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シャンパーニュのメゾン・ポル・ロジェの前会長パトリス・ノワイエルが亡くなった。1990年代に大規模なプロジェクトに乗り出して、眠れる森の美女と見なされていたメゾンを復興した。「繊細な泡のメトロノーム」と呼ばれ、「世界で最も賞賛されるシャンパーニュ・ブランド2019」でトップになった。
ノワイエルはパリ生まれのブルゴーニュ育ち。メゾン・モメサンでゼネラル・マネジャーを務めた。1997年、ポル・ロジェの副社長に就任した後、クリスチャン・ド・ビイィの後任として取締役会会長に任命された。創業家以外で初めての取締役となり、1998年から2013年までメゾンを率いた。。
クリュッグから引き抜いたドミニク・プティをセラーマスターに据えて、醸造施設を新設・拡張した。小型の発酵槽を導入し、タイユの使用を止めて、2002年にブリュット・レゼルヴのドサージュを12g/Lから9g/Lに下げた。一方で、職人が手でリュミアージュ(リドリング)する伝統は保ち、「最後のモヒカン族でありたい」と語っていた。
1950年代に失ったロイヤル・ワラント(王室御用達)を2003年に再び取得した。2011年に行われたウィリアム王子のロイヤル・ウェディングでは、ポル・ロジェのブリュット・レゼルヴ・マグナムが公式シャンパーニュとして注がれた。正確なワイン造りで、チャーチルとの親密な関係で築かれた名声を確固たるものにして、英国での人気を高く保ち続けた。
2013年に会長を退任した後を継いだローラン・ダルクールは、2024年の創立175周年を経て、醸造施設をさらに近代化した。
日本と英国で何度も会ったが、英国人のように「ラブリー」を連発する陽気な人柄だった。サー・ウィンストン・チャーチルの品種割合など秘密をたずねると、いつもおとぼけをかます愛すべき紳士だった。

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