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未輸入のオーストラリアワインを、全日本最優秀ソムリエの井黒卓さんら世界のワインに精通する4人のテイスターがブラインドで試飲して、高得点の15銘柄を選んだ。オーストラリの瓶詰めしたワインの関税は日豪経済連携協定(JAEPA)によって、2021年4月から輸入関税がゼロになった。デイリーからハイエンドまで、オーストラリアワインの多様性や品質の向上を裏付ける結果となった。
今回は豪州大使館商務部、在大阪豪州総領事館が7月から開催している「オーストラリア産飲食料品オンライン展示会」に出展しているワイナリーがエントリーした128ワインからWANDSによる書類選考を通過した90本のワインをブラインドで試飲した。
ワインは予想小売価格と色で分類されて、100点満点方式を用いて試飲した。1000-1999円の赤と白、2000-2999円の赤と白、価格や品種制限のない無差別級の計5カテゴリー。15銘柄はオンライン展示会に出展中。
オンライン展示会は新型コロナウイルスの状況を考慮して企画された。対日輸出を望む飲料や食料品の製造メーカーと日本で輸入や調達を行う企業をマッチングさせる狙いで、2021年7月から2022年6月30日まで開かれている。展示会はこちら
オンライン展示会・15銘柄に関する問い合わせ先:オーストラリア大使館商務部へ enquiry.japan@austrade.gov.au
テイスターは以下の4人。
井黒卓
3つ星フレンチ『ロオジエ』(東京・銀座)ソムリエ。2020年第9回全日本ソムリエコンクール優勝。
太田賢一
2つ星フレンチ『ESqUISSE』(東京・銀座)シェフソムリエ。ワインスクール講師、メディアの出演や寄稿多数。
高橋佳子
ワインコンサルタントや通訳で活躍。DipWSET。オーストラリア、南アフリカ、カナダなど新世界に精通。
宮下愛
NYで創業したワインショップの支店『The Winery Tokyo』(東京・麻布十番)店長。DipWSET。
カテゴリー別のトップ3ワイン計15アイテムを各テイスターのコメントと平均点とともに紹介する。80点以上が及第点、90点以上が特にオススメ、95点以上が傑出した品質に相当する。
◆1000-1999円の白と2000-2999円の白
全体的に高品質 オルタナティブ品種の将来性
井黒 アデレード大学は醸造技術を教える学校としては優れていて、シャルドネのレベルは安定している。酸の残し方が大切。アリントが上位にはいったのはうれしい。オルタナティブな品種も期待できる。
太田 オーストラリアワインは2000年から輸入量が増えて、2014年から伸びが大きい。スーパーで2000円以下で手にとれるワインの品質が底上げされている。オーストラリアに暮らした人間としては、消費者に選択の幅が広がったのは歓迎できる。
高橋 白ワインは全体的に質が高く、大きな欠陥が見当たらない。次なるレベルに上がっている。アリントは将来性を示してくれるワインだった。シャルドネも様々なスタイルがあって、造り手の努力がうかがえる。
宮下 クリーンに造られている。それはシャルドネだけではない。初めて飲んだアリントは印象的だった。広い国土で多様性が感じられる。
◆1000-1999円の白
1)Tempus Two (Australian Vintage) ・ Tempus Two Silver Series Pinot Gris 2020 90点
産地 サウス・イースタン・オーストラリア
品種 ピノ・グリ
製法 低温で発酵し果実味を引き出す。残糖は9g/L。アルコール度12%。
井黒 香りは爽やかな柑橘系主体。ジューシィなピンクグレープフルーツやネクタリン。甘みを残したスタイルが親しみやすさを演出している。丸みのあるクリーミーな食感が余韻まで続く。
太田 タンジェリン、西洋花梨、やや鉱物的ミネラルの香り。フレッシュでジューシー、グイっと飲める。フードフレンドリー、活躍の幅が広い。ひと汗かいたあとに飲みたい。CP抜群。
高橋 溌剌としたクリーンな果実が好印象。価格とのバランスが◎ 余韻の僅かな甘さも飲みやすくて良い。
宮下 フレッシュな洋梨をかじったような透明感のある果実感が口の中に柔らかさとなって広がり、その感覚が余韻まで続き心地良い。中盤以降感じる香ばしさもワインに複雑味を加えている。欠点がなく、この価格でこの品質は賞賛に値する。
2)Corryton Burge・Corryton Burge SA Chardonnay 2021 89.5点
産地 南オーストラリア州
品種 シャルドネ
製法 一部マロラクティック発酵を実施し樽熟成。アルコール度13%。
井黒 ピュア&クリーン。グレープフルーツの薄皮、レモンの花、ほんのり清涼感のあるハーブ。第二アロマ由来のキャンディ香も。フレッシュで生き生きした酸味があり、欠点がない。(裏を返せば個性が薄い)
太田 グリーンがかった淡いレモンイエロー、粘性高め、柑橘系がふんだんに感じられるアロマ、シナモンも。アタックから豊富なエキス分、中盤以降にボディの厚みが出る。苦味の強いフィニッシュ。クラシック寄りのスタイル。
高橋 香り、パレット共に充実のウエイトがあり、この価格帯なら十分に競合できる。蜜っぽさや程よいオークのニュアンスも複雑さに寄与している。
宮下 白桃のようにまろやかな果実味と酸味がうまくバランスしていて、余韻まで心地よく感じられる芯があるワイン。余韻の多少のエグ味は感じるが、シャルドネに求める柔らかさがこの価格で得られ、良さが万人にわかりやすいところが素晴らしい。
3)Handpicked Wines ・Versions by Handpicked Chardonnay Victoria 2018 87.3点
産地 ビクトリア州
品種 シャルドネ
製法 フレンチオークで熟成。アルコール度13%。
井黒 トレンドを反映したポジティブにとれる還元香。白桃、ガンパウダー、フリント、スイカズラなど。溌溂とした酸味とシャルドネならではのまろやかなテクスチュア。フィニッシュにかけて感じる塩味と苦味が心地よい。余韻は樽由来のトースト香。(このカテゴリーでは個人的にNo.1)
太田 グリーンがかったレモンイエロー。還元的でオイリー。洋梨、花梨、アカシア、菩提樹。ボディと厚みがパワフルな印象を与える。
高橋 ニュートラルなアロマ、M-ボディで抑制された果実味。ややアフターに苦味を感じる。主張が控えめ。food friendly。
宮下 味わいに多少の複雑味やミネラルを感じるが、香りがとてもニュートラル。クリーンで飾り気が無い。シンプルで良い反面、家飲みでこの繊細な魅力を感じ取れない場合は、スッキリしすぎていて主張がなく印象に残らないワインになってしまうことが懸念される。
◆2000-2999円の白
1)Peos Estate・ Peos Estate Four Kings Chardonnay 2020 92.5点
産地 西オーストラリア州 マンジマップ
品種 シャルドネ
製法 部分的に樽発酵しフレンチオーク100%で9か月熟成。アルコール度は13.6%。
井黒 派手でわかりやすい上品な樽香が支配的。香ばしいトーストやビスケットから始まり、少し経つと熟れた黄桃やマンゴスチンなどのアロマティックな香りが顔を出す。澱と共に長く熟成由来のクリーミーな食感もミッドパレットから後半にかけて現れる。時間が経つとより馴染んでくるだろう。(個人的にはオークの風味が気になった)
太田 グリーンがかった、やや明るいイエロー、粘性やや高め。白桃、ヘーゼルナッツ、貝殻、石灰、アカシア、澄ましバター、トースト、ヴァニラ。中程度のアタックから、フレッシュさ、リッチさ、塩味の引き締め。それら一連が綺麗に繋がる。丁寧な栽培と醸造プロセスがうかがえる、非常に高品質。
高橋 一時極端にスリムになったシャルドネが、バランスの良いところにたどり着いたいい例。あともう少し余韻に伸びが欲しい。
宮下 黄桃やパイナップルのようなたっぷりとした果実味、香ばしくローストしたような樽香、それらボリュームを支えてくれる芯のある酸味。樽の使い方もわざとらしくなくなじんでいる。フルボディのシャルドネに求める要素が綺麗に備わっていて、この価格帯なら非常に価値が高い。広い層に受け入れられる味わいの王道シャルドネ。
2)Zilzie Wines ・Platinum Edition Arinto 2020 90.5点
産地 オーストラリア
品種 アリント
製法 夜間収穫し、ステンレスタンク主体で発酵し、オリと共に熟成部分的に樽発酵しフレンチオーク100%で9か月熟成。アルコール度は13.2%。
井黒 本日のサプライズ。アシッド・フリーク(酸狂い)には試してもらいたい品種。ほのかに火打ち石などの還元的なノートがライムなどの柑橘の香りと合わさり、爽やかで刺激的な香りになっている。強く、エレクトリックな酸味が全体を引き締め、生き生きとした印象を作り出している。リニアでタイトなフィニッシュ。
太田 グリーンがかった淡いレモンイエロー、粘性高め、やや還元的。グレープフルーツ、洋梨、貝殻、ヨード。香り、味わいとも全体的にオイリー。
高橋 よく熟した果実がオーストラリアのイメージと合致する。程よい酸味や苦味が厚めの果実とバランスしていてワイン全体をワンランク上げている。オルタナティブ品種としてのポテンシャルを感じる好例。
宮下 白ワインの中で最も興味深かったワイン。品種特性のイキイキとした酸が、オーストラリアらしい果実味の膨らみや味わいの中の香ばしさを引き締め、全体的に良い緊張感とメリハリをもたらしている。ポルトガルの品種とオーストラリアの風土の特長が相乗効果を生み出した結果で素晴らしい。オーストラリアは特に代替品種の可能性をよく聞くが、今後の代替品種の将来性が楽しみになるワイン。
3)Peter Drayton Wines ・Peter Drayton Wildstreak Semillon 2020 89.8点
産地 ニュー・サウス・ウェールズ州 ハンター・ヴァレー
品種 セミヨン
製法 低収量。ステンレスタンクで発酵。アルコール度は11.7%。
井黒 この品種のティピシティを感じる、安心感漂う香り。瑞々しいライム、金属的なミネラル、オレンジブロッサム。スティーリーな酸味による口中が潤うようなアタック。キレのある焦点のあったフィニッシュ。
太田 無色に近い、淡いレモンイエロー。ややスモーキーで還元的。果実香控えめ、鉱物のニュアンス強い。軽快なアタックと、穏やかな酸。旨味を含む苦味が余韻を残す。
高橋 このスタイルのセミヨンは、世界でオーストラリアの独自性を主張できるもの。充実した果実味、控えめながら、しっかりとアフターにまで旨みが持続する。滋味深いワイン。
宮下 夏みかんやはっさくのようなアロマが印象的で、オーストラリアのセミヨンの特性をうまく表現している。低めのアルコール度でスムーズに杯がすすむフードフレンドリーなワイン。柑橘のアロマから始まり余韻のオイリーさまでストーリー構成のよくできた構造が素晴らしい。
上記ワインの詳細は展示会にてhttps://www.austrade.gov.au/local-sites/japan/news/fbvsc
オンライン展示会・15銘柄に関する問い合わせ先:オーストラリア大使館商務部へ enquiry.japan@austrade.gov.au
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