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最も偉大なローヌワインの1つ、ボーカステルのルーサンヌVVとオマージュ・ア・ジャック・ペラン

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 シャトー・ヌフ・デュ・パプの三傑は、ラヤス、アンリ・ボノー、シャトー・ド・ボーカステル。これはだれも異論はないだろう。この中で最も安定し、進化し続けているのは間違いなくボーカステルだ。9人の家族で切り盛りするファミーユ・ペランの中核シャトーであり、資金も人的リソースも豊かだから、技術的に立ち止まることがない。
 白にも赤にもすきがない。生産量の1割しかない白には、ローヌにありがちな重さがない。シャトー・ヌフ・デュ・パプ・ブラン2013は、フラワリーで、アーモンド、砂糖漬けの栗、ミネラルに縁どられている。豊かで、濃厚なのに、ジューシーで、生き生きしている。相対する要素が違和感なく両立している。マロラクティック発酵はしていない。


 ルーサンヌ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2013も、逆説的な要素を統合するワインだ。マーマレード、バタースコッチ、カキの殻、オレンジの花。フルボディ。ハチミツのような粘着感とともに透明な酸があり、塩みすら感じるミネラル感に支配されている。巨大なスケール感と、細部にだれのない緊張感。極めて正確。官能的。ロバート・パーカーが「ローヌのモンラッシェ」と呼んだわけがわかった。これもマロはなし。
 ルーサンヌの比率はブランが80%だが、VVは1905年に植えた古木が100%。3ヘクタールで6000本の生産。ヘクタール当たりの収量は15ヘクトリットル。「ミストラルの通り道に畑があり、酸が高まる。それが地中海性気候とバランスをとっている」とマルク・ペランは言う。日照と土壌に恵まれて成長の早いモンラッシェの畑が、夜間の冷え込みで酸を蓄えるのと少し似ている。「今が飲みごろ、まもなく閉じてしまう」とも。それは私も経験した。次の飲みごろは15年以上先だ。
 シャトー・ヌフ・デュ・パプ・ルージュ2012は、バルサミコ、中国のスパイス、ブラックベリー。ウルトラスムーズなタンニン、なめらかだが、凝縮している。砕けた石灰岩の香りを思わせるミネラル感。「ローヌ北部は花崗岩主体。ローヌ南部は世界のワイン産地で2%しかない石灰岩が豊かだ」とマルク。ムールヴェドル、グルナッシュ各30%をベースにしたボルドー的なブレンドのワインだ。
 対するオマージュ・ア・ジャック・ペランは、ムールヴェドルと単一区画を表現する。2012は怪物的ワインだった。15.5%のアルコール度を感じさせないバランスの良さ。凝縮したフルボディだが、重さはない。タンニンは柔らかく、ジューシーに感じるほどしなやか。これも、巨大な果実をミネラルの緊張感が引き締めている。余韻は非常に長い、半世紀でも保つだろう。


 オマージュの畑は3ヘクタール。株仕立て。マルクの祖父ジャックがバンドールのタンピエから切ったムールヴェドルの古木60%を核に、グルナッシュ20%、シラー10%などをブレンドした。ムールヴェドルの熟す北限だという。生産は6000本。2013、2014も造られた。マルクは「グルナッシュは花火のようにすぐ消える。ムールヴェドルは長く続き、広がる」と。今は健全だが、昔の赤にはブレタノミセスの問題があったと指摘されている。そこを突っ込むと、マルクは「ムールヴェドルの還元香がブレッドと間違われやすい」と答えるにとどまった。
 ともあれ、ロマネ・コンティ並みの生産量しかないルーサンヌVVとオマージュ・ア・ジャック・ペランが、世界で最も偉大なワインの1つであるのは間違いない。

2015年11月17日 東京・青山で

シャトー・ド・ボーカステル シャトー・ヌフ・デュ・パプ・ブラン 2013
希望小売価格:1万4000円
93点
シャトー・ド・ボーカステル シャトー・ヌフ・デュ・パプ・ルーサンヌ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2013
希望小売価格:2万2000円
96点
シャトー・ド・ボーカステル シャトー・ヌフ・デュ・パプ・ルージュ 2012
希望小売価格:1万4000円
94点
シャトー・ド・ボーカステル シャトー・ヌフ・デュ・パプ・オマージュ・ア・ジャック・ペラン 2012
希望小売価格:6万8000円
98点

輸入元:ジェロボーム

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