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アルトゥケのアルトゥロ・ド・ミゲルと話しているうちに、バローロ・ボーイズのエリオ・アルターレとの会話を思い出した。伝統産地に新たな動きが生じる時、造り手たちは同じような行動をとるようだ。
アルトゥケ、テンテヌブロ、ラヴェンチュラなど若い造り手が率いる7つの小規模ワイナリーが2016年、「リオハン・ロール」(Rioja 'n' Roll)と名乗るグループを結成した。規則や決まりのないゆるやかな集団だ。アルトゥロは「月に最低1度は集まって酔っ払っている」と言うが、試飲する中で、親から引き継いだ畑の個性を尊重するワイン造りのアイデアを話し合っている。細かい手法は異なるが、介入を排して環境に配慮したワイン造りという哲学で共通している。
アルトゥロはグループのリーダー的な存在。ブルゴーニュに4回、ボルドーに3回、コート・ロティに3回、シャトー・ヌフ・デュ・パプにも旅した。「バローロやトスカーナ、モーゼルなど旧世界を回るほうが新世界より学ぶことが多い。ボージョレも好きなワインだ」と。1970年台半ば、ブルゴーニュに旅して、バローロの伝統的なワイン造りを変革するヒントを得たアルターレやルチアーノ・サンドローネを思い出させるではないか。
アルターレの改革はブルゴーニュで、ルネ・アンジェルがポルシェに乗っているのを見て、「我々はなぜフィアットなんだ」と疑問を持ったところから始めたと、若手生産者から聞いた。リオハン・ロールのメンバーは、埃っぽい四駆に乗っているが、単一畑の表現にこだわり、シャンパーニュのように大手生産者が支配してきたリオハに風穴を開けようとしている。
アルトゥケ(Artuke)はリオハ・アラベサ地区の小さなバニョス・デ・エブロ(Banos de Ebro)村にボデガスを構える。ラ・リオハ州を流れるエブロ川の北岸で、バスク自治州に属する。アルトゥロ(Arturo)とキケ(Kike)のド・ミゲル兄弟が1991年にワイナリーを創設した。父ロベルトはバルクワインをクネ、ムガ、トンドニアなどに売っていた。リオハ大で栽培と醸造を学んだアルトゥロは、粘土石灰質主体の25haの72区画をオーガニックで栽培する。カンタブリア山脈が雨雲を遮り、年間降水量は400-500m。
ほかのワイナリーと同じく、アルトゥロもコラヴァンでワインを注ぐ。リオハ・アラベサ地区の伝統的なセミカルボニック・マセラシオンで生き生きしたキュヴェにまずは注目。エントリーレベルの「アルトゥケ 2017」(Artuke 2017)はお値打ちだ。ヴァニョス・デ・エブロ村の石灰岩土壌の複数の区画をブレンドした。紫が強く、搾りたてのレッドベリー、オレンジの皮、ジューシーで、果実味が口中で弾ける。フレッシュで心地よい。自然派ボージョレを連想させる。テンプラニーリョにビウラ5%をブレンド。黒ブドウに白ブドウをブレンドすることでフレッシュ感を与えている。これだけ日本に輸入されている。2240円。88点。
「アルトゥケ ピエス・ネグロ 2016」(Artuke Pies Negros 2017)はカンタブリア山麓アバロス(Avalos)村の9区画をブレンド。村を表現するのも昔ながらの造り方だ。標高は高いところで620mに達する。テンプニーリョにグラシアーノ10%をブレンド。足でピジャージュすることから「黒い足」と名付けた。コンクリートとカスクで熟成。スミレ、レッドチェリー、香り高く、生き生きした酸がみなぎっている。ピュアな果実がスルリとのどを滑り落ち、さらに飲みたくなる。ほのかにブランシュガー。リフレッシュさせられる。標高の高さと大西洋気候の冷涼感を感じる。90点。
ヴィラージュを表現するアプローチャブルなワインは最良のデイリーワインになりうるが、ここは4つの単一畑の水準がきわめて高い。おっとりしたアルトゥロだが、かなりの切れ者である。土壌と地勢を考慮しながら、ち密に造られている。
「アルトゥケ フィンカ・ド・ロス・ロコス 2016」(Artuke Finca de Los Locos 2016)は砂と砂利に活性化石灰岩の交じるエブロ川に近い2.8haのテラス畑から。テンプラニーリョにグラシアーノ20%ブレンド。通常はブドウを植えないような場所で、アルトゥロの祖父が購入した際はクレイジーと呼ばれたそうだ。500-600Lの樽とフードルで熟成する。濃密で、力強く、しっかりしたストラクチャー。チョーキーなタンニン、キレのいい酸、ダークチェリー、プラム、うまみののったパレット、フィニッシュはリフレッシュさせられる。酸を大切にするアルトゥケのスタイルがよく表現されている。92点。
「アルトゥケ パソ・ラス・マニャス 2016」(Artuke Paso Las Manas 2016)はテンプラニーリョ100%。サマニエゴ(Samaniego)村の粘土と石が多い3.9haの斜面から。標高700m。ジューシーでフレッシュ、しなやかなタンニン、生き生きした酸。レッドチェリー、ザクロ、軽やかさがあり、引き締まったチョーキーなフィニッシュ。これも涼しさを感じる。93点。
「アルトゥケ エル・エスコラデロ 2016」(Artuke El Escolladero 2016)はアバロスの粘土石灰岩土壌の0.95haから。レッドチェリー、ガリーグ、洗練されたタンニン、うまみたっぷりのパレット、やや厳格だが、調和がとれている。深みがあり、リフレッシュさせられるフィニッシュ。1190本の生産。93点。
「アルトゥケ ラ・コンデナダ 2016」(Artuke La Condenada 2016)は打ち捨てられていた畑を2012年に回復した。1920年に植えたテンプラニーリョ主体で、ガルナッチャ、グラシアーノも交じるフィールドブレンド。ブラックベリー、カシス、ミント、複雑な香りが層を成し、あらゆる要素が継ぎ目なくつながっている。ジューシーで、横に広がった果実がフィニッシュで垂直的に統合される。1859本生産だが、探してでも飲むべき。リオハの概念を変えうる1本だ。95点。
テンテヌブロ同様、歴史のある畑を伝統的な手法で醸造し、とてつもなくフレッシュでジューシーなワインをものにしている。ティム・アトキンの格付け1級。リオハン・ロールのスターはもっとビッグになる可能性がある。
輸入元はウミネコ。
アルトゥケ、テンテヌブロ、ラヴェンチュラなど若い造り手が率いる7つの小規模ワイナリーが2016年、「リオハン・ロール」(Rioja 'n' Roll)と名乗るグループを結成した。規則や決まりのないゆるやかな集団だ。アルトゥロは「月に最低1度は集まって酔っ払っている」と言うが、試飲する中で、親から引き継いだ畑の個性を尊重するワイン造りのアイデアを話し合っている。細かい手法は異なるが、介入を排して環境に配慮したワイン造りという哲学で共通している。
アルトゥロはグループのリーダー的な存在。ブルゴーニュに4回、ボルドーに3回、コート・ロティに3回、シャトー・ヌフ・デュ・パプにも旅した。「バローロやトスカーナ、モーゼルなど旧世界を回るほうが新世界より学ぶことが多い。ボージョレも好きなワインだ」と。1970年台半ば、ブルゴーニュに旅して、バローロの伝統的なワイン造りを変革するヒントを得たアルターレやルチアーノ・サンドローネを思い出させるではないか。
アルターレの改革はブルゴーニュで、ルネ・アンジェルがポルシェに乗っているのを見て、「我々はなぜフィアットなんだ」と疑問を持ったところから始めたと、若手生産者から聞いた。リオハン・ロールのメンバーは、埃っぽい四駆に乗っているが、単一畑の表現にこだわり、シャンパーニュのように大手生産者が支配してきたリオハに風穴を開けようとしている。
アルトゥケ(Artuke)はリオハ・アラベサ地区の小さなバニョス・デ・エブロ(Banos de Ebro)村にボデガスを構える。ラ・リオハ州を流れるエブロ川の北岸で、バスク自治州に属する。アルトゥロ(Arturo)とキケ(Kike)のド・ミゲル兄弟が1991年にワイナリーを創設した。父ロベルトはバルクワインをクネ、ムガ、トンドニアなどに売っていた。リオハ大で栽培と醸造を学んだアルトゥロは、粘土石灰質主体の25haの72区画をオーガニックで栽培する。カンタブリア山脈が雨雲を遮り、年間降水量は400-500m。
ほかのワイナリーと同じく、アルトゥロもコラヴァンでワインを注ぐ。リオハ・アラベサ地区の伝統的なセミカルボニック・マセラシオンで生き生きしたキュヴェにまずは注目。エントリーレベルの「アルトゥケ 2017」(Artuke 2017)はお値打ちだ。ヴァニョス・デ・エブロ村の石灰岩土壌の複数の区画をブレンドした。紫が強く、搾りたてのレッドベリー、オレンジの皮、ジューシーで、果実味が口中で弾ける。フレッシュで心地よい。自然派ボージョレを連想させる。テンプラニーリョにビウラ5%をブレンド。黒ブドウに白ブドウをブレンドすることでフレッシュ感を与えている。これだけ日本に輸入されている。2240円。88点。
「アルトゥケ ピエス・ネグロ 2016」(Artuke Pies Negros 2017)はカンタブリア山麓アバロス(Avalos)村の9区画をブレンド。村を表現するのも昔ながらの造り方だ。標高は高いところで620mに達する。テンプニーリョにグラシアーノ10%をブレンド。足でピジャージュすることから「黒い足」と名付けた。コンクリートとカスクで熟成。スミレ、レッドチェリー、香り高く、生き生きした酸がみなぎっている。ピュアな果実がスルリとのどを滑り落ち、さらに飲みたくなる。ほのかにブランシュガー。リフレッシュさせられる。標高の高さと大西洋気候の冷涼感を感じる。90点。
ヴィラージュを表現するアプローチャブルなワインは最良のデイリーワインになりうるが、ここは4つの単一畑の水準がきわめて高い。おっとりしたアルトゥロだが、かなりの切れ者である。土壌と地勢を考慮しながら、ち密に造られている。
「アルトゥケ フィンカ・ド・ロス・ロコス 2016」(Artuke Finca de Los Locos 2016)は砂と砂利に活性化石灰岩の交じるエブロ川に近い2.8haのテラス畑から。テンプラニーリョにグラシアーノ20%ブレンド。通常はブドウを植えないような場所で、アルトゥロの祖父が購入した際はクレイジーと呼ばれたそうだ。500-600Lの樽とフードルで熟成する。濃密で、力強く、しっかりしたストラクチャー。チョーキーなタンニン、キレのいい酸、ダークチェリー、プラム、うまみののったパレット、フィニッシュはリフレッシュさせられる。酸を大切にするアルトゥケのスタイルがよく表現されている。92点。
「アルトゥケ パソ・ラス・マニャス 2016」(Artuke Paso Las Manas 2016)はテンプラニーリョ100%。サマニエゴ(Samaniego)村の粘土と石が多い3.9haの斜面から。標高700m。ジューシーでフレッシュ、しなやかなタンニン、生き生きした酸。レッドチェリー、ザクロ、軽やかさがあり、引き締まったチョーキーなフィニッシュ。これも涼しさを感じる。93点。
「アルトゥケ エル・エスコラデロ 2016」(Artuke El Escolladero 2016)はアバロスの粘土石灰岩土壌の0.95haから。レッドチェリー、ガリーグ、洗練されたタンニン、うまみたっぷりのパレット、やや厳格だが、調和がとれている。深みがあり、リフレッシュさせられるフィニッシュ。1190本の生産。93点。
「アルトゥケ ラ・コンデナダ 2016」(Artuke La Condenada 2016)は打ち捨てられていた畑を2012年に回復した。1920年に植えたテンプラニーリョ主体で、ガルナッチャ、グラシアーノも交じるフィールドブレンド。ブラックベリー、カシス、ミント、複雑な香りが層を成し、あらゆる要素が継ぎ目なくつながっている。ジューシーで、横に広がった果実がフィニッシュで垂直的に統合される。1859本生産だが、探してでも飲むべき。リオハの概念を変えうる1本だ。95点。
テンテヌブロ同様、歴史のある畑を伝統的な手法で醸造し、とてつもなくフレッシュでジューシーなワインをものにしている。ティム・アトキンの格付け1級。リオハン・ロールのスターはもっとビッグになる可能性がある。
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