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ボルドー・プリムールと並んでラ・プラス・ド・ボルドーの重要な秋の商戦が、9月に向けて始まる。東京でも24日に新世界を中心にした「ビヨンド・ボルドー」(Beyond. Bordeaux)と名乗るプレミアムワイン試飲会が開かれた。イタリアやシャンパーニュ、ニュージーランドなどの新規参入も年々増えて、世界のワイン産業でますます重要な位置をしめるようになっている。
古典的だが理想的なラ・プラス・ド・ボルドーのシステム
ラ・プラス・ド・ボルドーはネゴシアン、クルティエ、シャトーの3層構造からなる流通システム。ボルドーの高級ワインを流通させるために始まった世界最古の市場だ。ボルドーのシャトーは仲介人を通して、ワインを卸売りのワイン商に販売する。300を超すワイン商はそのワインを170か国以上に広がるインポーターやブローカーを通じて、消費者に販売する。
このシステムは、ブルゴーニュのドメーヌがインポーターに直接販売するのに比べると、煩雑で、中間マージンが大きい。だが、長年築かれてきた世界的なネットワークを生かして、柔軟に需要と供給に対処できる強みがある。
世界経済が不安定になれば、シャトーはプリムールの販売価格を一斉に下げて、減衰する需要を活気づける。ネゴシアンは需要が供給を上回るワインを世界に公平に流通させられる。量の限られる人気ワインは、専門的な知識に基づくプロモーションでネゴシアンの売り出しから数時間で世界の市場に販売できる。
シャトーは世界中に販売代理店を展開する必要がない。生産者も消費者も偽造や状態の悪いワインを避けて、トレイサビリティを確保できる。古臭く見えるようだが、高級ワインを効率的に世界中の大量の消費者に確実に届けられる理想的な仕組みなのだ。
システムのそうした利点は、品質を向上させてきたボルドー以外のワインにとっても魅力的だ。広い流通ネットワークを利用して、新たな消費者を獲得できる。評論家は試飲から時間をおかずに評価を発表する。国際的な評価を高められ、名門ブランドとして、長期的な価格の上昇が期待できる。
品質向上の著しいナパやチリ、イタリアが参入
その結果、販売力の弱い新世界やイタリアの生産者がラ・プラス・ド・ボルドーに参入してきた。ボルドー以外のワインが初めて販売されたのは1998年。チリのコンチャ・イ・トロとボルドーのドメーヌ・バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドのジョイント・ヴェンチャー「アルマヴィーヴァ」の1996だった。
当初は販売に苦労したが、評論家の評価の高いワインが各地から参入するようになった。フィリップ・ド・ロスチャイルドとロバート・モンダヴィがコラボしたナパのオーパスワンは2004年に、スーパータスカンのマッセートが2008年に初めて販売された。その数はこの10年間で、増え続けている。
Liv-exのレポートによると、フランスを含む11か国32地域の100を超すワインが、今後数週間のうちにラ・プラス通じてリリースされる予定だ。チリ、アルゼンチン、ナパなど各地から新規参入が増えている。
伝統国も目を向けている。イタリアからピエモンテのパルッソ、ヴェネトのアレグリーニ、オーストリアのクラッハー。シャンパーニュからは、単一畑のクロ・ランソン、クロ・デ・ゴワス、シャトー・ダヴィーズなど。ニュージーランドのクラギー・レンジも加わった。
秋のラ・プラス・ド・ボルドーに参入する新世界や伝統産地のワインは、熟成中のプリムールと違って、瓶詰めされたボトルを販売するため、インポーターには評価しやすい。キャッシュフローもいい。ラ・プラスで最も成功したのはイタリアワインだ。
最も成功したのはイタリア
Liv-exによる2019年7月から2022年7月までの価格パフォーマンスの分析では、マッセートが40.5%、オルネライアが38.2%、ソライアが37.2%上昇し、シャトー・ディケム(+15.9%)、オーパスワン(+12.6%)、ボーカステルのオマージュ・ア・ジャック・ペラン(+11.3%)の上昇率を上回っている。
Liv-exで2010年に取引額の95.7%を占めていボルドーのシェアは、今年に入って34.1%と過去最低に落ち込んでいる。二次市場で取り引きされるワインの数は同じ期間で7倍に増えた。世界の主要産地以外の残りの地域の勢いが増している。ビヨンド・ボルドーの存在感はますます大きくなっている。
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