記念碑的なシャンベルタン、オリヴィエ・バーンスタインの2014

　一方通行だらけのボーヌの小道をくぐり抜けて、小さなメゾンに着いた。荒廃していた15世紀の館を改修中。マイクロ・ネゴシアンという理由がよくわかった。小さな発酵槽が数基あるだけ。スタッフは3人。熟成中の樽も少ないが、アペラシオンはキラ星のごとく。ヴィラージュ1、プルミエクリュ3、グランクリュ7。樽から試飲した2014は、驚くほど水準が高い。2007から始め、2013が最高かと思っていたが、さらに上を行く。

　ジュブレ・シャンベルタンは唯一のヴィラージュ。2区画のブレンド。砕いたラズベリー、シナモン、エキスがたっぷり。質感は柔らかいが、ジュブレ・シャンベルタン特有のメタリックなタッチがある。
　続いてプルミエクリュ。シャンボル・ミュジニー・レ・ラヴロットはシルキーで、セクシー。野イチゴ、ラズベリー、プラム。粒立ちが細やかで、おおらかな2013より正確。「2013よりストレートだ」とオリヴィエ。ジュブレ・シャンベルタン・レ・シャンポーはやや冷涼なテロワール。自社畑。ブラックベリー、ミント、スモーク。標高は300メートル以上のテラスの畑で、表土は薄い。男性的だが、細身の筋肉が締まっている感じが好ましい。ジュブレ・シャンベルタン・レ・カズティエは甘草、ブラックベリーのジャム、よりコクと濃密さがあり、まろやか。樹齢80年以上の東向き急斜面から。隣接するクロ・サン・ジャックの大半の造り手をしのぐ。

　グランクリュ7つのうち4つはジュブレ・シャンベルタンにある。醸造責任者がベルナール・デュガ（デュガ・ピィ）のおいということもあって、ジュブレ・シャンベルタンに強い。シャルム・シャンベルタンは、鉄分を感じさせ、みずみずしいフレッシュ感と力強さのバランスがいい。シャルム60％、マゾワイエール40％をブレンドしているせいか。気品と深みがあり、持続性が長い。クロ・ド・ヴージョは洗練されていて、繊細なミネラルと濃密な果実、タンニンのバランスがとれている。中腹の斜面から。
　クロ・ド・ラ・ロッシュは砕けた岩、プラム、刺すようなミネラル感。スパイシーで、タンニンはシルキー。骨組みはしっかりしていて、重量感がある。余韻は極めて長い。ボンヌ・マールはテール・ブランシュとテール・ルージュの両方の畑をブレンド。冷たい石、甘いブラックチェリー、ブラックティー、包容力があり、声高に自己主張している。巨大な潜在力。「あと4か月でさらに成長する」という。
　ここのトップ3はルソーやDRCの試飲と同じくらい、息もつかせぬハイライトが続く。自社畑のマジ・シャンベルタンは黒キノコ、コーヒー、黒鉛、やや頑強なところを丸く包みこむスケールの大きさがある。密度と品格は別次元。だが、上には上がある。シャンベルタン・クロ・ド・ベーズは開放的で、女性的とすらいえる繊細さと純粋な果実。凝縮した果実とエキスのセンセーション。シャンベルタンにはノックアウトされた。層をなす果実が押し寄せてくる。深遠にして、濃密だが、丸い。余韻の長さはけたはずれ。記念碑的なワインになるに違いない。わずか5樽。

　シャサンの樽を気にいって使っている。収穫してから組み上げてくれるほど自由度が高く、細かい注文に応じてくれるからだという。中古樽をバンジャマン・ルルーが使っている。
　2012から右肩上がりを続けている。「2014の可能性はすごい」とオリヴィエも満足気だった。「来週はジャンシス・ロビンソン、ティム・アトキン、ステファン・タンザーが来る」とうれしそうに話す。波に乗っている。ブルゴーニュで見逃せない生産者だ。

2015年11月6日　ボーヌのオリヴィエ・バーンスタインで

オリヴィエ・バーンスタイン　ジュブレ・シャンベルタン　2014
88～90点
オリヴィエ・バーンスタイン　シャンボル・ミュジニー・プルミエクリュ・レ・ラヴロット　2014
90～92点
オリヴィエ・バーンスタイン　ジュブレ・シャンベルタン・プルミエクリュ・レ・シャンポー　2014
91～93点
オリヴィエ・バーンスタイン　ジュブレ・シャンベルタン・プルミエクリュ・レ・カズティエ　2014
92～94点
オリヴィエ・バーンスタイン　シャルム・シャンベルタン　2014
93～95点
オリヴィエ・バーンスタイン　クロ・ド・ヴージョ　2014
93～95点
オリヴィエ・バーンスタイン　クロ・ド・ラ・ロッシュ　2014
94～96点
オリヴィエ・バーンスタイン　ボンヌ・マール　2014
94～97点
オリヴィエ・バーンスタイン　マジ・シャンベルタン　2014
95～97点
オリヴィエ・バーンスタイン　シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ　2014
95～97点
オリヴィエ・バーンスタイン　シャンベルタン　2014
96～98点

輸入元：BB＆R