クメウ・リヴァーのマテズ・ヴィンヤード、熟成しても素晴らしい

　ブルゴーニュ勢に勝利して日本でも知られるようになったクメウ・リヴァー。世界で割り当てになっても、お値段は良心的なままだ。最も安い「ヴィレッジ・シャルドネ」は2800円。5年前の拙著「おうち飲みワイン100本勝負」で紹介した際は2200円だった。微々たる値上げだ。

　新世界に冷たいブルゴーニュ愛好家の決まり文句が「熟成能力がない」。それが誤りであることがよくわかった。最高峰マテズ・ヴィンヤード2004を飲んだ。アプリコット、パイナップルなど果実の香りは落ち着き、ヘーゼルナッツ、アカシアのハチミツが爆発するように立ちあがる。中間の厚みがしっかりあり、ほろ苦さを伴うミネラリーな余韻でドラマが完結する。スクリューキャップのせいもあっていまだフレッシュ。良作年のルーロのムルソーを思わせる華やかさにあふれている。
　ニュージーランド初のMWとなったワインメーカーのマイケル・ブラコヴィッチが、父の名前をつけた畑から造る。デビューは1994年。それから10年でここまで完成度の高いワインが生まれていた。自然酵母で発酵し、100％マロし、樽熟成は11か月間と短め。ワイン・アドヴォケイトやワイン・スペクテイターなど様々な雑誌の2015年の年間ベスト企画で選ばれたのも当然だろう。

　私が持参したのは、カリフォルニアのサンタ・クルーズ・マウンテンで、ヴァーナー兄弟が造る別ブランドのニーリー「ピノ・ノワール　ピクニック・ブロック　スプリング・リッジ・ヴィンヤード　2011」。レッドベリー、オレンジの花、ミント。標高の低さから来る熟したニュアンスを、2011の冷涼感が引き締めている。きれいな酸とうまみを含むピュアな果実が堪能できる。これもお買い得だ。

　これと張り合ったのが、フランソワ・フュエの「モレ・サン・ドニ　プルミエ・クリュ クロ・ソルベ　2008」。ダヴィド・デュバンが栽培・醸造を手掛ける。サワーチェリー、砂糖がけイチゴ、茎のニュアンスが軽くあり、タンニンはなめらか。モレ・サン・ドニらしい重心の低さがある。クロ・ソルベはクロ・デ・ランブレーのメゾンのすぐ下にある好立地だ。造りはデュバン流のエレガンスを貫いている。2008はダヴィドが全房発酵を始めたヴィンテージ。

　2日連続、同じレストランでの新年会。ポルトゥスは青山の隠れ家フレンチで、野菜や和の調味料を使った、最近のブルゴーニュのように軽やかで、うまみたっぷりな料理を供する。

2016年1月8日　東京・青山の「ポルトゥス」で
クメウ・リヴァー　シャルドネ　マテズ・ヴィンヤード　2004
95点
輸入元：ジェロボーム
ニーリー　ピノ・ノワール　ピクニック・ブロック　スプリング・リッジ・ヴィンヤード　サンタ・クルーズ・マウンテン　2011
91点
輸入元：ビレッジ・セラー
購入：米西海岸のショップで40ドル
ドメーヌ・フランソワ・フュエ　モレ・サン・ドニ　プルミエ・クリュ クロ・ソルベ　2008
92点