世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 世界で注目されるリジェネラティブ・ヴィティカルチャー(再生型ブドウ栽培)とは何か、ガーギッチ・ヒルズで探索

世界で注目されるリジェネラティブ・ヴィティカルチャー(再生型ブドウ栽培)とは何か、ガーギッチ・ヒルズで探索

  • FREE

 ガーギッチ・ヒルズ・エステートを「パリスの審判」で白ワインのトップに選ばれた「モンテレーナ・シャルドネ」を造ったマイク・ガーギッチのワイナリーという文脈でしか知らない愛好家も多いかもしれない。現在はむしろ、リジェネラティブ・ヴィティカルチャー(再生型ブドウ栽培)という新たな農法の推進者として注目される存在になっている。


 ブドウ栽培は長年、除草剤や農薬を使う効率的な慣行農法で造られてきたが、1990年代から有機栽培(オーガニック・ヴィティカルチャー)、バイオダイナミックという手法が世界的に広がった。その後、持続可能な栽培(サステナブル・ヴィティカルチャー)という新たな農業の手法が登場している。


サステナブルの次に来る農法


 サステナブル(持続可能)という概念はブドウ栽培に限らず、多彩な産業やライフスタイルでも使われているからご存じの方も多いだろう。根底には地球の資源に限りがあるのにどう対処するかという発想がある。水や電気、紙の使用量を制限したり、代替エネルギーに転換したりする発想は、農業に限らず、日常生活でも取り入れられている。


 サステナブルなブドウ栽培ではオーガニックやバイオダイナミックと違って、化学薬品の使用が厳格に排除されているわけではない。農薬を使わなければ、効率が悪くなり、経済的にブドウ栽培が続けられない農家もある。オーガニックやビオディナミでも、べと病の殺菌剤として銅を使用せざるを得ないという歴史が続いてきた。


 ジェイミー・グッドによると、再生型ブドウ栽培は福岡正信の「わら一本の革命」から着想を得て、1980年代から広がってきた。この10年ほどで多くの造り手が「リジェネラティブ・ヴィティカルチャー」を口にするようになった。4つのカテゴリーはどれも完全に独立しているわけではなく、同じ発想や手法を取り入れている。


 ブルゴーニュでは、アルノー・アントアルヌー・ラショー、カリフォルニアではスティーヴ・マサイアソンジョセフ・フェルプスも取り入れている。ジョセフ・フェルプスは大企業グループLVMH傘下で、かつてはオーパスワンのCEOを務めていたデイヴイッド・ピアソンCEOが導入している。そのインパクトは大きい。


農園の生物多様性と土壌の活力を高める


 ガーギッチ・ヒルズは2018年からリジェネラティブを導入し、5つの農園で実践している。カーネロスの農園に足を踏み入れるといきなりコンポストの山がある。被覆作物を植えて、ブドウ樹の各所に鳥の巣箱がある。巣箱にはブルーバードが産卵していた。畑を回っている間中、鳥が上空を飛んでさえずっている。騒がしいくらいだが、生命力が宿っているとも言える。


 小川も掘った。トマトも栽培している。オリーブの樹も植えている。ブドウだけでなく、昆虫や鳥類が農園に生息しているのが肌に伝わってくる。1月から2月は羊が雑草を食むという。ボルドーのシャトーが近年になって始めたアグロフォレストリーのように、後付けで果樹を植えるのとは違う。農園自体に自然が息づいている。広大なナパヴァレーだからできることだろう。


 2000年から有機栽培に取り組み、2006年に有機認証を取得した。栽培はバイオダイナミック。プレパラシオン(調剤)は自家製だ。2019年からリジェネラティブに取り組み、2023年に世界でも数少ない再生有機農法(Regenerative Organic Agriculture)の認証を取得した。


 ワインメーカー兼生産担当副社長のイヴォ・ジェラマズ(Ivo Jeramaz)はブドウ畑を農業生態系としてとらえている。ブドウ樹だけでなく、生態系に存在するすべての生物の回復力や自立性を高めようとしている。


 「生物多様性を高めるのが重要です。畑を耕して、土壌の微生物や菌類とのネットワークを活発にする。被覆作物もその助けになる。リジェネラティブを実践することで、畑仕事のコストも通常は1万8000ドルかかるところが1万1500ドルで済んでいる。私には6人の子供がいます。その将来も関心事です。食物にも敏感です。」


 忘れてならないのはROC認証は健康な土壌、生物多様性、動物福祉と社会的公正だけでなく、温室効果ガスの排出削減も重視していることだ。ここでは土壌の改善と未来の地球への貢献に取り組んでいる。


 さらに、ROCは従業員の職場環境、経済や社会支援も評価している。動物も植物も人間も等しく生き物だからだ。


 2種のワインを試飲した。素性を知らなければよくできた自然派ワインと思うところだ。


 「ガーギッチ・ヒルズ・エステート パリ '76 シャルドネ ナパヴァレー 2023」(Grgich Hills Estate Paris '76 Chardonnay Napa Valley 2023)はほのかに還元している。フリンティで、生き生きしたレモン、熟したりんご、セージ、シルキーなテクスチャー。引き締まっていてキレのある酸、明るい果実味、純粋で透明感に包まれる。バトナージュはせずオクソラインで攪拌している。名前通り、50年前のパリ・テイスティングにオマージュをささげたキュヴェ。93点。


 「ガーギッチ・ヒルズ・エステート パラダイス・ブロック ヨーントヴィル オールドヴァイン カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2021」(Grgich Hills Estate Paradise Block Cabernet Sauvignon Napa Valley 2021)はマイク・ガーギッチが1959年に取得したナパで最古級の畑から。ブラックチェリー、カシス、しなやかなタンニン、凝縮した果実味、骨格はしっかりしている。古樹の深みと奥行きがある。92点。


もっと重要になるリジェネラティブ・ヴィティカルチャー


 同じカーネロスの、ブルゴーニュ品種に取り組むドナム(Dnum)も訪れた。ロバート・モンダヴィでアンバサダーをしていたマーク・デ・ヴィアMWがグローバル・ブランド・アンバサダーを務めている。ここもガーギッチ・ヒルズと同時期にリジェネラティブ・ヴィティカルチャーを始めた。


 「リジェネラティヴ・ヴィティカルチャーの前提はオーガニック。土壌の生命力が重要だ。これから数年でもっと重要な存在になる」と、マークは確信をもって語った。

ガーギッチ・ヒルズの畑の巣箱ではブルーバードが産卵
ガーギッチ・ヒルズのワインメーカー、イヴォ・ジェラマズ
プレパラシオンも自家製
ドナムのマーク・デ・ヴィアMWとワインメーカーのトニー・チャップマン
ドナムもオーガニックで土壌が柔らかい

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP