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ドライ・ファーミングからくるタイトさ、フリーマーク・アビー

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 1976年の「パリスの審判」に赤白ワインが選ばれたカリフォルニア・ナパヴァレーの老舗フリーマーク・アビーでマーケティングを担当するデヴィッド・ボウマン副社長が、プロモーションで来日した。

 フリーマーク・アビーの創業は1886年。禁酒法後の1939年に再開し、68年に7人の共同経営者が購入した。パリスの審判には、白と赤の両方が出品され、それぞれ6位と10位だった。現在はジャクソン・ファミリー・ワインズの一員。
 ワインメーカーは1985年に就任したテッド・エドワーズ。歴史は古いが、2つの点でカリフォルニアには珍しい。一つがマロラクティック発酵をしないシャルドネを造っていること。もう一つが、ラザフォードのボッシェ・ヴィンヤードとシカモア・ヴィンヤードを灌がいせずに栽培していること。5種のワインを試飲したが、通常のヴァレー・フロア(谷床部)のワインとは違う。
 「シャルドネ ナパヴァレー 2014」は、フレッシュな酸味、レモニーで、グレープルーツ、砕いた石の香りがあり、余韻にナッティなニュアンス。コアの果実はナパヴァレーらしく熟しているが、ノンマロによって生き生きした味わいを保っている。
 カベルネ・ソーヴィニヨンは3種。「カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2011」は冷涼で雨がちなヴィンテージらしく、果実は熟しているが、ほのかに青い。ブラックチェリー、葉巻に、生ハーブ。ブライトな酸があり、テクスチャーはややタイト。日本人好みのうまみのある味わい。

 「カベルネ・ソーヴィニヨン シカモア・ヴィンヤード ラザフォード 2011」は甘草、杉、ミント、テクスチャーはタイトで、骨組みが太く、ボルドー的な抑制されたスタイル。6.7%のカベルネ・フランが硬さと複雑さを与えている。スタグリンのワイナリーの隣。
 「カベルネ・ソーヴィニヨン ボッシェ・ヴィンヤード ラザフォード 2010」は、4品種ブレンドのシカモアと違って、カベルネと5%メルロのブレンド。2010らしい凝縮した果実があり、エンジン全開。余韻にタイトな酸が残り、焦点があっている。いずれもラザフォード・ダストからくるミネラル感が明確に出ている。
 「シカモアはボルドー右岸のような石灰岩と粘土土壌。ボッシェはポイヤックのように砂利が多い。地中深くに根が伸びていてドライ・ファーミングが可能。ブドウ樹にストレスを与えて、生理的な成熟に時間がかかる。両方とも家族農家の小さな畑。1.5キロしか離れていないが、北にあるボッシェの方が温かい」と。

 カリフォルニアでは60年代まで、灌がいしないのが普通だった。地質学の権威クロード・ブルギニヨンは「カリフォルニアの雨量があればドライ・ファーミングは可能」と語っていた。灌がいは糖度の上昇を招く。ドミナスやイングルヌックもドライ・ファーミングで成功してきた。フリーマーク・アビーの単一畑ワインのボルドー的なタイトさとミネラル感は、ドライ・ファーミングと無縁ではないだろう。

2016年6月20日 東京・霞が関で

フリーマーク・アビー シャルドネ ナパヴァレー 2014
89点
希望小売価格:5000円
フリーマーク・アビー メルロ ナパヴァレー 2013
88点
希望小売価格:5100円
フリーマーク・アビー カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2011
88点
希望小売価格:6900円
フリーマーク・アビー カベルネ・ソーヴィニヨン シカモア・ヴィンヤード ラザフォード 2011
90点
希望小売価格:1万6000円
フリーマーク・アビー カベルネ・ソーヴィニヨン ボッシェ・ヴィンヤード ラザフォード 2010
91点
希望小売価格:1万6000円
輸入元:オルカ・インターナショナル

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