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リオハの単一畑の先駆、コンティノ(2018年6月リオハ)

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 リオハでいま注目を浴びているのは単一畑(Vinedos Singulares)だ。2017年、リオハDOCaを統制する委員会が、単一畑、村名、3つのサブリージョン(リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・オリエンタル)の格付けを認めた。ブレンドによりブランド名を売る伝統的なボデガと、畑の場所にこだわるテロワール重視の生産者の対立に終止符がうたれた。
 だが、こうした動きは現状を追認しただけではない。いくつかのトップ生産者は、特定の場所からブドウを調達し、ラベルに表示してきた歴史がある。その先駆が1971年のレメユリと73年のコンティノだった。アロの街からN-232aを西に40分ほど走り、蛇行するエブロ川沿いに少し南下したところにコンティノはある。さらに10分ほど走ると、ラ・リオハ州北端の州都ログローニョに着く。
 N-232aはコート・ド・ニュイを南北に貫く県道D974のような幹線道路だ。主要なボデガは、この道路沿いの村と、そこから北にそびえるシエラ・カンタブリアの山脈に向かう途中にある標高の高い村に位置する。なだらかな起伏とゆるやかなカーブの続く気持ち良い道だ。速度レーダーを無視すれば、アロからコンティノまで20分で着けるだろう。
 リオハ・アラベサ地区に位置するコンティノは、1973年からクネの傘下にある。リオハ・アルタ地区のアロに位置するクネのインペリアルは、3つの自社畑のブレンドだが、コンティノは62haのこの単一畑のブドウから造られる。醸造責任者ホルヘ・ナバスケスは2017年夏、ヘスス・デ・マドラソの後任となった。「アラゴンで、ブドウ畑に囲まれて育った。夢がかなった。ラッキーだ」という。基本的に4つのキュヴェを造る。

 「コンティノ ブランコ 2016」(Contino Blanco 2016)はビウラ85%、ガルナッチャ10%、マルヴァジア5%。ステンレスタンクと卵型コンクリートで発酵し、500Lのフレンチオークでバトナージュしながら熟成。
スイカズラ、白桃、フェンネル、クリーミィで、華やかだが、ブルゴーニュを思わせる適度な抑制感がある。ノンマロでフレッシュ。リオハの白ブドウの女王ビウラをモダンなタッチできれいにまとめている。90点。

 コンティノで楽しいのは、単独品種の赤ワインが造られ、試飲によって品種特性の違いがわかること。「コンティノ ガルナッチャ 2015」(Contino Garnacha 2015)はダークチェリー、プラム、リコリス、しなやかなテクスチャー、果実味は柔らかく、バランスよく統合されている。生き生きしていて、アプローチャブル。100ヘクトリットルのフレンチオークで発酵し、300、400、500リットルの使用済みオークで2年間の熟成。91点。

 リオハは言うまでもなくテンプラニーリョ王国だ。DOCaワインの約80%はテンプラニーリョが占め、ガルナッチャが7.12%、マスエロとグラシアーノは2%を切る。1975年にフランコ体制が終わってワイン産業が現代化する前の70年代初期は、ガルナッチャの比率が39%で、テンプラニーリョの31%を上回っていた。現在は温暖化によって、グラシアーノの可能性が開けてきた。酸が高く、タンニンが多めのブレンド品種だったが、その比率を高めたワインも登場している。コンティノは1994年に初めてグラシアーノ100%のワインを造った先駆者だ。

 「コンティノ グラシアーノ 2015」(Contino Graciano 2015)は、プルーンを思わせる熟した果実、ブラックベリー、黒鉛、シナモン、アルコール度は高いが、際立って高い酸とバランスがとれている。テクスチャーはまろやかで、タンニンはこなれている。長期熟成の潜在力がある。「20年前は難しい品種だったが、熟度が上がっている。テンプラニーリョの酸が下がってきたこともあって、ブレンドするグラシアーノの比率も増やしている。これは5年ほど置けばよくなり、30年は保つ」とホルヘ。79年と89年に植えた2つの区画から。フレンチとハンガリアンの新樽で熟成。92点。

 コンティノのフラッグシップは「コンティノ ヴィニャ・デル・オリヴォ 2015」(Contino Vina del Olivo 2015)。樹齢700年のオリーブの古木が畑にあることから名付けられた畑名表示ワイン。テンプラニーリョ90%、グラシアーノ10%。樹齢は60年。黒みが強く、濃厚な果実、ブラックベリー、コーヒー、バルサミック、ボルドー右岸の初期ガレージワインを連想させる凝縮感、タンニンはなめらかで、強大なグリップがある。国際的なモダンスタイルだが、快活さを失っていない。統合されるのに時間はかかるが、ポテンシャルが高い。93点。

 実験的に造っているマチュラナの2015、16、17も試飲した。マチュラナは0.22%しか植えられていないマイナー品種だ。ピラジンからくる青さが強いが、温暖化が進む中で、少量のブレンドによって面白いワインが出来るだろう。スペインのワイナリーでコンサルタントを務めるサム・ハロップMWら数人の専門家から、コンティノの総合的な高品質を評価する声を聞いた。納得させられた。
ヴィニャ・デル・オリヴォの700年の古木
醸造責任者ホルヘ・ナバスケス

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