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濃くても重くない、豪シラーズのベンチマーク「ロックフォード」

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 オーストラリアから9月初旬に来日したジャーナリストのマイク・ベニーと大橋健一MWによるセミナーは、「ニュー・ウェーヴvsオールド・ウェーヴ」という図式で、革新を続けるオーストラリア・ワイン・シーンの今を切り取ってみせた。
 ニュー・ウェーヴとオールド・ウェーヴという概念は、オーストラリアワインを紹介する時によく使われるが、起源をたどると1970年代の閉塞したブリティッシュロック界に登場した、新しい動きを指していた。パンクだけでなく、モッズ、レゲエ、エレクトロ・ポップなど多彩なテイストを含むバンドが生まれ、後年のオルタナティヴロックの揺りかごとなった。
 ニュー・ウェーヴが各国に飛び火したように、オーストラリアのニュー・ウェーヴも、カリフォルニアや南アメリカなど各国の産地と呼応している。同時に、オールド・ウェーブと断絶しているわけではない。優れた生産者であれば、志向するスタイルと手法が異なるだけで、情熱とエネルギーに違いはない。両者を併せ呑む懐の深さがオーストラリアの特色でもある。ラングトンズの格付けで、「エクセプショナル」に格付けされているシラーズには、ペンフォールドのグランジ、ヘンチキのヒル・オブ・グレース、トルブレックのランリグ、ロックフォードなどがある。いずれもオールド・ウェーヴに位置づけられるが、仕上がるワインの振幅は大きい。
 バロッサ・ヴァレーでトップの一つ「ロックフォード バスケット・プレス シラーズ 2010」(Rockford Basket Press Shiraz 2010)は中でもエレガントな一つ。コアに黒みが強いルビー、スミレの乾いた花びら、ブラックチェリーのリキュール、墨、腐葉土、スモーキーで、しなやかなタンニン。酸がしっかりと乗っていて、うまみがたっぷりとある。グラスの中でで開くと、塩気が強くなり、フィニッシュはやや甘さを含むが、ハーモニアスでエレガント。オールド・ウェーヴの分類に入るが、抽出が強いのではなく、低収量からくるエキスが豊か。落ち着くにつれて、ミネラル感が浮き上がる。14.5%のアルコール度だが、暑さは感じない。もう1盃と手が伸びる。9000円。93点。
 当主ロバート・オカラハンはピーター・レーマンやヤルンバで働き、バロッサ・ヴァレーの歴史を作ってきた重要人物だ。クリス・リングランドやデヴィッド・パウエルの友人だが、彼らのスタイルとは一線を画す。濃さはあっても、重さがない。15か所の畑の60-140年の古木を手摘みしてブレンドし、旧式のバスケット・プレスで造る。カルト化しているワインだが、オーストラリアのシラーズのベンチマークとして、何度でも飲みたい。ボルドーの1級ワインを知っていて、ロックフォードを飲んだことがないのでは、バランスを欠いている。
 輸入元はkpオーチャード。
マイク・ベニー(右)と大橋健一MW

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