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ブルゴーニュで1970年代から有機農法に取り組んできた先駆者エマニュル・ジブロを訪れた。行き違いがあって短時間の試飲となったが、純粋で透明感に包まれた酒質に揺るぎない信念を感じた。
ジブロ家の名はビオロジック、ビオディナミと長らく結びついてきた。エマニュエルの父ポールは穀物と野菜の農家だったが、1970年にブルゴーニュで有機栽培を導入した1人だった。エマニュエルは1985年にボーヌに定住し、父と同じ道を歩んだ。ドメーヌのカーヴは街の中心部から少し離れた住宅街にある。
エマニュエルは1985年から、ビオロジックやビオディナミに基づいた有機農法を始めて1996年からビオディナミを採用し、2012年にビオディヴァンから認証を取得した。
彼の名前をフランス全土に広めたのは、2013年に起きたフラヴェサンス・ドレ(Flavescence dorée、黄化病)を巡る騒動。これは昆虫ヨコバイが細菌を媒介し、ブドウ樹が枯れたり、生産量が減ったりする病気。アルザスで昨年9月にも感染が確認された。ハンガリーで蔓延して、政府が対策に乗り出している。
当時のフランスでの対策は殺虫剤の散布しかなかった。ジブロは行政当局の命じた殺虫剤による駆除を拒否して、ディジョンの裁判所から罰金判決を受けた。上告して2014年に無罪判決を勝ち取った。ニコラ・ジョリーらビオディナミの生産者を中心に50万件以上の署名が集まり抗議活動を繰り広げた。
「レス・イズ・モア」のアプローチ
ジブロは人為的な介入を排した栽培と醸造を徹底している。「レス・イズ・モア」のアプローチで畑の草刈りはせず、野草の花が咲いて昆虫が生息する生物多様性を守っている。
月の満ち欠けに合わせて野生酵母で発酵させる。使用済みの木樽で熟成させる。SO2の添加は最小限にとどめている。自然派ワインの祭典「RAW WINE」が取り扱っている彼のワインの総亜硫酸は50mg/Lと極めて少ない。
14haから生産されるピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・グリなどの年産量は4万本。平均樹齢は35年。ル・ギド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランス2026年版は「エレガンスとフィネスが特徴で、ほとんど重さを感じさせず、テロワールの個性を見事に表現している」と評価し、2つ星に昇格させた。
ボーヌ村のプルミエクリュを見下ろす畑から少量生産されるコート・ド・ボーヌAOCのレ・ピエール・ブランシュ、コンブ・デブ、ラ・グランド・シャトレーヌの3つのリューディが名高い。サン・ロマン、オート・コート・ド・ニュイ、リュリー、IGPのテール・ビュルゴンも評価が高い。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ テール・ビュルゴン ブラン 2022」(Domaine Emmanuel Giboulot Terres Burgondes Blanc 2023)はIGP SAINTE-MARIE-LA-BLANCHE。エマニュエルの父ポールが1978年に植えたピノ・ブーロを1996年からビオディナミで管理してきた。ほのかにピンク色を帯びて白桃、アプリコット、ハチミツ、クリーミィでねっとりとしたテクスチャー、フレッシュな酸と熟した果実味のバランスがとれている。活力のあるフィニッシュ。90点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ コート・ド・ボーヌ ラ・グランド・シャトレーヌ 2022」(Domaine Emmanuel Giboulot Côte de Beaune La Grande Chatelaine 2022)は1995年に初めて手に入れた単一畑。鮮やかな酸、濃厚な果実味、白い果実、りんご、蜜蝋、彫りが深く石をなめるような味わい。89点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ コート・ド・ボーヌ レ・ピエール・ブランシュ ブラン 2023」(Domaine Emmanuel GiboulotLa Côte de Beaune Les Pierres Blanches Blanc 2023)はボーヌ・ブレッサンドの真上の南西向き斜面から。純粋で生き生きしている。白い花、果樹園の果実、張りがあり、豊かな果実味。ミネラル感を帯びた余韻が続く。90点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ リュリー・プルミエクリュ ブラン 2023」(Domaine Emmanuel Giboulot Rully 1er Cru Blanc 2023)は砂利を覆う粘土石灰岩土壌から。2023らしい芳醇で温かい果実味、繊細な酸が清涼感をもたらして調和している。うまみと塩気を帯びた余韻が伸びる。91点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ ブルゴーニュ ルージュ 2023」(Domaine Emmanuel Giboulot Bourgogne Rouge 2023)はコート・シャロネーズ地区から。熟していて、レッドチェリー、ザクロ、ブラッドオレンジ、純粋で濃密な果実味、生き生きした酸、エキスが詰まっている。うまみが豊か。89点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ アン・グレゴワール 2022」(Domaine Emmanuel Giboulot Bourgogne Hautes Côtes de Nuits En Gregoire 2022)は1976年に植えられた真南向きの畑。純粋でしなやか、肩ひじはらず自然体。タンニンはきめ細かくてなめらか、ワイルドベリー、オレンジの皮、塩気を帯びた優美な余韻。90点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ サン・ロマン アン・シュブロ 2023」(Domaine Emmanuel Giboulot Saint-Romain En Chevrot 2023)は1975年に植えられた標高の高い南向きの畑。熟した果実味と冷涼感がバランスしている。2023の暑さは感じさせない。ラズベリー、ブラッドオレンジ、酸のキレがあり、軽やかでチョーキーなフィニッシュ。91点。
「ドメーヌ・エマニュエル・ジブロ ボーヌ・リュリュンヌ 2023」(Domaine Emmanuel Giboulot Beaune Lulunne 2023)はクロ・デ・ムーシュの下部の小さな谷の窪地。水はけがよい。ポマールとの境界にあり、ややローミィでしっかりしたタンニン。骨格があり、レッドチェリー、シャクヤク、バラの花弁、風味豊かでグリップのあるフィニッシュ。92点。
輸入元は木下インターナショナル。
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