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プリムールでサスキア・ド・ロスチャイルドに会うたび、ワインの仕事をしてよかったと思う。血統といい、経歴といい、ワイン界の頂点に立つ存在なのに、気取ったところがみじんもない。
いつも使い込んだデニムのシャツに白いパンツ。だれもが気軽に「サスキア」と声をかけながら通り過ぎる。気品があるのに親しみやすい。本物の貴族とはこういうものなのだろう。
44年間グループのトップを務めた父のエリック・ド・ロスチャイルド男爵もそういえば、こちらに緊張感を与えない気取りのない紳士だった。
常人には考えられないキャリア
ラフィットのセラーは年内に稼働
1987年4月生まれ。ヨーロッパのビジネススクール最高峰HECパリ(経営大学院)を卒業し、コロンビア大学のジャーナリズム大学院を卒業。ニュヨーク・タイムズでアフリカ特派員を務めた。2010年からは毎年1月のラフィットのアッサンブラージュに加わり、醸造栽培上級技術者(BTS)を取得し、2016年にラフィットに正式に帰還。2018年からドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド(ラフィット)の会長を務めている。
DBRラフィットの6つのブランチ(部門)を率いる。同じ2016年に海外ドメーヌ担当から戻ってきた醸造責任者のエリック・コレールと共に、グループを革新してきた。フランスのすべてのブドウ園を2024年までにオーガニック認証に転換し、アグロエコロジーやマッサール・セレクション(集団選抜)を行っている。
最大の注目は2020年に取り掛かったラフィットのセラーの改修工事。2026年に最初のブドウを受け入れる。地元シュド・ウエスト紙のポッドキャストによると、「工事があったことさえ気づかないようにするのが目標。何も取り壊さず、統合されたものにする」という。
ラフィット・ロートシルトのグランヴァンはシャトー・マルゴー、シャトー・ムートン・ロートシルトと並ぶ左岸のワイン・オブ・ザ・ヴィンテージの1つである。シャトーの評価も5つ星。6月24日と7月20日、8月最後の週末に60ミリの雨が降り、夏の干ばつに耐えた。収穫は9月2日に始まり20日まで。木樽を使うのは最後。来年はステンレスタンク醸造のカベルネ・フランをブレンドする。
「シャトー・ラフィット・ロートシルト 2025」 (Chateau Lafite Rothschild 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン94%、メルロー5%、プティ・ヴェルド1%。フローラルでダークベリー、杉、カシス、バラの花弁、繊細な酸、タンニンはきめ細かくてしなやか、ジューシーで飲みやすい。うまみと塩気を帯びたミネラル感、バランスがよくエレガンスの極み。収量は27hl/hと極めて低い。pHも3.65と低く、アルコール度は12.5%。深みのあるクラシックなラフィット。97点。
「カリュアド・ド・ラフィット 2025」(Carruades de Lafite 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン55%、メルロー34%、カベルネ・フラン9%、プティ・ヴェルド2%。なめらかな口当たり、ダークベリー、サワーチェリー、オレンジの皮、砕いた石、柔らかい果実味、生き生きした酸味が溶け込んでチョーキーなタンニン。程よいグリップがあり、純粋で繊細なフィニッシュ。93点。
「シャトー・デュアール・ミロン 2025」(Chateau Duhart-Milon 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン73%、メルロー27%。デリケートな口当たり、ブラックラズベリー、ブラッドオレンジ、カシス、優雅なタンニン、直線的で引き締まっている。生き生きしたフィニッシュ。アルコール度は12.5%と低いが活力があふれている。94点。
「シャトー・デュアール・ミロン ル・ブラン・ド・デュアール・ミロン 2025」(Chateau Duhart-Milon Le Blanc de Duhart-Milon 2025)は石灰質土壌でメルローに接ぎ木したセミヨン68%とソーヴィニヨン・ブラン31%、ソーヴィニヨン・グリ1%。5番目のヴィンテージ。洋ナシ、柑橘オイル、ネクタリン、生き生きした酸味、塩気を帯びたテクスチャー。ますます調和がとれて、焦点があっている。収穫は8月21日に始めて9月1日に終えた。93点。
試飲後にリューセックとフライドポテト
試飲は4本で終わらなかった。部屋の外の屋台でリューセックが待っていた。グラスに氷を入れて、揚げたてのフライドポテトを合わせて飲む趣向。ソーテルヌをデザートワインの枠に押し込めず、アペリティフやデザート代わりに1杯だけ楽しむのが好きなサスキアらしい提案。
シャトー・ディケムも同様にカジュアルな飲み方を提案している。サスキアは冷蔵庫で1か月ワインを保存するためのキュートなキャップ(栓)を考案した。貴腐ワインをもっとカジュアルに楽しもうという発想だ。格付けの頂点に立つ赤ワインを造りながら、茶目っけすら感じさせる仕掛けをするところが彼女の魅力でもある。
リューセックとフライドポテトのペアリングはどうかしら?
いたずらっぽく問いかける彼女に
「朝から最高の"食後酒"だった」と笑った。
「シャトー・リューセック 2025」(Château Rieussec 2025)はドライ・アプリコット、蜜リンゴ、マンゴ、純粋で透明感がある。濃厚で程よい凝縮感、フレッシュ感があり、力強いフィニッシュ。残糖は150g/L。熟成はまだ短いが将来性は感じる。94点。
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