世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 太平洋に近い山中の秘境、フェイラのフォートロス・シーヴューの畑

太平洋に近い山中の秘境、フェイラのフォートロス・シーヴューの畑

  • FREE
 ソノマ・コーストAVAは広い。その中で冷涼な気候の畑はトゥルー・ソノマ・コーストと呼ばれる。その代表格であるフォート・ロス・シーヴュー周辺の産地に最も通じるワインメーカーが、フェイラのエーレン・ジョーダンだろう。

 経歴がユニークだ。ナパヴァレーのジョセフ・フェルプスのツアーガイドから始めて、ローヌに渡り、コルナスのジャン・リュック・コロンボの下で修業した。1994年に帰国して、ナイヤーズのワインメーカーを務め、シラーの革命児と呼ばれた。その後、カルト的な生産者ヘレン・ターリーと共に働き、シャルドネとピノ・ノワールが何度も100点をとっているマーカッサン・ヴィンヤードを手伝った。当初はヘレンと兄弟のラリーが共同運営していたターリー・ワイン・セラーズでも働いたが、エーレンはラリーとの仕事を選んだ。気難しいヘレンとはそれ以来、口をきいていないそうだ。
 ラリー・ターリーの下で、パーカー好みするジンファンデルを手掛けていたが、1998年、妻のアン・マリー・フェイラと共に自社ワイナリー「フェイラ・ジョーダン」を設立した。「ジョーダン」というワイナリーが他にあるため、「フェイラ」という名前に変えた。軌跡をたどると、経験が幅広い。ローヌでシラー造りを覚え、超力強いマーカッサンのワインを手伝い、超凝縮されたターリーのジンファンデルも手掛け、今はエレガントなシャルドネ、ピノ・ノワール、シラーを造る。IPOB(イン・パースート・オブ・バランス)のメンバーでもある。「ヘレンのワインはパワフルすぎる」と本音をもらした。

 サンタ・ローザの自宅から、ピックアップトラックに乗せてもらい、フォート・ロス・シーヴューのフェイラ自社畑に向かう。5人乗りの車内に男が4人、犬が2匹、6本入りの試飲用ワインが3箱。狭い。豪雨の中、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの山道を越えて、西の太平洋岸を目指す。ロシアン・リヴァーの上流はかなりの大河だと思ったら、雨で増水したそうだ。「5月から一滴も降っていなかった。歓迎だ」と。
 未舗装の道路沿いで、打ち捨てられたバスを見た。ヒッピーが電気なしで暮らしているという。収入源はマリファナの栽培。「コロラドやワシントンDCではマリファナが合法化されたから、企業が生産に乗り出し、ヒッピーの市場は崩壊するだろう」とエーレン。自力ではとても来られなさそうな秘境だ。「GPSの電波が通じないからね」と笑う。

 1時間以上かけてたどりついた畑はフォグラインより上にある。山の上は晴れていて、冷涼だが、日差しは強い。彼方にハーシュやマーカッサンの畑が見えた。日本で言えば、栃木の鬼怒川の奥の山林に畑を切り開いている。
 「4ヘクタールの畑に自分で植えた。表土が薄いので、ブドウ樹の樹勢が弱い。ヘクタール当たり28ヘクトリットルがせいぜいで、それより少ないこともある」
 ロッジで試飲を始めた。

2015年12月9日 カリフォルニア・ソノマ郡フォートロス・シーヴューのフェイラで

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP