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ジャンシス・ロビンソン・コム、米国デジタル・メディア企業が買収

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 英国を代表するジャーナリストのジャンシス・ロビンソンOBEが主宰する有料ワインサイト「JancisRobinson.com」が、米国のデジタル・メディア企業「リカレント・ヴェンチャーズ」(Recurrent Ventures)に買収された。


 米マイアミに本社のあるリカレント社は2018年に創業された。「Saveur」「Outdoor Life」「The Drive」など、料理、ライフスタイル、自動車など17を超すブランドを抱え、月間で計5000万人以上のユニークビジターを獲得している。購読料収入の基盤となるような、小規模な購読料に特化したジャンシス・ロビンソン・コムを発掘した。


 ロビンソンのサイトは、リカレント社が2021年に買収した4つ目のサイト。買収条件は公表されていない。CEOのランス・ジョンソンは、サブスクリプションの収益性に期待し、「ブランドの成長に必要なサポート、リソース、専門知識を提供できることを嬉しく思う。当社が目指してきたグローバルなプレゼンスを拡大する。ワイン業界で持続可能性を促進するブランドの取り組みは、当社の環境への取り組みと一致している」と述べた。


 1950年生まれのロビンソンは世界で最も影響力のあるワイン評論家の1人。フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストであり、「The Oxford Companion to Wine」「The World Atlas of Wine」「Wine Grapes」など、ワイン業界の標準的な参考書の共著者でもある。


 1984年、ワイン業界以外で初めてマスター・オブ・ワインの試験に合格し、2003年には女王陛下からOBE(大英帝国勲章)を授与され、ロイヤル・セラーのコンサルタントも務める。2000年に創設したジャンシス・ロビンソン・コム(通称パープル・ページ)に毎日、投稿している。


経営を気にせず技術と管理を任せる
「引退するつもりはない」…ロビンソン


 ロビンソンは31日にサイトで「私たちの小さなチームは、特に技術的・管理的な観点から管理が難しい規模になってしまった。私の年齢を考慮し、このサイトの明るい未来を保証する必要があること、継続的に改善していきたいことから、次の章へと導くための理想的なパートナーを見つけた。引退するつもりは全くありません」と公式に発表し「私たちの価値観である、誠実さ、信頼性、独立性、信頼性は変わらず、熱心に守っていきます」と表明した。


 彼女はTwitterで「7人のMWを含む4人のフルタイマーと13人以上のパートタイマーはそのまま残り、私は好きなワインの試飲と執筆にもっと時間を使えることを約束します。管理者はもういらない。技術もはるかに優れています」と投稿。「自分が本当に楽しんでいることに一生懸命取り組んでいきたい。ただ、(私にとって)あまり面白くない会社経営のことは気にしなくていいのです」と公式発表でも表明している。


 パープル・ページには約1万3000件の記事と約21万件のワインレビューが掲載されている。広告は掲載せず、月間8.5ポンド、年間85ポンドの購読料で運営されている。レビューなどを商業利用できるプロ向けサービスも180ポンドで提供している。購読者数は明らかになっていないが、ワイン・トレードの中心地である英国で、とりわけ大きな影響力を有している。


 世界4大陸にライターを配し、82か国に会員がいるにもかかわらず、米国内の会員は全体の30%にも満たない。リカレント社の技術で、SEOなどを改善し米国内の読者を増やす計画もある。ロビンソンコムはこれまでマーケティングも控えめで、口コミ中心で会員を増やしてきた。


有料ワインサイトの将来を占う出来事


 購読制サイトの先駆であるワイン・アドヴォケイトは、1947年生まれの創業者ロバート・パーカーが、2012年にシンガポールの実業界に売却。2015年にボルドー・プリムール評価の一線から退いて、2019年5月に公式に引退した。2017年にミシュランに40%の株式を売却。2019年に全面買収された。

 
 ワインの得点評価を核とする米国発のワイン・アドヴォケイトやヴィノスと性格は異なるが、パープル・ページは各国のマスター・オブ・ワインとのコネクションを生かして、情報の速さと多角性を有するのが強み。ワインレビューだけでなく、文化的背景やマーケティングに踏み込むコンテンツは独自性を放っている。

 
 ワインメディアのウェブサイトでは、コンテンツを一部有料化するペイウォールの導入が進んでいる。大英帝国代表のロビンソンは、米国代表のパーカーより3歳若く、カリスマ的な影響力でワイン業界をけん引してきた。

 

 世界に広がるワイン産地を、広告やタイアップのない自主独立の形で取材して、情報発信すると同時に、変化のめまぐるしいIT業界でサイトをアップデートしていくのはコストがかかる。今回の買収劇は、有料ワインメディアの将来を占う出来事でもある。

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