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クリスタルとドン・ペリニヨンは、毎年のように生産される。これを批判するのはお門違いだ。クリスタルはビオディナミに転換中の自社畑から造る。熟度が高い。潜在アルコール度が12%も珍しくない。ドン・ペリニヨンは、最大のメゾンであるモエ・エ・シャンドンの圧倒的なリソースを使える。
それでも、クリスタルの2010は生産されない。2002から2009まで生産されてきたが、冷涼な2010は難しかったという。現行ヴィンテージは2007。これに続くのは2009となる。9月に発売を始め、日本では2016年11月に、ブリュット・ナチュール第二弾の2009とともに発売される予定。2008のクリスタルは後回しにされた。クリスタルがヴィンテージ順を入れ替えて出すのは初めて。
疑問がわいた。2008は多くの生産者が優良という。だから後回しにするのか?シェフ・ド・カーヴのジャン・バティスト・レカイヨンの答えは意外だった。「2008は冷涼な年だった。もう少しオリと共に熟成する必要がある。2009はこれ以上、熟成しなくていい。好きなヴィンテージだ。リッチで熟して、クリーミィ」と。
ただ、2009のクリスタルとブリュット・ナチュールは試飲できなかった。クリスタルは輸送期間も含めて、オリ抜きから8か月休ませる。落ち着いていないという。代わりに試飲したのが「ブラン・ド・ブラン 2009」と「ヴィンテージ 2009」。「ブラン・ド・ブラン」は、生き生きとしていて、快活な酸とピュアな果実に、まろやかなテクスチャー。熟度の高さよくわかる。ノンマロだが、クリーミィ。リキュー・ド・ティラージュを減らすドゥミ・ムースの手法で造られ、ガス圧は3.5-4気圧。既に楽しめる。35%は大樽で熟成。デゴルジュマンは2016年1月。「ヴィンテージ2009」は傑出したバランスの良さ。フィネスとフレッシュ感と力強さ。丸くて、柔らかく、調和がとれている。常にデゴルジュマンから6か月休ませる。ドザージュは8グラム。下手なメゾンのプレスティージュキュヴェをしのぐお買い得だが、偉大なクリスタルの影で見過ごされるのが惜しい。
「シャンパーニュのヴィンテージは、10年間のうち6回は雨や腐敗に左右される。2009は2012や2015と並んで、収穫日を自由に決められた。テロワールが前面に出るヴィンテージだ。そうでない年は気候が前面にでる。ブラン・ド・ブラン2009のクランチー(シャリシャリ感)さが好きだ。2006はフルーティだが、ややジャミーだった」
ブラン・ド・ブランはアヴィーズ70%、メニル20%、クラマン10%。アヴィーズの比率を増やしている。80%にし、クラマンとのアヴィーズに集中するのが理想だという。「地図を見ればわかるが、アヴィーズとクラマンは西側の森が狭い。メニルは西側に森が広がり、わき水が多い。チョーク土壌の水分が少ないと、樹はゆっくりと育ち、フレッシュな酸があり、凝縮する。塩っぽいミネラル感が出る。クラマンには凝縮力がある。メニルやヴェルテュのように水分が多い土壌は、ブドウの粒が大きくなり、フローラルで、肉厚なサイドに寄る。メニルが1985年までプルミエクリュだったのはそのせいだ」
区画によるだろうが、ミネラル感の一般論の先にある話を、栽培家ジャン・バティストから教わった。
「クリスタル 2007」は何度か試飲したが、そのたびに正確さが増している。フレッシュな酸とピュアで熟した果実がきれいに溶け合い、チョーキーなミネラル感が通奏低音として響いている。2007はいつ飲んでもバランスが素晴らしい。ミネラリーなのに、クリーミィなテクスチャーがあり、フィニッシュはとがったペンのように焦点があっている。この年からクリスタルの畑でビオディナミを始め、20%を転換した。
「45区画が純粋なチョークだ。チョーキーな区画はクリスタルに使い、粘土が混じるとヴィンテージに回す。シャンパンのモンラッシェだ。それも、シャサーニュ・モンラッシェ村側の畑。ピュリニー・モンラッシェ村側はドライで、チョークの固まりだが、シャサーニュ側のモンラッシェはふくよかで、チョークの粉のニュアンスがある」
クリスタルにはシャントレンヌなどアヴィーズの5区画のシャルドネも含まれる。ジャック・セロスが仕込むリューディの区画だ。こうした畑を19世紀から所有し、ビオディナミで耕作するのがメゾンの強みだ。ジャン・バティストはアンセルム・セロスとも交流がある。評論家ピーター・リエムが開いたNYの試飲会に同行した。2週間前も「デート」したという。
「アンセルムのスタイルは好きではないが、目指す方向は理解出来る」と。メゾンの帝王とグローワーのカリスマ。本質を理解している同士だから話ができるのだろう。
2016年6月17日 シャンパーニュ・ランスのルイ・ロデレールで
シャンパーニュ ルイ・ロデレール ブラン・ド・ブラン 2009
92点
シャンパーニュ ルイ・ロデレール ヴィンテージ 2009
93点
シャンパーニュ ルイ・ロデレール クリスタル 2007
97点
価格:2万8000円
輸入元:エノテカ
それでも、クリスタルの2010は生産されない。2002から2009まで生産されてきたが、冷涼な2010は難しかったという。現行ヴィンテージは2007。これに続くのは2009となる。9月に発売を始め、日本では2016年11月に、ブリュット・ナチュール第二弾の2009とともに発売される予定。2008のクリスタルは後回しにされた。クリスタルがヴィンテージ順を入れ替えて出すのは初めて。
疑問がわいた。2008は多くの生産者が優良という。だから後回しにするのか?シェフ・ド・カーヴのジャン・バティスト・レカイヨンの答えは意外だった。「2008は冷涼な年だった。もう少しオリと共に熟成する必要がある。2009はこれ以上、熟成しなくていい。好きなヴィンテージだ。リッチで熟して、クリーミィ」と。
ただ、2009のクリスタルとブリュット・ナチュールは試飲できなかった。クリスタルは輸送期間も含めて、オリ抜きから8か月休ませる。落ち着いていないという。代わりに試飲したのが「ブラン・ド・ブラン 2009」と「ヴィンテージ 2009」。「ブラン・ド・ブラン」は、生き生きとしていて、快活な酸とピュアな果実に、まろやかなテクスチャー。熟度の高さよくわかる。ノンマロだが、クリーミィ。リキュー・ド・ティラージュを減らすドゥミ・ムースの手法で造られ、ガス圧は3.5-4気圧。既に楽しめる。35%は大樽で熟成。デゴルジュマンは2016年1月。「ヴィンテージ2009」は傑出したバランスの良さ。フィネスとフレッシュ感と力強さ。丸くて、柔らかく、調和がとれている。常にデゴルジュマンから6か月休ませる。ドザージュは8グラム。下手なメゾンのプレスティージュキュヴェをしのぐお買い得だが、偉大なクリスタルの影で見過ごされるのが惜しい。
「シャンパーニュのヴィンテージは、10年間のうち6回は雨や腐敗に左右される。2009は2012や2015と並んで、収穫日を自由に決められた。テロワールが前面に出るヴィンテージだ。そうでない年は気候が前面にでる。ブラン・ド・ブラン2009のクランチー(シャリシャリ感)さが好きだ。2006はフルーティだが、ややジャミーだった」
ブラン・ド・ブランはアヴィーズ70%、メニル20%、クラマン10%。アヴィーズの比率を増やしている。80%にし、クラマンとのアヴィーズに集中するのが理想だという。「地図を見ればわかるが、アヴィーズとクラマンは西側の森が狭い。メニルは西側に森が広がり、わき水が多い。チョーク土壌の水分が少ないと、樹はゆっくりと育ち、フレッシュな酸があり、凝縮する。塩っぽいミネラル感が出る。クラマンには凝縮力がある。メニルやヴェルテュのように水分が多い土壌は、ブドウの粒が大きくなり、フローラルで、肉厚なサイドに寄る。メニルが1985年までプルミエクリュだったのはそのせいだ」
区画によるだろうが、ミネラル感の一般論の先にある話を、栽培家ジャン・バティストから教わった。
「クリスタル 2007」は何度か試飲したが、そのたびに正確さが増している。フレッシュな酸とピュアで熟した果実がきれいに溶け合い、チョーキーなミネラル感が通奏低音として響いている。2007はいつ飲んでもバランスが素晴らしい。ミネラリーなのに、クリーミィなテクスチャーがあり、フィニッシュはとがったペンのように焦点があっている。この年からクリスタルの畑でビオディナミを始め、20%を転換した。
「45区画が純粋なチョークだ。チョーキーな区画はクリスタルに使い、粘土が混じるとヴィンテージに回す。シャンパンのモンラッシェだ。それも、シャサーニュ・モンラッシェ村側の畑。ピュリニー・モンラッシェ村側はドライで、チョークの固まりだが、シャサーニュ側のモンラッシェはふくよかで、チョークの粉のニュアンスがある」
クリスタルにはシャントレンヌなどアヴィーズの5区画のシャルドネも含まれる。ジャック・セロスが仕込むリューディの区画だ。こうした畑を19世紀から所有し、ビオディナミで耕作するのがメゾンの強みだ。ジャン・バティストはアンセルム・セロスとも交流がある。評論家ピーター・リエムが開いたNYの試飲会に同行した。2週間前も「デート」したという。
「アンセルムのスタイルは好きではないが、目指す方向は理解出来る」と。メゾンの帝王とグローワーのカリスマ。本質を理解している同士だから話ができるのだろう。
2016年6月17日 シャンパーニュ・ランスのルイ・ロデレールで
シャンパーニュ ルイ・ロデレール ブラン・ド・ブラン 2009
92点
シャンパーニュ ルイ・ロデレール ヴィンテージ 2009
93点
シャンパーニュ ルイ・ロデレール クリスタル 2007
97点
価格:2万8000円
輸入元:エノテカ
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