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シャトー・ラグランジュ30周年で垂直試飲会

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 ボルドー・サンジュリアンの3級格付けシャトー・ラグランジュが、サントリーの買収から30周年を記念して、東京で垂直試飲会とディナーを開いた。

 ラグランジュ買収は1983年。日本企業がボルドーの格付けシャトーを所有したのは初めてだった。エミール・ペイノー博士を醸造コンサルタントに迎え、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズのミシェル・ドロン氏が経営全般をアドバイス。ペイノー門下生のマルセル・デュカス氏が総責任者、鈴田健二氏が副会長として、畑から醸造施設まですべてを改修した。2004年に椎名敬一氏が副会長の後を継ぎ、13年にマティウ・ボルド氏が社長に就任した。

 総面積は157ヘクタール。黒ブドウはカベルネ・ソーヴィニヨン64%、メルロ29%、プティ・ヴェルド7%。白ブドウはソーヴィニヨン・ブラン60%、セミヨン30%、ミュスカデル10%が作付けされている。

 84年から2012年までを一気に試飲すると、植え替えたカベルネの樹齢が高くなるにつれて、力強さと骨格が増しているのがわかる。グランヴァンの比率は90年代を通じて30%台にとどまり、選別を厳しくして品質を高めてきたのがわかる。05、09、10年はカベルネの品質が安定してきて、サンジュリアンの内陸部らしい大胆さと繊細さをあわせ持つ味わいに発展している。

 椎名副会長は「85、86年に60ヘクタールほど植え替えて、96年あたりから、温暖化の影響もあって、カベルネがよく熟すようになった。2000年以降は、タンニンの柔らかさも出てきた。09年に導入した光学式の選果機は周辺機器も含めると2000万円近いが、選別の精度が高まった。カベルネの味わいをきちんと引き出すのが狙いで、最近になってようやく実現した」と語る。

 記念ディナーは東京・青山の2つ星フレンチ「ナリサワ」で行われ、2012レ・ザルム・ド・ラグランジュ、シャトー・ラグランジュの2009、2005、1995、1985を、沼津産のラングスティーヌ、茨城産の小鳩、清水牧場のバッカスチーズ、兵庫のカキ・淡路島のヒラメ、神戸牛にそれぞれ合わせた。

 レザルム・ド・ラグランジュはソーヴィニヨン・ブラン60%、セミヨン30%、ミュスカデル10%。97年にデビューし、カベルネの畑の4%をこのワインのために転換した。樽は控えめで、フレッシュ&フルーティ。バトナージュによって豊かさを出している。白桃、イチジクの香り。軽快に仕上がっている。12年の白は優良な作柄だということがわかる。

 09はカベルネを73%も使用し、古典的な味わい。「06年以降はカベルネが安定してきたので、プティ・ヴェルドを骨格をもたらすためにブレンドする必要がなくなった。小型タンクを導入して、区画ごとに対応している」と椎名氏。

 05はカベルネ46%、メルロ45%。フルーティーさがあり、親しみやすいが、これは過渡期のワインと言うべきだろう。95年はタバコや下草の香りが出ている。カベルネ44%、メルロ43%、プティ・ヴェルド13%。

 85年はエッジにオレンジが出て十分な熟成。スパイシーで、やや青さがある。植え替え前の未熟なブドウも使われているのだろう。だが、この青さが複雑性を生んでおり、古いボルドーファンにはたまらない味わい。世界のVIPが集まるボルドーの花祭りがシャトーで、今年6月に開かれた際に供されたヴィンテージでもある。

 椎名氏は「ボルドーの長い歴史の中で30年は短い時間だが、花祭りを今年6月にシャトーで開けたのは、ボルドーの人々の評価の表れ。名実共に仲間入りできた。ここまで来るには、ボロボロの状態から再建した鈴田さんの努力があった。09年に他界されたが、鈴田さんのやってきたことを引き継いでいる」と30年を総括した。

 椎名氏の代になって、植え替えたブドウの樹は30年を超え、個性が出てきたという。タンクの小型化で区画別の醸造に取り組むなど「秒単位でしのぎを削るF1レース」のような細部のチューニングに力を入れている。80年代に最新の機器を導入したシャトーの設備は20年以上を経て、最新のタイプに交換できる時期を迎えており、巡り会わせにも恵まれている。

 最新の13年はどこも難しい作柄だが、畑を観察して、天気予報を頼りに効率的な収穫をしたという。収穫期間は9月30日から10月14日まで。「緻密な摘み取りと、光学式の選果機のおかげで失敗を免れた。11、12、13年と難しいヴィンテージが続いたが、心配は無用」という。様々な苦労からくる自信がうかがえた。それは一握りのトップシャトーしか持ち合わせないものでもある。

 問い合わせはサントリー・ワイン・インターナショナル。

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