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ヒューゲルが大改革、偉大なグランクリュと単一畑のリースリングを発売

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 13世代にわたる家族経営の伝統を誇るアルザスのヒューゲル・エ・フィスが、名前をファミーユ・フューゲルに変更し、グランクリュや単一畑を発売するなどラインアップも一新した。来日した12代当主エティエンヌ・ヒューゲル氏に狙いを聞いた。


 1639年にリクヴィールに創業したヒューゲルは年産10万ケース。90%を100か国以上に輸出してきた。リースリングとゲヴェルツトラミネールが各40%、ピノ・グリが15%、ピノ・ノワールが5%の生産比率。現在は3世代が働いている。「ヒューゲル・エ・フィス」(ヒューゲルと息子)から「ファミューユ・ヒューゲル」(ヒューゲル家)に名称を変更したのは、今後は娘たちが参画するため。ラインアップも再構築し、1921年から不変で、品質の違いがわからないと指摘されてきたラベルを一新した。


 ジョンティの上に、4つのレンジがある。自社畑と契約畑をブレンドするスタンダード品を「クラシック」と名付け、その上に自社畑のテロワールを表現する「エステート」を設け、その上級レンジとして、「最高のテロワール」の意味を持つ「グロシ・ローイ」を作った。さらに、グランクリュのシュナンブールから単一畑「シェルハマー リースリング」の生産を始めた。グロシ・ローイの新設に伴って、最良の収穫年に仕込んでいた「ジュブリー」のレンジはなくなる。
 アルザスを代表するヒューゲルやトリンバックは、安定した高品質のネゴシアン・ワインでブランド名を広めて、アルザスの名前を高めた。そのため、ネゴシアンとドメーヌのワインの区別がわかりにくかったが、今回のリストラで明確になった。ヒューゲルはまた、これまで批判してきた「グランクリュ」の畑を使用する点を明快に打ち出し、単一畑の生産にも踏み切った。
 「1975年にグランクリュを制定した際は、畑が広すぎた。生産者はブランドより、グランクリュの名前に頼っていた。現在は消費者の知識も上がって、ブドウがどこから来たのか、どのようなテロワールなのかを知りたがっている。それらを主張する時期が来た」と、ヒューゲルは畑の個性を打ち出した理由を説明する。
 「グロシ・ローイ」はアルザスの方言で「最高のテロワール」の意味。ドイツ語で「グローセス・ゲヴェックス」、フランス語で「グランクリュ」を意味する。方言を使ったのは、「ドイツとフランスの間にはさまれて複雑な歴史を送ってきたアルザス人のアイデンティティを主張するためだ」という。3つの畑の最適な土壌から4品種を生産する。


 リースリングの「クラシック 2013」「エステート 2011」「グロシ・ローイ 2010」「シェルハマー 2007」と、ライブラリーの「レゼルブ・エクセプショネル 1981」マグナムの計5銘柄を、水平に近い形で試飲して、各レンジの違いをつかんだ。
 「クラシック 2013」は青リンゴ、ストーンフルーツ、セルフィーユ、スパイシーで、中盤から厚みが出る。刺すような酸に透明感があり、繊細な余韻。「エステート 2011」はリクヴィールのグランクリュ、シュナンブールの畑を主体に造る。首のラベルが「マール(泥灰岩)」の土壌から造る点を主張する。フローラルで、ライムとショウガ、調和のとれた酸とピュアな果実がきれいに統合し、チョークの粉のような余韻。


 「グロシ・ローイ 2010」は、5ヘクタールあるシュナンブールの3つの最良の区画から選んだ。ブライトな酸、力強さがあり、スパイシーでフローラル。よく熟していて、品格を伴う力強さと凝縮力。タイトな骨組みだが、あふれるばかりの果実を秘めていて、緊張感あふれる余韻が続く。泥灰に石灰岩の混じるシュナンブールの卓越したテロワールを表現する。クラシックとは別次元のリースリングだ。フランスの評論家ミシェル・ベタンヌは20点満点をつけたという。


 だが、「シェルハマー 2007」の衝撃度の方が大きかった。ヒューゲルも「深みが違う」と同意する。黄桃、ドライアプリコット、カモミーユ、メリハリある酸とギュッと詰まった多層的な果実が継ぎ目なく融合している。深みとスケールが途方もない。シェルハマーの区画は毎年、際立った個性を示していたから別に仕込んだという。熟度と酸度が高次元で調和したこの味わいは別格。トリンバックのクロ・サンテューヌに次ぐ単一畑リースリングが誕生した。シュナンブールの斜面中央の30列のブドウから、スタンダードボトルは4288本の生産。
 「レゼルブ・エクセプショネル 1981」マグナムは、蔵出しの貴重なサンプル。ネズの実、カリンのジャム、石灰を砕いたようなミネラル、リースリングの四半世紀を超す熟成能力を思い知った。


 すべてのワインはディアムで詰めている。2004年にハーフボトルで始めて、10年以上かけた実験から、ブショネ、安定性、香りの発展などすべての面で、天然コルクをしのぐことを確認したという。エティエンヌはIT好きで、裏ラベルのQRコードから、畑や醸造の詳細な情報や動画解説が見られる。日本語を含む8か国語に対応している。

2016年2月12日 東京・青山で
ヒューゲル リースリング クラシック 2013
89点
希望小売価格:2750円
ヒューゲル リースリング エステート 2011
91点
希望小売価格:4200円
ヒューゲル リースリング グロシ・ローイ 2010
96点
希望小売価格:1万2000円
ヒューゲル リースリング シェルハマー 2007
98点
希望小売価格:1万6000円
ヒューゲル リースリング レゼルブ・エクセプショネル 1981マグナム
95点
参考商品
輸入元:ジェロボーム

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