たところがあるが、果実の厚みがあり、日本の食卓で、応用範囲の広いワインだ。
19銘柄のうち13銘柄が平均点85点以上の「優良」と評価された。最も平均点が高かったのは、意外なことに酒精強化の「デ・アルベルト ドラド NV」で、「ナイア 2017」、「ベロンドラーデ・イ・リュルトン 2016」と続いた。
個別のワインの評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/1989/
山本昭彦「ワイン単体で評価した場合、飛び抜けたものは見当たらなかったが、全体的にアフォーダブルな価格帯で、日本の魚介料理と合わせやすいワインが多かった。カジュアルで、アプローチャブルなワインが多いのは大きな魅力だ。ソーヴィニヨン・ブランと共通する柑橘類やハーブのニュアンスがあるが、熟度が高く、まろやかさやがあり、オリーブオイルを使ったタパスや料理と合わせやすい。樽を使ったワインも魅力的だが、フレッシュなうちに早飲みしたい」
大橋健一MW「ベルデホはMWの履修プログラムには欠かせないワインだが、プロヴァンスのロゼの時と同じく、傑出したワインが見当たらなかったが、スタイルに多様性があった。幾分グラッシーなタイプや、スキンコンタクトからくるフェノリックスの感じられるものもある。グラッシーだが、その理由はソーヴィニヨン・ブラン用の4MMPを高生成する酵母からくるものかどうかは判断が私には難しいところだ。テクスチャーは全体的に丸く、エッジのきいたスタイルはなく、標高の高い畑でも暑いことがうかがえる。酸がゆるいので、うんと冷やせば、香りがアプローチャブルになって使いやすいだろう」
サム・ハロップMW「高品質で一貫性のあるワインは少なく、やや失望させられた。品種としては、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランのように若いうちに飲むべきワイン。ソーヴィニヨン・ブラン用の酵母を使って、サイオリックなスタイルに仕上げたプロトスやガルムは、フルーティでフレッシュ。成功しているが、一方でやや疲れたワインも見られた。2017年は試練のヴィンテージ。酸と果実が統合されず苦しんでいる。ベロンドラーデ・イ・リュルトンは、オークが溶け込んだテクスチャーがあり、グラーヴのようなタイプのワイン」
アンドレアス・クバックMW「ナイアやプロトスはよくできている。グラッシーでガスを残して、フレッシュ感を保ち、品種の特性をきれいに表現している。基本的には保管せずに、早めに飲むべきワイン。ベルデホとオークが調和するかについては、多くのワイン専門家が論争しているが、プロトスはオークが支配的でも、果実がきちんとあり、成功している。2017年は暑くて、乾燥したヴィンテージで楽しめるものが少ない。安価なワインは補酸もしている。酒精強化されたドラドは古いスタイルだが、興味深く、復活の動きがある」
大越基裕「オーキーなものや熟成しているものも見られたが、フレッシュで柑橘類やリンゴのような果実感にグラッシーで、若くして楽しむべきワインが主体。ワインの質だけに注目すれば、まとまりがあり際立ったものは少ないが、世界中でライト&フレッシュな料理シーンが注目されている中で、素材をよりリスペクトしたタイプの軽い火入れの魚介や野菜料理などと相性の良い高品質なワインを産している、世界でも数少ない産地と品種の一つだと思われる。」
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