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繊細なピノ・ノワールの透明感、ジャン・シュトッデンの幻のアルテ・レーベン

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 ブルゴーニュ以外で最も深遠なピノ・ノワールの産地はどこか?
 南アのエルギン、オーストラリアのモーニントン半島、ニュージーランドのセントラル・オタゴ、カリフォルニアのサンタ・リタ・ヒルズ……キリがないが、旧世界からドイツのアールが入るのは間違いない。ライン川支流の渓谷に広がるドイツで4番目に小さな産地から、世界で最良のピノ・ノワールが生まれている。
 代表の一つがマイヤー・ネッケル。大橋健一MWが、、昨年1月の「ピノ・ノワール ニュージーランド 2017」で偉大なピノ・ノワールとして選んだ。もう一つがジャン・シュトッデン。2016年3月、デカンター誌がブルゴーニュ以外の最良のピノ・ノワールのトップにシュトッデンの「アルテ・レーベン」を選んだ。当主が初来日し、600本しか生産されない幻のワインにようやく巡り合えた。ワイン推薦したティム・アトキンやボブ・キャンベルMWらと、試飲して審査したアレックス・ハントMWらの眼力に納得した。
 アール地方は樺太と同じ北緯50度。雨雲が山にさえぎられて年間降雨量は650-700ミリ。急傾斜の粘板岩土壌の畑が川沿いの25キロに伸びる。栄養が少なく、乾燥した土壌だ。ヴァイングート・ジャン・シュトッデンの起源は1578年にさかのぼる。家畜も飼育する農場だったが、1900年からブドウ栽培に特化した。5代目当主アレクサンダー・シュトッデンは、父ゲハルトの血を受け継いでピノ・ノワール・フリーク。車で3、4時間のブルゴーニュによく出かけ、ポンソ、ルーミエ、デュジャックらと親交が深い。所有する7.5haの畑のうち92%がピノ・ノワール。うち80%は機械の入らない急傾斜だ。
 栽培も醸造も注意を払っている。サステイナブル農法を導入。クローンはディジョン115とガイゼンハイム (Kastenholz)が中心。植樹密度はほかの生産者がha当たり4000本前後のところを7000本まで高めている。収穫に使うのは10キロの小箱。厳しく選別し、除梗する。5日間の低温浸漬後に、密閉された小型ステンレスタンクで野生酵母により発酵。完全に発酵させるため培養酵母を2%のみ加える。ポンプ・オーヴァーは1日1回。フランソワ・フレールのミディアム・トーストの樽で15-16か月間、熟成する。
 代表的な2銘柄を試飲した。「ヴァイングート・ジャン・シュトッデン レッヒャー・ヘレンベルグ シュペートブルグンダー 2014」(Weingut Jean Stodden Recher Herrenberg Spatburgunder 2014)はフラワリーで、クランベリー、砕いたストロベリー、石のようなスパイシーな香り、継ぎ目のないシルキーなタンニン、酸は高めで、エレガントなパレット。うまみがあふれて、上品さがあり、きれいに統合されている。デリケートでリニアなフィニッシュ。9698円。91点
 レッヒャー・ヘレンベルグは南向きで最大60%の傾斜の畑。標高は120-250m。樹齢は25年。小粒で小さな房をえり分けている。新樽比率は30%。シュトッデンはヘレンベルグの畑に20の区画を所有する。中でもアルテ・レーベンが最高峰の区画。樹齢95年の自根の樹からha当たり15ヘクトリットルの低い収量。新樽100%。これは、ブラインドで冷涼気候のピノ・ノワールとわかったとしてても、産地をアールと特定するのは難しい。
 「ヴァイングート・ジャン・シュトッデン アルテ・レーベン シュペートブルグンダー 2014」(Weingut Jean Stodden Arte Reben Spatburgunder 2014)は淡いルビー、ラズベリー、サワーチェリー、ほのかな甘草、黒いキノコ、繊細だが香り高さにノックアウトされる。一貫した透明感、うまみがじわじわと広がる。完ぺきなバランスの球体の果実が目の前にそびえるような存在感。細身で上品。緊張感を伴い、塩気を帯びたストーニーなミネラル感が長く続く。2014は優良年ではないが、冷涼気候から生まれるピノ・ノワールの美しさが純粋に表現されている。トップドメーヌのクロ・ド・ラ・ロッシュを連想した。3万1190円。95点。
 ミネラル感の質が、チョーキーな質感を基本とするブルゴーニュと違って、ストーニーで、酸が高め。石灰岩と粘板岩の違いからくるものか?
 「コート・ドールとは全く土壌が異なる。アルテ・レーベンの土壌は純粋な粘板岩と砕けた石からなり、フィロキセラが入り込まない。95年の古木なので、粒が小さく、房も小さい。果肉が少なく、凝縮している。クロ・ド・ラ・ロッシュか。そうかもしれないが、ブルゴーニュのコピーをするつもりはない」
 特に遅摘みではない。糖度にあまり左右されず、ブドウを食べて種が茶色に熟しているかどうかで、収穫時期を判断する。マセラシオンは24日の長きにわたることもあるが、2014のアルテ・レーベンは18日間だった。
 蔵全体の生産量は5万本。90%は国内向けで、2つ星、3つ星にオンリストされている。輸出は英国、オランダ、日本の順で、米国には輸出されていない。ごくわずかでもアルテ・レーベンが日本で飲めるのは幸運だ。
 輸入元はザート・トレーディング。

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