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ブルゴーニュファンの魂わしづかみ、ピュアで引き締まったリオコ

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 カリフォルニアに行くと、ハイウェイ29を上り下りする回数が多い。ナパヴァレーを南北に貫く幹線道路だからだ。今回はソノマを貫く国道101号をよく走った。道沿いのヒールズバーグとサンタ・ローザに、気鋭の生産者が集中している。多くは自前の施設を持たず、間借りしたカスタム・クラッシュで醸造・熟成をしている。外見はただの倉庫だ。
 バランスあるブルゴーニュ品種のワイン造りを目指す団体「IPOB」(イン・パースート・オブ・バランス)。主要なメンバーのワインを飲んだが、リオコの白は日本人に最も受けるように思える。冷涼な畑を生かしたフレッシュでミネラリーな味わい、穏やかなアルコール度、控えめな樽。一言で言えば、最もブルゴーニュに近い。その証拠に、シャルドネが2016年初夏から国内航空会社の北米線ファーストクラスで採用される予定だ。
 リオコ(LIOCO)は創設者のマット・リクライダー氏とケビン・オコーナー氏の姓をとって、名前をつけた。マットは有名インポーター「ノース・バークレー」の国内セールス・ディレクター、ケビンは有名レストラン「スパゴ・ビバリー・ヒルズ」のワインディレクターをしていた。仕事上の付き合いがあってワイナリーを設立。1960、70年代のカリフォルニアに回帰するスタイルを目指している。「昔のカリフォルニはフランス的だった。酸とピュアな果実があって、テロワールを表現するワインを造りたい」と、マットが語る。

 初めて使うというコラヴァンで、ボトルからワインを抜きながら2013を試飲する。コラヴァンはコルクに穴を開けて、不活性ガスを注入しながらワインを吸い上げる。残しても酸化しない。日本では不活性ガスが保安基準に引っかかり、禁輸商品だが、カリフォルニアの小さなワイナリーではよく使われている。少量だけ試飲して、残りを保存できるからだ。
 シャルドネは、ソノマ・カウンティ、エステロ ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ラ・マリスマ サンタ・クルーズ・マウンテン、ハンゼル・ヴィンヤード ソノマ・ヴァレーの4種。ハンゼルの13.8%を除くと、アルコール度は13%未満。

 ソノマ・カウンティはソノマのショーケースだ。アレクサンダー・ヴァレー、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コーストの畑をブレンド。クリスプで白桃、フレッシュハーブ。お値打ち。最良のグラスワインとなる。ステンレスタンクで醸造し、フルマロをほどこす。
 エステロはレモンの皮、ブライトな酸、砕いた小石。素晴らしいバランスだ。ルーロのムルソーをより引き締めたスタイル。1960年代のヘリテージ・クローンの古木をドライ・ファーミングする農家から買う。マイケル・ミーナ、フレンチ・ランドリーでも使われる。これがファーストクラスに搭載される。いい選択眼だ。
 ラ・マリスマはさらにテンションが高い。マンダリン・オレンジの皮、チョーキーなニュアンス。より熟しているが、酸も高い。海から約7キロ。サンタ・クルーズ・マウンテンの冷涼感を表現している。「サンタ・クルーズはブリックス21.5で、フェノールは成熟する。日照が強いので、光合成に不足はない。ロシアン・リヴァー・ヴァレーの方が、温度の高さが伝わる」と。
 ハンゼルは最も温暖な畑。リッチで、官能的。複雑で、凝縮されているが、ビシッと背骨は通っている。50年代からの歴史を誇るグランクリュ的な畑だが、ケビンがハンゼル・ヴィンヤードの自社製ワインをレストランに仕入れていた縁で、リオコにだけブドウを売ってくれたそうだ。14ケース。残念ながら2014で終わり。見逃してはいけない。

 赤はピノ・ノワール3種とカリニャン。ラグーナ ソノマ・コーストは、フラワリーで、スミレ、ザクロ、スパイシーでピュアな果実。ハーシュ・ヴィンヤードなど3つの畑をブレンドしたお買い得のピノ・ノワール入門編。全房比率も新樽比率も10~12%。サヴェリア サンタ・クルーズ・マウンテンは最もバランスがいい。サワーチェリー、クランベリー、オレンジの皮。純粋な果実と骨組みを備えた複雑さがバランス良く溶け合っている。全房発酵50%。石灰岩土壌の単一畑から。最も私の好みだが、サンタ・クルーズは残念ながら白も赤も未輸入。「サンタ・クルーズはハングタイムが長いから、アルコール度12.3%でもフェノールは熟す。ロシアン・リヴァー・ヴァレーは暑すぎて、フェノールの成熟を待つと糖度が上がって、ビッグワインになるから好きではない」とマット。
 ソノマ・コーストの先駆者ハーシュ・ヴィンヤードのピノは、バラの花びら、ダークベリー、濃密で、うまみがあり、甘やかなフィニッシュ。「ハーシュのブドウの値段はトン当たり7000ドルと高価。ソノマ・コーストで最も格の高い畑。世界でも珍しい波打つ丘陵の上部にある。フォグラインより上にあり、日照が強いので、全房発酵でバランスをとるが、青くならないように気をつけている」

 最後のカリニャンはボージョレやドルチェットのようなカジュアルワイン。チャーミングな果実と甘さを伴うなめらかなタンニン。グイグイとコップでも飲める。カリニャンは、70年代のカリフォルニアではフィールド・ブレンドされて、ジャグワインに使われていたという。山の上の畑を人づてに探しだした。全房発酵100%。パンチダウンすると青いタンニンが出るので、サブマージド・キャップでマセレーションする。

 リオコのワインは、土壌、クローン、醸造、料理の相性など重要なデータが細かく裏ラベルに表示されている。リッジを真似たそうだ。カラフルなラベルも含めて、日本人好みする要素がそろっている。マットもハンサムで、気立てがいい。

2015年12月9日 カリフォルニア・ソノマのリオコで
リオコ シャルドネ ソノマ・カウンティ 2013
89点
希望小売価格:3700円
リオコ シャルドネ エステロ ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2013
92点
希望小売価格:5200円
リオコ シャルドネ ラ・マリスマ サンタ・クルーズ・マウンテン 2013
95点
リオコ シャルドネ ハンゼル・ヴィンヤード ソノマ・ヴァレー 2013
94点
希望小売価格:9500円
リオコ ピノ・ノワール ラグーナ ソノマ・コースト 2013
91点
希望小売価格:6000円
リオコ ピノ・ノワール サヴェリア サンタ・クルーズ・マウンテン 2013
95点
リオコ ピノ・ノワール ハーシュ・ヴィンヤード ソノマ・コースト 2013
94点
リオコ カリニャン サティヴァ 2013
89点

輸入元:中川ワイン

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