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次世代が育ち将来が楽しみ、サントネイのフルーロ・ラローズ(ブルゴーニュ2021)

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 ブルゴーニュのヴィニュロンはどのようにして生まれるのか。外部からやって来た、花屋生まれのバンジャマン・ルルーのような男もいるが、家族ドメーヌの跡を継ぐ若者が主流だろう。


 跡継ぎがいなくて、実業家に買収されたボノー・デュ・マルトレのようなドメーヌもあったが、その場合は親族が引き継ぐ例も多い。


親の背中を見て育つヴィニュロン


 息子や娘は親の働く姿を見て育つうちに、ワイン造りに惹かれるのだろう。世界からトレードやジャーナリスト、愛好家がわざわざ足を運んで、取り引きや取材をする。賛辞を寄せる肉声を聞いて、尊敬の念を抱き、仕事に関心を抱くのは当然だろう。


 親の背中を見て育つーー


 このことわざは洋の東西を問わないかもしれない。


 コート・ドール南部のサントネイ。ボーヌから15分も走ると森林も密になる。ブドウ畑が連なる風景とは異なる。この地に居を構えるドメーヌ・フルーロ・ラローズも、久美子&ニコラ・フルーロ夫妻の息子のフランソワとミシェル兄弟がドメーヌを継ぐことになった。


 久美子さんはことのほか喜んでいる。ボーヌの私立高校に通わせていたが、自分からヴィニュロンになりたいと言い出した。どのドメーヌでも親が強制する例はない。選択肢は提示して、子供の自発性にまかせていると聞く。やはり「親の背中」なのだろう。


 フランスの子どもたちは、高校時代から自分の将来をきちんと考えている。「日本は小中高生のなりたい職業のトップに会社員がくる」と話すと、久美子さんは意味が理解できず驚いていた。


2人の息子はラフォンやルロワで研修


 長男のフランソワはコント・ラフォンで研修し、次男のミシェルはルロワで研修した。フランソワはDRCの2017ヴィンテージの瓶詰め作業も経験している。両親の幅広い人脈のおかげ貴重な体験を積んで、刺激を受けてきたのだろう。


 夫妻は同じサントネイ村で暮らすオベール・ド・ヴィレーヌ夫妻とも、ラルー・ビーズ・ルロワとも親交が深い。ドメーヌのあるシャトー・ド・パスタンでは、DRCの基礎を築いたジャック・マリー・デュヴォー・ブロシェが19世紀に、ロマネ・コンティを瓶詰め・保管していた。2018年には皇太子時代の天皇が、ドメーヌを訪問された歴史もある。


 若くしてDRCやルロワのワインにふれれば、しっかりした人生観を持って進路を定めるのも不思議はない。とはいえ、風に吹かれて漠然とした10代を送っていた我が身を振り返ると、うらやましくもある。


 5月末に3年ぶりに訪ねたドメーヌで、還暦を迎えた当主ニコラ・フルーロさんも交えて、手造りのシチューをいただきながら、フランスの最近の事情の話で盛り上がった。日本語の会話はやはり楽。この日は朝9時から、ソゼやラフォンなど5軒を回ったが、疲れは感じなかった。


 「3月にグランジュールが久しぶりに開かれて、大勢の人々が訪れた。体感的には、8割がコロナにかかった感じがあるわね。最近は話題にものぼらなくなったけれど」と久美子さん。確かに、今回の旅で会った数十人の醸造家の多くがコロナに感染した経験があった。その後に新系統のオミクロンが広がって、事情は変わっただろうが……。


フレッシュさが際立つ2021


 2021を試飲した。2021の収量は平年より半減したが、フレッシュ感にあふれているという。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ サントネイ・プルミエクリュ クロ・デュ・パスタン・ブラン 2021」(Domaine Fleurot-Larose Santenay 1er Cru Clos du Passe Temps Blanc 2021)は白と赤が仕込まれるモノポール。白い花、柑橘、レモニーな酸、酵母のニュアンスが残り、塩気とうまみを帯びた味わい。生き生きとしている。89点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエクリュ アベイ・ド・モルジョ・ブラン 2021」(Domaine Fleurot-Larose Chassagne Montrachet 1er Cru Abbaye de Morgeot Blanc 2021)はレモンを搾ったようなフレッシュ感、黄色の花、白桃、ナッティで、まろやかなテクスチャー、ふくよかな果実味、うまみがジリジリと広がる。シガールと呼ばれる300Lの樽で熟成した。89点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエクリュ クロ・ド・ラ・ロックモール 2021」(Domaine Fleurot-Larose Chassagne Montrachet 1er Cru Clos de La Rocquemaure 2021)は洋ナシ、黄桃、アカシアのハチミツ、クリーミィなテクスチャー、塩味を帯びた味わい。まろやかで、正確なフィニッシュ。90点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ バタール・モンラッシェ 2021」(Domaine Fleurot-Larose Batard Montrachet 2021)はクリオ・バタールに近く、フランソワ・ピノーがプライベートキュヴェを仕込む区画の隣。熟したレモン、アプリコット、黄桃、丸くて、バタリーなテクスチャー、はつらつとした酸に支えられて、ソルティなうまみがたっぷり。例年より収獲を早めて、いつもよりフレッシュに仕上げたという。92点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ ル・モンラッシェ 2021」(Domaine Fleurot-Larose Le Montrachet 2021)はフランソワ・ピノーとフォンテーヌ・ガニャールにはさまれた0.04haの区画。収量は25%減少した。スケールが大きくてリッチ、マンゴ、パイナップル、エキゾチックで、ストラクチャーとグリップがある。ふくよかで、ほろ苦みを帯びていて複雑。長い余韻。93点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ サントネ・プルミエクリュ クロ・デュ・パスタン・ルージュ 2021」(Domaine Fleurot-Larose Santenay 1er Cru Clos du Passe Temps Rouge 2021)は全房発酵10%、ラズベリー、ブラッドオレンジ、シャクヤク、白コショウ、ジューシーでふくよかな果実味。生き生きした酸があり、中程度のフィニッシュ。89点。


 「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエクリュ アベイ・ド・モルジョ・ルージュ 2021」(Domaine Fleurot-Larose Chassagne Montrachet 1er Cru Abbaye de Morgeot Rouge 2021)は赤向きの区画で、ストラクチャーがしっかりしている。ダークラズベリー、オレンジの皮、口中ではねるような活力のある果実味。フレッシュで、アーシーなフィニッシュ。90点。


 ドメーヌは1872年創業の老舗。ニコラの祖父オーギュストが、ジュール・ラフォンと同じ1918年にモンラッシェの重要な部分を購入したが、4人の子供がいたため、ルフレーヴ、シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェ(今はドメーヌ・デュージェニー)らに分割されて、持ち分は少なくなってしまった。


 久美子&ニコラ夫妻は2003年に結婚した。子どもたちから刺激を受けて、ニコラは朝6時から畑仕事に精を出している。将来が楽しみだ。

右から、フランソワ、久美子、ニコラ、ミシェル
仔牛のフリカッセ

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