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世界で最も洗練されたソーヴィニヨン・ブラン、エドモン・エ・アンヌ・ヴァタンのクロ・ラ・ネオール

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 サンセールの伝説的なエドモン・エ・アンヌ・ヴァタン(Edmond et Anne Vatan)の当主アンヌが、夫のナディ・フーコー(クロ・ルジャールの前オーナー)とともに初来日し、単一畑クロ・ラ・ネオール(Clos la Neore)の垂直試飲を行った。マグナムに詰められたワインは飲むどころか見つけるのすら困難なカルト的存在。世界で最も洗練されているソーヴィニヨン・ブランは、透明感に包まれて時を超える神秘的なワインだった。


 ヴァタン家の歴史は16世紀までさかのぼる。エドモン・ヴァタンはガレージ・ワイナリーという言葉が生まれるはるか前から小さなカーヴで、4.5haの畑からワインを手造りしてきた。有機農法で栽培し、畑に散布するのはボルドー液だけ。1970年代から使うエナメルを貼ったホーロータンクで発酵させる。月齢カレンダーを見ながら澱引きや瓶詰めをする。


 14歳からヴィニュロンをしてきたエドモンは、1959年にいったんブドウ樹を引き抜いてクロ・ラ・ネオールの畑を休ませた。休耕期間中はシャヴィニヨール(Chavignol)特産のシェーブル・チーズの原料となる乳を出す山羊を放牧していた。1970年にマッサール・セレクション(集団選抜)した株を植えた。平均樹齢は55年。


父エドモンのミニマルなワイン造りをアンヌが継承
スーパースターのダギュノーやセロスがサポート

 

 彼は2人の娘にワイン造りを継がせるのをためらっていたが、80歳を目前に引退を決意し、2008年に長女のアンヌに経営を譲った。アンヌは考古学の博士号を所有する研究者だったが、発掘調査の合間に父を手伝ってきた。父から剪定のコツを学び、ブドウの食べ頃で完璧な熟度を判断して摘んだ。亡き父と同じ昔からのミニマルなワイン造りを続けている。


 時代を超える優雅さと力強さを備えるワインは、エドモンの時代からフランスの国内外の一流レストランで名声を博していた。夫はブイグ兄弟が買収したソミュール・シャンピニの至宝クロ・ルジャールの当主を務めていたナディ・フーコー。友人のディディエ・ダギュノーやアンセルム・セロスは、アンヌのワイン造りをサポートし励ましてきた。シャイな彼女はスーパースターたちに愛され、愛好家の間でカルトな人気を保っている。


 「クロ・ラ・ネオール」はサンセールの街の西側にあるシャヴィニヨール村のクリュ、レ・モン・ダネ(Les Monts Damnes)の45度の急斜面にある。南向きで日当たりがよい。中腹のわずか1haから造られる。モンダネはコタやダギュノーも手掛けるサンセールで最高のクリュと見なされている。


シャブリと共通するキンメリジャン土壌


 シャブリと共通する海洋化石の豊富なキンメリジャンと粘土石灰質土壌。畑の世話はヴァンサン・ゴードリーが手伝っている。長期熟成を想定して、2018年からマグナムボトルに詰めている。生産量は1000本から3000本。3年の瓶熟成を経てリリースする。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2023」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2023)は水のように淡い色調、レモンの皮、ライム、バーベナ、シャキッとした酸、さわやかで純粋。透明感に包まれる。潜在アルコール度は14度に達した。濃厚な完熟度を感じるが、繊細さがあり完璧な調和が保たれている。96点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2022」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2022)は熟した洋ナシ、ミント、カキ殻、ふくよかな果実味がピリッとした酸味と調和している。まろやかなフェノールが形支えるしっかりした骨格。引き締まった余韻がジリジリと続く。95点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2021」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2021)は春霜とうどんこ病、涼しい夏で収量が半減したヴィンテージ。舌触りはクリーミィなタッチを残しているが、熟度の低さを感じさせるややベジタルな香り。鋼のような酸味と石のようなミネラル感が際立っている。唾液が促されて食欲をそそる余韻が長い。92点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2019」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2019)は明るい果実味があり、リンゴ、砂糖漬けレモン、ラノリン、リースリングを連想させるケロシン、すがすがしい酸、透明感の奥深くに凝縮した果実味が潜んでいる。水平的でおおらかな広がりがフィニッシュで垂直的にそびえ立つ。94点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2018」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2018)はフリンティで、ライムオイル、ジンジャー、新鮮なカモミール、純粋で果実味は力強い。しっかりした構造、はつらつとした酸味、焦点のあったフィニッシュ。ラヴノーのシャブリを思わせるミネラル感のかたまり。この年からマグナムに詰めるようになった。95点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2016」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2016)は夏が涼しかったヴィンテージ。キレのある酸と緊張感をはらんでいる。熟成感が出始めていて、オイリーで芳醇、グリーンメロン、柑橘のリキュール、スターアニス、凝縮した果実味が芯を貫いている。グリップがあり、塩気を帯びた長い余韻。凝縮されたエネルギーの奥にフレッシュ感とミネラル感がきらめている。焦点の定まったフィニッシュ。96点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2014」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2014)は涼しかったヴィンテージ。軽く煮た洋ナシ、クロロフィル、摘みたてのセルフィーユ、シャープな酸、心地よいほろ苦み。白胡椒がまとわりつく余韻。93点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 2013」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 2013)は雨が多くて収穫が最も遅かったヴィンテージ。白い花、赤いリンゴの皮、ブラッドオレンジ、清涼感があり、濡れた石、はつらつとした酸。コンパクトでバランスがとれている。石をなめるようなミネラル感が詰まっている。92点。


 「エドモン・エ・アンヌ・ヴァタン サンセール クロ・ラ・ネオール 1996」(Edmond et Anne Vatan Sancerre Clos la Neore 1996)は涼しかったヴィンテージ。20年の熟成を経てもなお、すがすがしくエネルギーを秘めている。過熟ではなく完熟したマンダリン、アニス、ハチミツ、トロピカルで、時間をへるにつれて、全体のバランスがが調和していく。洗練されていて、さわやかなフィニッシュ。96点。


 最後はナディが仕込んだカベルネ・フランを試飲した。オークションでないと見つからないボトルだ。カベルネ・フラン100%。


 「クロ・ルジャール ソミュール・シャンピニー ル・クロ 2013」(Clos Rougeard Saumur-Champigny Le Clos 2013)はレッドチェリー、スモーク、リコリス、バラの花弁、しなやかなテクスチャー、みずみずしく引き締まっている。デリケートで、チョーキーなタッチ、素朴で優雅なフィニッシュ。シャルリー&ナディ・フーコー兄弟の晩年の作品。94点。


 クロ・ラ・ネオールを試飲しながら、頭に浮かんだのはラヴノーのシャブリだった。シャルドネの北限に位置するシャブリと、大西洋からの海風をとらえるサンセール。共通するのは貝殻を含むキンメリジャン土壌。いずれもミネラル感と塩気を帯びている。時空を超える素晴らしい体験だった。


 輸入元は野村ユニゾン。

アンヌ・ヴァタン(右)とナディ・フーコー
独特なラベル
若々しいクロ・ラ・ネオール1996
(C)野村ユニゾン
急斜面のレ・モン・ダネ (C)野村ユニゾン
(C)野村ユニゾン

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