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ホワイトハウス御用達の泡、シュラムスバーグのJ・シュラム1996の熟成力

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 シャンパーニュは泡とオリに守られてよく熟成する。それなら、ほかのスパークリングワインはどうか。ホワイトハウスの乾杯によく使われる米国を代表するシュラムスバーグは予想外に、長距離走者だった。
 飲んだのはフラッグシップのJ・シュラム1996。トレード向けのバレル・オークション「プルミエ・ナパヴァレー・オークション」では、ヴィンテージの特色をつかむための「ヴィンテージ・パースペクティヴ・テイスティング」が開かれ、ワイナリーが保管していたライブラリーワインをブラインドで試飲する。その中で、1996ヴィンテージのスパークリングとして登場した。

 紙袋で覆われたボトルを持った時、シュラムスバーグではないかという予感はした。瓶の下部が太い特殊な形状をしているからだ。
 ミラベルのコンポート、パンデピス、シナモン、ビスケット、エッジのたった酸が目の覚めるようだったが、味わいに熟したまろやかさがある。デゴルジュマン後の熟成からくるトースティなニュアンスが強く、スパイシーな余韻。酸の強い1996年のシャンパーニュを思わせるフレッシュな味わいだが、熟度はかすかに高い。
 正解はJ・シュラムと最後にわかったのだが、やはり驚きがあった。現行ヴィンテージ2007年は84%のシャルドネと16%のピノ・ノワールをブレンドする。比率は昔もほぼ同じで、カーネロスAVAのハイド・ヴィンヤードを含む2つの畑が核となっている。DRCのオベール・ド・ヴィレーヌのハイド・ド・ヴィレーヌで知られる栽培農家の畑だが、8月25日前後に収穫を始めることで酸を保っているという。

 会場にいたシュラムスバーグのヒュー・デイヴィス社長によると、1996と2007の違いは樽発酵の比率が現在の35%のほぼ半分だったこと。道理で、現在のおおらかさとヴォリューム感よりも、線の細いシャープさが目立っている。収穫時の総酸度は変わっていないというから、より一般受けするスタイルに変化したと言えるだろう。私個人はシャンパーニュ的な1996が好み。デゴルジュマンは2002年。14年間のポスト・デゴルジュマン熟成による複雑な香味が表れていた。
 シュラムスバーグはニクソン大統領と周恩来首相の1972年の「平和の乾杯」に、ブラン・ド・ブラン1969が使われ、ナパヴァレー北部のカリストガからいきなり世界デビューした。当時の価格は9ドル。TVキャスターのバーバラ・ウォルターズがまず報じて、注文が殺到し、1000ケースが完売した。元々、シャルドネの専門家だ。米国史上初のブラン・ド・ブランのスパークリングを1965年ヴィンテージから生産した。当時はスプリング・マウンテンのシャルドネを、チャールズ・クリュッグ・ワイナリーで仕込んでいた。

 1976年の「パリスの審判」はカリフォルニアワインを世界地図に載せたが、「平和の乾杯」はそれより一足早く、カリフォルニアのスパークリングの力を世界に示していた。それは、モエ・エ・シャンドンやマムなどシャンパーニュのメゾンがその後、カリフォルニアに進出したことが証明している。

2016年2月19日 カリフォルニア・セントヘレナで
シュラムスバーグ・ヴィンヤーズ J・シュラム 1996
94点
輸入元:ワイン・イン・スタイル

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