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カリフォルニア・ナパヴァレーのトップコンサルタント、トーマス・リヴァース・ブラウンが、冷涼なソノマコーストで妻マリーと共に造るピノ・ノワール「リヴァース・マリー」を引っさげて初来日した。力強いカベルネ・ソーヴィニヨンの名手のイメージがあるが、引き締まったピノ・ノワールを醸している。
トーマスは約40社のトップワイナリーのコンサルタントを務める。シュレーダー・セラーズ、アウトポスト、マイバッハで計20回のパーカーポイント100点を獲得したが、リヴァース・マリーでは一度もない。フィリップ・メルカ、アンディ・エリクソンらと並ぶ凄腕コンサルタント。1994年にヴァージニア大を卒業して、レストランで1年半ほど給仕の仕事をして、ナパヴァレーに移った。カリストガの「オール・シーズンズ・ワインショップ」の試飲グループで、アローホ、コルギン、ブライアントなどのカルトワインを飲んで経験を蓄える中で、ターリー・セラーズのエレン・ジョーダンに出会い、97年、アシスタン・ワインメーカーに雇われた。
このワインショップは初期にはスティーブ・キスラーやヘレン・ターリー、マーク・オベールらが集った伝説的存在。トーマスが、アン・コルギンと離婚したフレッド・シュナイダーと知り合ったのもここ。2000年からシュレーダーが新たに興したシュレーダー・セラーズのコンサルティングを始めて、名を上げた。
夫婦の名前を冠したリヴァース・マリーを始めたのは2002年。重厚なカベルネ・ソーヴィニヨンを造っているが、好きなのはピノ・ノワールなのだという。
「ワインの理解が進むにつれて、ピノ・ノワールが好きになった。軽い味わいだし、アルコール度も低い。帰宅すると、ピノ・ノワールやシャンパーニュをよく飲む。シャンパーニュではセロス、フィリポナのクロ・デ・ゴワセ、セドリック・ブシャールが好きだ。アルマン・ルソーは地上で最も偉大なドメーヌの一つ」
ソノマ・コーストの中で、太平洋に近い冷涼な産地はトゥルー・ソノマ・コーストと呼ばれる。リヴァース・マリーはその中でも、トーマスが「最も涼しい」と認めるオキシデンタル地区の畑を主体にしている。太平洋に近く、内陸のロシアン・リヴァ・ヴァレーやグリーン・ヴァレーより涼しい。スティーブ・キスラーも新プロジェクト「ジ・オキシデンタル」を2013年に興した。
リヴァース・マリーは、伝説的なスーマ・ヴィンヤードのブドウを2002年に購入するチャンスを得て、130ケースから始めた。ハーシュ・ヴィンヤードと同時期の1978年ごろに植えられ、ウィリアムズ・セリエムによって有名になった畑だ。オキシデンタル地区の3つのピノ・ノワールを試飲したが、最初に飲んだのは、そのフラッグシップ「ピノ・ノワール スーマ・オールド・ヴァイン 2013」である。
樹齢は約40年。抑制されていて、プラム、ブラッドオレンジ、ドライハーブ、きめ細かな酸が際立っていて、タンニンはなめらかで洗練されている。オキシデンタルの丘に立った時に吹いてくる海風を思い出させる。冷涼感があり、フィニッシュはミネラリー。除梗しているが、全房発酵を連想させる複雑なアロマと骨組みがある。深いゴールドリッジ土壌から熟度と高い酸が得られるという。95点。1万3000円。
「ピノ・ノワール オキシデンタル・リッジ・ヴィンヤード 2013」はレッドベリーにダークベリーが混じり、太いタンニン、果実のヴォリューム感としっかりした骨組み。広がりのあるミッドパレット、うまみが豊かでフィニッシュは正確。重さはなく、口中をフレッシュにしてくれる。全房発酵を10%導入したが、茎っぽさはない。94点。8800円。
「ピノ・ノワール シルバー・イーグル・ヴィンヤード 2013」はダークベリー、ブラックカラント、シナモン、アーシーで、果実は凝縮されているが、酸はしっかりとあって、暑さを感じない。ふくらみはあるが、フィニッシュはきちんと焦点があっている。スーマより内陸に入る。ソノマのトップ栽培家ユリシーズ・ヴァルデスが所有する畑のカレラ・クローンのブドウから造る。94点。9000円。
「オキシデンタルは海に近い西に行くほど涼しい。スーマは太平洋まで約16キロ。早摘みしなくても、アルコール度は12%台から13%台半ばにおさまる。スーマの収穫時のPHは3.5と低い。茎っぽいのはきらいだから除梗するが、2013年は暑かったので。オキシデンタル・リッジは10%だけ全房発酵を入れた」
リヴァース・マリーのピノ・ノワールは100点はとれず、最高で94点どまり。オベールやマーカッサンとは一線を画す抑制されたスタイルで、そこが高得点がとれない理由だろう。逆に言えば、日本人のパレットには合うブルゴーニュ・スタイルのピノ・ノワールである。
エレガンスを求める感性は、カベルネにも反映している。「カベルネ・ソーヴィニヨン パネク・ヴィンヤード 2014」は、向こうが見通せない黒い色調、摘みたてのブラックベリー、桑の実、ココアパウダー、生き生きした果実とフレッシュな酸がバランスをとっている。凝縮しているが、宙に浮くような軽やかなフィニッシュ。十分に長い。セントヘレナAVA。「2014は2013よりエレガントで、今が飲み頃」とトーマス。96点。1万6000円。
トーマスがコンサルタントしているシュレイダー・セラーズも試飲した。「シュレイダー・セラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン ベックストファー ト・カロン・ヴィンヤード RBS 2013」は驚くほどピュアな果実、ミネラル・ウォーターのようになめらかなタンニン、鉛筆の芯、甘草、炭、黒鉛、ナパのカベルネの典型的な香りとしっかりした骨組みを備えるが、抽出は優しい。エキスがあふれんばかりで、長大なフィニッシュにタバコ、なめし革のトーン。巨大な塔のようなワインだが、グラスを飲み干したいと思わせるフィネスがある。97点。6万9500円。
「オークヴィルにあるト・カロンは見た目は普通だが、土壌が違う。水はけがよくて、大雨が降った後も水たまりができない。それが酸とブルーベリーのアロマをもたらす。アンディ・ベックストファーのブドウはおそらくナパヴァレーで最も高い。トン当たり3万9000ドルもする」
カルトワインからエレガントなピノ・ノワールまで守備範囲の広いトーマス。正式な教育は受けていないが、現場でフェイラのエレン・ジョーダンから学んで、メソッドを築いた。収穫時はポルシェのカイエンやアストン・マーティンを駆って、ナパを走り回るアクティヴな男だ。
輸入元は中川ワイン。
トーマスは約40社のトップワイナリーのコンサルタントを務める。シュレーダー・セラーズ、アウトポスト、マイバッハで計20回のパーカーポイント100点を獲得したが、リヴァース・マリーでは一度もない。フィリップ・メルカ、アンディ・エリクソンらと並ぶ凄腕コンサルタント。1994年にヴァージニア大を卒業して、レストランで1年半ほど給仕の仕事をして、ナパヴァレーに移った。カリストガの「オール・シーズンズ・ワインショップ」の試飲グループで、アローホ、コルギン、ブライアントなどのカルトワインを飲んで経験を蓄える中で、ターリー・セラーズのエレン・ジョーダンに出会い、97年、アシスタン・ワインメーカーに雇われた。
このワインショップは初期にはスティーブ・キスラーやヘレン・ターリー、マーク・オベールらが集った伝説的存在。トーマスが、アン・コルギンと離婚したフレッド・シュナイダーと知り合ったのもここ。2000年からシュレーダーが新たに興したシュレーダー・セラーズのコンサルティングを始めて、名を上げた。
夫婦の名前を冠したリヴァース・マリーを始めたのは2002年。重厚なカベルネ・ソーヴィニヨンを造っているが、好きなのはピノ・ノワールなのだという。
「ワインの理解が進むにつれて、ピノ・ノワールが好きになった。軽い味わいだし、アルコール度も低い。帰宅すると、ピノ・ノワールやシャンパーニュをよく飲む。シャンパーニュではセロス、フィリポナのクロ・デ・ゴワセ、セドリック・ブシャールが好きだ。アルマン・ルソーは地上で最も偉大なドメーヌの一つ」
ソノマ・コーストの中で、太平洋に近い冷涼な産地はトゥルー・ソノマ・コーストと呼ばれる。リヴァース・マリーはその中でも、トーマスが「最も涼しい」と認めるオキシデンタル地区の畑を主体にしている。太平洋に近く、内陸のロシアン・リヴァ・ヴァレーやグリーン・ヴァレーより涼しい。スティーブ・キスラーも新プロジェクト「ジ・オキシデンタル」を2013年に興した。
リヴァース・マリーは、伝説的なスーマ・ヴィンヤードのブドウを2002年に購入するチャンスを得て、130ケースから始めた。ハーシュ・ヴィンヤードと同時期の1978年ごろに植えられ、ウィリアムズ・セリエムによって有名になった畑だ。オキシデンタル地区の3つのピノ・ノワールを試飲したが、最初に飲んだのは、そのフラッグシップ「ピノ・ノワール スーマ・オールド・ヴァイン 2013」である。
樹齢は約40年。抑制されていて、プラム、ブラッドオレンジ、ドライハーブ、きめ細かな酸が際立っていて、タンニンはなめらかで洗練されている。オキシデンタルの丘に立った時に吹いてくる海風を思い出させる。冷涼感があり、フィニッシュはミネラリー。除梗しているが、全房発酵を連想させる複雑なアロマと骨組みがある。深いゴールドリッジ土壌から熟度と高い酸が得られるという。95点。1万3000円。
「ピノ・ノワール オキシデンタル・リッジ・ヴィンヤード 2013」はレッドベリーにダークベリーが混じり、太いタンニン、果実のヴォリューム感としっかりした骨組み。広がりのあるミッドパレット、うまみが豊かでフィニッシュは正確。重さはなく、口中をフレッシュにしてくれる。全房発酵を10%導入したが、茎っぽさはない。94点。8800円。
「ピノ・ノワール シルバー・イーグル・ヴィンヤード 2013」はダークベリー、ブラックカラント、シナモン、アーシーで、果実は凝縮されているが、酸はしっかりとあって、暑さを感じない。ふくらみはあるが、フィニッシュはきちんと焦点があっている。スーマより内陸に入る。ソノマのトップ栽培家ユリシーズ・ヴァルデスが所有する畑のカレラ・クローンのブドウから造る。94点。9000円。
「オキシデンタルは海に近い西に行くほど涼しい。スーマは太平洋まで約16キロ。早摘みしなくても、アルコール度は12%台から13%台半ばにおさまる。スーマの収穫時のPHは3.5と低い。茎っぽいのはきらいだから除梗するが、2013年は暑かったので。オキシデンタル・リッジは10%だけ全房発酵を入れた」
リヴァース・マリーのピノ・ノワールは100点はとれず、最高で94点どまり。オベールやマーカッサンとは一線を画す抑制されたスタイルで、そこが高得点がとれない理由だろう。逆に言えば、日本人のパレットには合うブルゴーニュ・スタイルのピノ・ノワールである。
エレガンスを求める感性は、カベルネにも反映している。「カベルネ・ソーヴィニヨン パネク・ヴィンヤード 2014」は、向こうが見通せない黒い色調、摘みたてのブラックベリー、桑の実、ココアパウダー、生き生きした果実とフレッシュな酸がバランスをとっている。凝縮しているが、宙に浮くような軽やかなフィニッシュ。十分に長い。セントヘレナAVA。「2014は2013よりエレガントで、今が飲み頃」とトーマス。96点。1万6000円。
トーマスがコンサルタントしているシュレイダー・セラーズも試飲した。「シュレイダー・セラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン ベックストファー ト・カロン・ヴィンヤード RBS 2013」は驚くほどピュアな果実、ミネラル・ウォーターのようになめらかなタンニン、鉛筆の芯、甘草、炭、黒鉛、ナパのカベルネの典型的な香りとしっかりした骨組みを備えるが、抽出は優しい。エキスがあふれんばかりで、長大なフィニッシュにタバコ、なめし革のトーン。巨大な塔のようなワインだが、グラスを飲み干したいと思わせるフィネスがある。97点。6万9500円。
「オークヴィルにあるト・カロンは見た目は普通だが、土壌が違う。水はけがよくて、大雨が降った後も水たまりができない。それが酸とブルーベリーのアロマをもたらす。アンディ・ベックストファーのブドウはおそらくナパヴァレーで最も高い。トン当たり3万9000ドルもする」
カルトワインからエレガントなピノ・ノワールまで守備範囲の広いトーマス。正式な教育は受けていないが、現場でフェイラのエレン・ジョーダンから学んで、メソッドを築いた。収穫時はポルシェのカイエンやアストン・マーティンを駆って、ナパを走り回るアクティヴな男だ。
輸入元は中川ワイン。
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