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進化止めないポル・ロジェ、正確で男性的なサー・ウィンストン・チャーチルの秘密

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 シャンパーニュ造りには投資が必要だ。瓶内熟成に伴うキャッシュフローだけではない。区画別の醸造に伴う醸造設備にも資金を要する。ポル・ロジェは15年間で30億円を超す投資を行った。最小のステンレス発酵槽は25ヘクトリットルと小型。オフィスも刷新された。
 より正確な醸造が可能になり、メディアから評価されている。フランスの雑誌「ラ・ルヴュ・ド・ヴァン・ド・フランス」では、「繊細な泡のメトロノーム」と評され、2位のメゾンに選ばれた。ドリンクス・インターナショナルの「世界で最も賞賛されるシャンパーニュブランド」では3位。ルイ・ロデレールと並ぶトップグループの仲間入りをした。

 フラッグシップ「キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル」は、ミステリアスなキュヴェだ。ブレンド比率は非公開。英国の宰相へのオマージュとして、死後10年目の1975ヴィンテージに初めて仕込まれた。明らかなのは、チャーチルの生前から存在するグランクリュ畑のピノ・ノワールとシャルドネということだけ。彼の好みに合わせてスタイルを築いた。チャーチルが好んだ1895、1928、1947ヴィンテージは、ピノ・ノワールが70から80%で、残りはシャルドネ。そんなところだろう?と聞いても、ローラン・ダルクール社長は笑って答えない。


 「チャーチルは比率をたずねず、気にしたのはヴィンテージだけ。最良のものだけを愛した。その精神を尊重している。ヴィンテージの出来そうな年は、リザーヴワインに回す量を検討して、まずヴィンテージをどう造るか考える。だが、キュヴェ・チャーチルはヴィンテージと同じ畑の最良の区画を選ぶというわけではない。複雑なアッサンブラージュ(ブレンド)をしている。1+1が3になる。造るたびに発見のあるキュヴェだ」
 2004を試飲した。レモンの皮、ライムに、完熟したリンゴ、アプリコットが混じり、ショウガ、シナモンのヒント。驚くほどフレッシュで、凛とした酸に支えられているが、中間がぎっしり詰まっていて、ふくらみのある余韻が長く続く。後半の力強い盛り上がりが男性的といわれる所以だろう。タイトな2002より、おおらかさがある。ボルドーグラスが最適。食事に合わせたい。八角をまぶしたチャーシュー入りのスパイシーなチャーハンを受け止めた。近づきやすいが、10年以上は進化するだろう。ドザージュはリットル当たり7から8グラム。


 「ピュア エクストラ・ブリュット NV」と「ブラン・ド・ブラン 2008」も試飲した。ノンドゼのピュアは青リンゴ、レモン、セージ、正確で、ややスモーキー。洗練されてエレガント。3品種を等分にブレンドしているが、瓶内熟成期間は「ブリュット・レゼルブ」より短い3年間で、フレッシュ感を大切にする。名前の通りピュア。「ノンドゼはドザージュしないだけと簡単に考える人が多いが、微妙なチューニングが必要になる。刺し身、カキ、寿司にあう」とローラン。
 ブラン・ド・ブランはレモンドロップ、ナッツ、塩気のあるミネラル感に包まれている。焦点が合っていて、しっかりした骨組みがある。ヴィンテージ2008の文句のないバランスとスケールの大きさ。オワリー、シュイィ、クラマン、アヴィーズ、オジェの5つのグランクリュのブレンド。チャーチルの陰に隠れがちな控えめなスターだ。
 自社と契約畑合わせて175ヘクタールのブドウから、生産量は180万本。フランス市場が落ち込んでいるため、栽培農家が協同組合やネゴシアンに売っていたブドウを、評判のいいポル・ロジェに買ってくれという例が増えているそうだ。「メゾンの社長はプロモーンションの旅も多いが、大切なのは収穫期。契約農家の圧搾を見て回って、品質にこだわっていることを示す」と。細かな積み重ねが品質につながる。いまだに手動の動瓶(ルミュアージュ)にこだわるのは「シャンパーニュ造りが文化であることを見せるため」という。品質向上に貢献した醸造責任者ドミニク・プティが2018年に引退するため、後継者を募集している。
 
2016年3月11日 東京の中華「赤坂璃宮 銀座店」で

シャンパーニュ ポル・ロジェ ピュア エクストラ・ブリュット NV デゴルジュマンは2014年末
90点
希望小売価格:9000円
シャンパーニュ ポル・ロジェ  ブラン・ド・ブラン 2008 デゴルジュマンは2015年3月
92点
希望小売価格:1万3000円
シャンパーニュ ポル・ロジェ キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル 2004 デゴルジュマンは2015年3月
95点
希望小売価格:3万円
輸入元:ジェロボーム

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