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ジャンシス・ロビンソンのマスタークラス、日本ワインの未来の道筋を探る

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 4月に東京ビッグサイトで開かれたワイン・アルコール見本市「プロワイン」。世界で最も影響力のあるジャーナリスト、ジャンシス・ロビンソンも来日する予定だったが、事情により録画した動画でマスタークラスを行った。その内容を紹介しながら、日本ワインの未来への道筋を探る。


 「日本ワインのいま」と題したマスタークラスは、プロワイン事務局が選定して英国に送ったワインを、ジャンシスがテイスティングした。


 ジャンシスは小規模な家族経営ワイナリーが主体の日本ワインの産業構造を好意的にとらえている。


 「日本は土地が高いので、小規模な生産者が農家からブドウ買っているのが基本。大企業に買収されると短期的な利益を求めるようになる。ワインはそうあるべきではない」と述べた。知識だけではなく、ワインへの愛情があるところが、彼女が世界から信頼される理由だ。


 「ワインは年に1回しか造れない。年により収量が減れば経済的ダメージが大きい。ワイン業界で成功するには長期的なヴィジョンが必要」とも述べた。


 テイスティングに3つの日本ワインが供された。コメントを紹介する


「勝沼醸造アルガブランカ イセハラ甲州 2024」

「ヴィティス・ヴィニフェラに属しながらアジア品種の系統も引き継ぐ甲州は、シルクロードを通って日本に持ち込まれたロマンチックな品種と世界で認識されている。柚子とライチの非常に繊細なアロマに、カシューナッツ、塩味。フィニッシュにははっきりとした柑橘のアロマがあり、ほんの少し噛み応えがある。日本の陶器に盛り付けられた食事と一緒に味わいたい」と語った。6000円。17/20点。


 「ルミエール 光 甲州 2022」

「微生物環境を破壊しないよう、不耕起栽培をいち早く2003年から取り入れている。少し傷んだリンゴ、グリップがかなりあるので、スキンコンタクトをしているだろう。まろやかなオレンジワインのようなニュアンス。マルメロ。洋梨、ウッディなニュアンス。長い余韻。すでに4年たっているがもっと熟成させたい。アルコール12%なのに若々しいというのは素晴らしい。酸味もちょうど良く、フレッシュさ抜群で個性がある」。4750円。


 「熊本ワインファーム 菊鹿シャルドネ樽熟成 2023」


「旧樽を使った控え目な樽使いがトレンドにマッチ。世界では、ボルドーやブルゴーニュの小樽から、大樽へ買い替える生産者が増えている。クリーミーなテクスチャー、新鮮で純粋、繊細な果実に塩味。オークの風味に邪魔されない鮮やかな果実味。まとまってワインの個性が出るまで、もう少し熟成させるのが理想的」。4972円。

 JancisRobinson.comに掲載されているテイスティングコメントのうち、日本ワインは125種類あるが、17点以上がついているのは、シャトー・メルシャン、グレイスワイン、98Wines、勝沼醸造、くらむぼんワイン、千歳ワイナリー、宮本ヴィンヤードのみだ。


強みは固有品種と低めのアルコール度


 日本ワインの強みは何か?固有品種と世界の消費者トレンドに合致する低めのアルコール度数を、日本のアドバンテージとして挙げた。


 「シャルドネは世界中で栽培醸造されていて、どこの国の品種かと思い浮かべるのが難しい。甲州は日本独自の品種で、他の国にはない。」


 マスカット・ベーリーAについても「非常にフルーティな赤ワインで、日本を訪れたMWからの評判がとても良い」と。


 一方、北海道ではピノ・ノワールが世界から注目されている。余市は主流だったケルナーやツヴァイゲルトから、国際品種のピノ・ノワールやシャルドネへの植え替えを、農家に補助金を出して推進している。


 ケルナーやツヴァイゲルトはドイツやオーストリアでも人気が下がっており、市場で高値をつけるのは難しい品種だが、3月に行われたマスター・オブ・ワインの日本視察旅行のセミナーで、大橋健一MWは北海道を「世界最高のケルナーを造る産地」と紹介した。


 北海道の造り手たちは「これでケルナーはやめられなくなった」と微笑み合っていた。


 努力や工夫を重ねて栽培醸造した渾身のワインは、品種に対する世間の評価が低くても、トレンドを再定義できるかもしれない。


 山梨のワイン生産者、商工会議所、ワイン酒造協同組合はKOJ(Koshuof Japan)を立ち上げ『甲州ワインを世界で認められるワインへ』をコンセプトに、2010年から世界のワイン取り引きの中心地ロンドンを中心にプロモーションしてきた。産地が一丸となった地道な活動が実を結び、甲州専門の小売店も現れたという。


 日本開催3年目のプロワイン。日本ワインのコーナーにはドメーヌ・ド・ユノハラ(長野)、ドメーヌ・キョウコ・ホサカ(山梨)、勝沼醸造(山梨)、盛田甲州ワイナリー(山梨)、ルミエール(山梨)、熊本ワインファーム(熊本)、MARO Wines(北海道)が出展した。自国から7社という出展数は少ないが、小規模ワイナリーに出展費用の負担は大きいのかもしれない。


 小規模ワイナリーが限られた予算で販路を開拓していくには、海外の成功事例に学び、地域全体で連携し産地をブランド化するのが重要だ。目先の利益にとらわれず、将来を見据えたストーリー性のあるマーケティングを展開し、長期的な成功を目指すべきだろう。


Text & Photo by  近藤美伸

聴講席にはメルシャン・エグゼクティブ・ワインメーカーの安蔵光弘さんの姿も
テイスティングに供された3種のワイン
日本の文化やワインに対する熱心さが好きだというジャンシス
来場者の興味が集まった日本ワイン

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