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革新してアプローチャブル、ポップでカジュアルなリューセック2019

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 ボルドーのソーテルヌが、保守的なイメージを大きく変えようとしている。ポップなボトル、バイ・ザ・グラスでのサービス、重すぎない味わい、そして辛口ワイン……革新の先頭を走るシャトー・リューセック2019を試飲し、変化への胎動を実感した。


 戦前はボルドーの生産量の3割以上を占めていたソーテルの甘口ワインは伸び悩んでいる。ヘルシー化を受けて消費が停滞している。高騰する赤ワインに対して、貴腐ブドウを手摘みする生産コストの高さにもかかわらず、価格も上昇していない。


 そのため、シャトー・ディケムがバイ・ザ・グラスのプロモーションを始めて、熟成ボトルを食後に飲むというスタイルを変えようとしている。シャトー・クリマンス、シャトー・ギローやシャトー・スデュイローは新たなドライ白ワインを発売した。


威厳あるパッケージングがフレンドリーに


 そうした動きに先駆けたのがリューセックだ。1855年格付けでプルミエクリュ(第1級)に位置づけられたシャトーは1984年、ドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド(ラフィット)に購入された。NYタイムズの元特派員でエリート養成校「HEC」でビジネスを修めたサスキア・ド・ロスチャイルドが2017年にDBR(ラフィット)のチェアマンに就任して、大きく変わった。


 まずパッケージング。ポップで、親しみやすくなった。リサイクル可能な素材で製造されたオリーブグリーンのボトルの前面には、シルクスクリーンで施した黄色の王冠。これはかつての威厳ある黄金の王冠に変わるもの。ソーテルヌの重厚なイメージを変えた。


 キュートな第二のコルクを首にかけられる。「飲み残したら冷蔵庫に入れて」というメッセージだ。抜栓後にこれで栓をして冷やせば、甘口ワインは大きな味の変化がなく楽しめる。食前に一口、食後に一口と、気楽に長い間、楽しめる。梱包の木箱は止めた。これは輸送時の二酸化炭素排出量を削減できる。


 ミレニアル世代のサスキアは、サステイナビリティを重視している。ラフィット・ロートシルトを含むDBR(ラフィット)傘下シャトーのオーガニック転換を進めている。リューセックも2024年に認証を得る。


 リューセックはイケムの下の標高79mに位置し、93haの畑は砂利と砂質粘土土壌。ボルドー以外のワイナリーをみる国際技術責任者のオリヴィエ・トレゴアが、2016年からエリック・コレールの後任として技術責任者となった。ラフィット・ロートシルトを監督したエリック・コレールも、彼の前任のシャルル・シュヴァリエもリューセックの技術責任者を務めていた。


残糖を減らして重すぎない味わい


 「シャトー・リューセック 2019」(Chateau Rieussec 2019)はセミヨン89%、ソーヴィニヨン・ブラン9%、ミュスカデル2%。9月の雨で貴腐菌が広がり、収穫は10月8日から15日まで3回にわたり行われた。レモンコンフィ、蜂蜜漬けのアプリコット、オレンジの皮、フレッシュで、滑るようなテクスチャー。粘性は中程度で、チャーミング。さわやかな酸が残って、重すぎず、ほろ苦い余韻。グラスが止まらない。残糖は120g/L。94点。


 残糖はかつての150g/Lより少なく、バランスがとれて、アプローチャブルになった。これなら、食後にわずかに飲んだり、エスニック料理に1杯だけという飲み方も気軽にできそうだ。サスキアは「アペリティフとして飲む時は、氷を1、2個入れて」蜂蜜のようなトロピカルなノートにフレッシュ感を加えているという。


 リューセックは2022年中に、エール・ド・リューセックに次ぐドライ白ワインを販売するという。


 輸入元はルグラン・ジャポン。

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