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オーガニックワインはエシカル消費、歴史ある栽培農家のドッグ・ポイント…オーガニック・ワイン・ウイーク

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 エシカル消費という言葉が、日本でも使われるようになってきた。「エシカル」とは倫理的という意味。人権や環境に配慮した商品やサービスを選択するという考え方で、サステイナブル(持続可能)な生活や未来を送るうえで欠かせない。


 これは小難しい問題ではない。例えば、「ファーストリテイリング」(ユニクロ)やスウェーデンの「H&M」などのファスト・ファッション。我々の暮らしと切り離せない衣服にも及んでいる。中国・新疆ウイグル自治区の強制労働問題をめぐって、世界の綿花生産量の約5分の1を占めるウイグル自治区の綿花の行き先が注目され、これらの企業に世界から批判が寄せられている。


 ワインは口に入る食品だから、持続可能なオーガニック栽培を導入しているかどうかは、衣服以上に、重要な選択基準の1つとなる。人体への影響が許容範囲内であっても、農薬や殺虫剤を使った慣行農法で造られたワインよりは、有機的に栽培されたブドウのワインを飲みたくなるのは当たり前だろう。それが未来の環境にプラスに働くとなればなおさらだ。


 ニュージーランド最大のワイン産地マールボロ。約2万7800haの栽培面積はこの国の3分の2を占める。このうち、約80%の2万2000haでソーヴィニヨン・ブランが栽培されている。明るいパッションフルーツの香りと生き生きした酸を有し、ニュージーランドワインの存在を世界に知らしめた品種だ。原産地フランス・ロワール地方に再び光を当てるほどのインパクトがあった。


 LVMH傘下のクラウディー・ベイやヴィラ・マリアなど大手生産者が知られているマールボロにあって、ドッグ・ポイントは2009年という早い時期から、オーガニック栽培への転換を始めた。1973年に植樹を始めたマールボロで最も古い個人ワイナリーの1つでもある。


土壌と微生物の働きを活性化


 クラウディー・ベイの原動力として、それぞれ栽培と醸造を担当していたアイヴァン・サザーランドとジェームス・ヒーリーが独立して、サザンヴァレーの畑の多様性にフォーカスしたワイン造りを始めた。テロワールを表現するワインを手造りする上で、オーガニックは当然の選択だった。

 

 様々な産地の栽培醸造家から「我々は一時的に土地を借りているにすぎない。美しい状態のまま、次の世代に引き継ぐ責任がある」という言葉を聞いた。そのためには、オーガニックやビオディナミで耕作しなければならない。ブドウという植物を育てる活力は土壌にある。

 

 ドッグ・ポイントでは、剪定したブドウ樹やワイナリーの廃棄物からコンポストを作って堆肥にし、土壌の湿気を保ち、活性化させている。麦やハゼリソウなどをカバークロップとして植えて、害虫の防除のための益虫を呼び寄せている。冬季は2500頭もの羊や牛を放って、雑草を管理する。


 ワイナリーは土壌と生息する微生物の働きを重視している。「週に数回、トラクターを行き来させている。土の圧縮は酸素レベルや微生物の健康に大きな影響を与えるので、数年に一度は土壌を耕してほぐすことが私たちのアプローチの鍵となっている」という。


 ピノ・ノワールとシャルドネは2012年から、ソーヴィニヨン・ブランは2016年から、Biogroの認証を得ているが、マーケティングが目的ではないのでラベルに記載はしない。300haの畑のうち、一部はクラウディー・ベイを含むワイナリーに売却している。


 歴史が古いため、ヒーリーは地元ではゴッドファーザー的な存在で、新しく入ってくる生産者たちにも助言している。こうした農家のネットワークは、ブルゴーニュと似ている。高い知名度からは予想できない、小規模なワイナリーで、それもブルゴーニュの有名ドメーヌを連想させる。フランスの生産者も研修によく訪れる。


ブルゴーニュと似た農村のコミュニティ


 気さくなヒーリーと話していると、オーガニックは理屈ではなく、農業を突き詰めていった結果、行き着いたことがよくわかる。ブドウ栽培もワイン造りも、栽培醸造家の人生と直結している。


 ドッグ・ポイントのワインはソーヴィニヨン・ブランだけでなく、シャルドネやピノ・ノワールも優れている。英国のエリザベス女王はコロンビア大統領の公式晩さん会で、シャルドネ2011を供した。


 どのワインもピュアでクリーン、ナチュラルな風味があふれている。現地でのディナーでは、5年以上たったワインもきれいに熟成していることに驚かされた。


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