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洗練された優雅なワインを世に出すヴォーヌ・ロマネのドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール。2023年にル・フィガロの選んだフランス最高の50人のヴィニュロン(栽培醸造家)の2位にランクされ、世代交代も進んでいる。初来日した4代目ディレクターのルーシーと2023年を試飲しながら、ブルゴーニュの隠れた宝石のフィネスの源泉を掘り下げる。
ドメーヌは2025年8月にルーシーの母マリー・クリスティーヌが引退して、ルーシーとおばのマリー・アンドレ、いとこのファニーの3人体制で運営されている。1933年に創業されたドメーヌも着実に若返っている。
創業者のアンドレ・ミュニュレ&ジャンヌ・ジブールの時代はネゴシアンにワインを売っていた。2代目ドクター・ジョルジュ・ミュニュレ(1929-1988)がドメーヌの土台を築いた。眼科医をしながらワイン造りを支えた。59歳の若さで亡くなったが、アルマン・ルソーやジョゼフ・ルフレーヴと同じく、先見の明があって、地価が高騰するはるか前に地所を広げた。
ジョルジュの時代に買収した畑。
1953 Clos Vougeot
1971 Nuits-Saint-Georges 1er Cru Les Chaignots
1977 Ruchottes-Chambertin
1982 Nuits-Saint-Georges 1er Cru Les Vignes Rondes
1985 Chambolle Musigny 1er Cru Les Feusselottes
ヴォーヌ・ロマネ的なリュショット・シャンベルタン…アンリ・ジャイエ
0.62haのリュショット・シャンベルタンはブローカーをしていた友人シャルル・ルソーの仲介で、トマ・バッソから購入した。「24時間以内に決めてくれ」と言われて決断した。この広さのグランクリュは今日、メタヤージュ(折半耕作)でも入手するのは難しい。
ジョルジュの父アンドレは「ヴォーヌ・ロマネから10キロも離れた畑を買うなんて」と憤慨したが、ルーシーは「直感は正しかった」と。バッソの土地はルソー、ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール、クリストフ・ルーミエの3人が優れたワインを造っている。アンリ・ジャイエはここのリュショットを「ヴォーヌ・ロマネの個性を有するジュブレ・シャンベルタン」と評したという。
ジョルジュが59歳で亡くなった後は、娘のマリー・クリスティーとマリー・アンドレが引き継いだ。醸造を学んでドメーヌの品質を向上させた。現在の3人のディレクターも緊密なチームワークを組んでいる。収穫、澱引き、瓶詰めの時期を相談して決めて試飲する。ルーシーも母と同じくディジョン大学で醸造を学んだ。
女性の造るワインはエレガントとよく言われるが、何の根拠もない。ルーシーもそう考える。「細かい積み重ねがカギを握る。過剰にしない。SO2は減らしろ過はしない。ポンプは使わない。フレッシュ感と果実味を求めている」という。除梗し、数日間の低温浸漬を行う。抽出はおだやかで軽いポンプオーバーとパンチダウンを行う。
ルロワやDRCを上回る2位の栄誉…ル・フィガロ
ブルゴーニュに生まれたのが幸運
2023年のフィガロの「フランスで最高の50のヴィニュロン」では、ルイ・ロデレールのジャン・バティスト・レカイヨン(4位)、ラルー・ビーズ・ルロワ(5位)、DRCのペリーヌ・フェナル&ベルトラン・ド・ヴィレーヌ(7位)ら名だたる栽培醸造家の上にたった。
ルーシーは「予想していなかった。うれしい驚き。チーム全体の名誉」と振り返る。
マリー・クリスティーヌとマリー・アンドレ姉妹の父ジョルジュは生前「女性の仕事ではない」と語っていたが、姉妹は1988年に亡くなった父の跡を継いで、30年以上もドメーヌを率いてきた。祖父アンドレと父ジョルジュがコーチだったという。
姉妹は2023年にフィガロのインタビューで語った。
「収穫が始まるとチームの結束を感じる。醸造家はテロワールと完璧に調和して働かなければならない。私たちが受けてきた教育と伝統のおかげで、細部まで掘り下げることができた。娘たちも女性として、母親として、ヴィンテージを重ねるごとに成功を収めてきたことを誇りに思っていると思う。私たちのヒーローとなる品種はピノ・ノワール。ここに生まれたのは幸運です」
ドメーヌはトラクターで耕し、土壌が乾燥しすぎないように深く掘り返さない。ビオロジックで、基本的には銅と硫黄しか散布しない。2023年は豊作で8月に高温と強い日照が続いた。高樹齢の畑が多いため収量は低いが、実がなりすぎた区画はグリーン・ハーベストで収量を落とした。平均収量は35-40hl/ha。2024年の収量は平年より80%減少した。2025年の収量は2021年並みで平年の半分だった。
10アペラシオンから9つのキュヴェを造っている。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール ブルゴーニュ ルージュ レ・リュトニエール 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Bourgogne Rouge Les Lutenieres 2023)はD974の東側。樹齢80年を超す古樹中心の0.85haから。スミレ、レッドチェリー、ブルーベリー、豊かな果実味とさわやかな酸味のバランスがとれている。粒子が細かく洗練されたフィニッシュ。89点。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール ヴォーヌ・ロマネ 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Vosne-Romanee 2023)は樹齢90年のLes Chalandinsなど4区画のブレンド。平均樹齢70年。フローラルでレッドチェリー、ストロベリー、バラの花弁、ジューシーで上質なタンニン。生き生きしていて、繊細な果実味が広がる。純粋で長い余韻。90点。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール ヴォーヌ・ロマネ・ラ・コロンビエール 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Vosne-Romanee La Colombier 2023)はドメーヌの裏手にある樹齢80年のリューディ。2018年にブレンドから独立させた。柔らかい口当たり、ダークチェリー、プラム、クローブ、サテンのテクスチャー、きめ細かいタンニン、しっかりした骨格。濃厚でシームレス、深みがあり、余韻は十分に長い。コント・リジェ・ベレールも生産する。92点。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエクリュ レ・シェニョ 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Nuits-Saint-Georges 1er Cru Les Chaignots 2023)はニュイ北部のヴィーニュロンド上部の区画。すぐ北のヴォーヌ・ロマネより力強く、わずかにローミィで骨太な構造。さわやかな酸、塩気を帯びた余韻。繊細なフィニッシュ。粘土が多く保水性が高い。2018年にメタヤージュの区画が戻ってきたので単一区画で仕込んだ。92点。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール エシェゾー 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Echezeaux 2023)はLes Rouges du Basとクロ・ヴージョの壁に近いLes Quartiers de Nuitsの2区画0.6haから。アンドレが1930年代に購入した。ラベンダー、ラズベリー、オレンジ、華やかに香りたつ。さわやかな酸、程よい凝縮度、肉厚でリッチな果実味が透明感に包まれている。12%の全房発酵。94点。
「ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール リュショット・シャンベルタン 2023」(Domaine Georges Mugneret-Gibourg Ruchottes-Chambertin 2023)はクロ・ヴージョと並ぶフラッグシップ。コンブ・ド・ラヴォーから涼風が吹く浅くて石の多い区画。レッドチェリー、プラム、バラの花弁、ヴェルベッティで、シームレスなタンニンは力強いが優美。肉厚で深みのある構造。塩気を帯びてフレッシュな余韻。95点。
ここではドメーヌの裏に畑を臨むラ・メゾン・ド・ジャクリーヌを運営している。有名な村なのにホテルもレストランもないヴォーヌ・ロマネ村に活気をもたらしている。夏はバカンスの客、秋はワイン業界のプロでにぎわうという。
輸入元は八田とラック・コーポレーション。
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