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ニュージーランドワインのキーワードはプレミアムとダイバーシティである。プレミアムを引っ張るのがマスター・オブ・ワインらだとしたら、ダイバーシティ(多様性)は、産地、品種、生産者など様々な部分に存在する。
ピノ・ノワールとアロマティック品種
セントラル・オタゴのサブリージョン
ブドウ畑の面積の63%はソーヴィニヨン・ブランが占め、ピノ・ノワールが14.3%でこれに続いている。ピノ・ノワールの最大産地はマールボロだが、世界からは南端にある大陸気候のセントラル・オタゴが注目を集めている。1930haの栽培面積のうち、1555haでピノ・ノワールが栽培されている。
だが、セントラル・オタゴではアロマティック品種も成功している。2番目に栽培面積が広いのはピノ・グリだ。174haに植えられている。シャルドネが68haで続き、4番目はリースリングの64haとなっている。フランスで言えば、アルザスと少し似ている。
セントラル・オタゴに限らず、どの産地にもサブリージョンが存在する。これによって品種も変わる。18のGIを名乗れる産地を理解した上で、次に産地のサブリージョンを把握する必要がある。
セントラル・オタゴでは、クイーンズタウンの東に位置するギブストン(Gibbston)が最も冷涼なサブリージョンとなる。バノックバーン(Bannockburn)はカワラウ川の南岸似広がり、地域で最も温暖で乾燥したサブリージョンだ。
ダンスタン湖の西岸にはコーンウェル、ロウバーン、ピサがある。雪をかぶったピサ山系と並行したヴァレーフロワと低いテラスに主要な畑が広がる。
クロムウェルの北東にあるベンディゴは、北向き斜面に石の多い土壌が広がり、暑い夏の日照と冷え込む夜の気候をとらえる。
ワナカはクイーンズタウンから80キロ北に位置し、美しい湖は涼しいが、日照を反射する。
ブルゴーニュと連帯する生産者たち
どこの生産者もサステイナブル、オーガニック、ビオディナミに注力している。美しい土地を次世代に引き継ぐという義務感を抱いている。ワナカのリーダー、リッポンのニック・ミルズは訪問前夜にメールをしてきた。「靴をきちんと洗ってきてくれ」と。
フィロキセラの原因となるブドウネアブラムシが、自根の畑に侵入するのを恐れていたのだ。ブドウ畑に立ち入る人間にも十分な注意が求められる。
山頂に雪が残るワナカでは、ピノ・ノワールも引き締まった酸と優雅な果実味を備えるエレガントなタイプに仕上がる。
ベンディゴはちょっと異なる。夏の日中の気温は30度を超すほど暑いが、夜は冷える。糖度が上がり、酸が乗る。肩幅が広く、メリハリのついたピノ・ノワールが生まれる。
ベンディゴ・ベースのプロフェッツ・ロックは、ドメーヌ・ド・ヴォギュエの前醸造長フランソワ・ミエとタッグを組んだピノ・ノワール・キュヴェ・オー・アンティポードで知られるが、ピノ・グリやリースリングも上手に造る。ポール・プジョルがアルザスのクンツ・バで醸造長を務めた経験が生きている。
ニック・ミルズは醸造学校でワイン造りを学んだ後、ブルゴーニュに出かけ、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの仕事を手伝った。ポール・プジョルも、ド・ヴォギュエの収穫を手伝い、ミエのブドウに手を加えないワイン造りに影響を受けた。
近年はセントラル・オタゴに修行に来るブルゴーニュの生産者も多い。グローバル化によって、情報と人間の交流が盛んになっている。気候変動に伴って、北半球の生産者も南半球のワイン造りを学ぶ時代が来ている。ピノ・ノワール・セレブレーションなど、生産者やメディアの集まるイベントは格好の機会だ。
世界のワイン産業は気候変動、貿易危機、サステイナビリティなど共通の課題を抱えている。ニュージーランドのワイン産業も、解決方法をシェアしながら、持続的な成長に向けて発展している。
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