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ノー・アルコールや低アルコール・ワイン(NOLO Wines)、浸透しているが選択は慎重に

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 ノー・アルコールや低アルコールのワイン(NOLO Wnes)が、世界的に関心を集めている。新型コロナウイルスに伴うオン市場でのアルコール消費減少や健康志向、ワインスタイルの変化によって人気が加速している。日本でも、NOLOのワイン、ビール、スピリッツ類のプロモーションが盛んになってきた。多彩なアルコール類の違いと、その背景を整理しておこう。


 エノテカは6月、フランス・ラングドックのワイナリーと共同開発した「ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ」を発売した。コルクで詰めたボトルは一見ワインのように見えるが、「ワイン」の文字はどこにもない。


 ジョエアは日本では清涼飲料水となる。「ワインテイスト飲料」と一般的に呼ばれるが、酒税法上、アルコール度数1%未満のため、表示上の名称は「有機ブドウ果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」になる。


 試飲すると、白い花、青りんご、レモン、キレのよい酸がある辛口。ワインを連想させるフルーティさと味わいがあるが、アルコール度は0.1%未満。ドメーヌ・ピエール・シャヴァンと、3年がかりでサンプルをやりとりして完成させた。カロリーはグラス1杯(100ml)13キロカロリーと通常のワインの5分の1以下となる。1512円(8%税込み)。


アルコール度数1%未満は清涼飲料水


 フランスでも、No Alcohol(ノー・アルコール)の清涼飲料水となる。OIVはブドウをアルコール発酵させて得られる飲料を「ワイン」と定義しており、ワインテイスト飲料というカテゴリーは存在しない。ジョエアはラベルにブドウ果汁の使用比率や、アルコール度が「0%」の表示がある。


 ノー・アルコールの手法は、蒸留器内の気圧を下げる減圧蒸留法、逆浸透膜法などがある。ジョエアは破砕して、スキンコンタクトしたシャルドネの果汁を4度以下に保って発酵させない。種と酵母を風味付けに使い、炭酸ガスとともに瓶詰めする。亜硫酸添加はなし。


 ワインの風味を好む妊婦、ダイエットに関心の高い消費者、ノンアルコールを欲するビジネスパーソンらをターゲットにしているという。日本では、グランドハイアット、帝国ホテルで採用され、海外では免税売店やフランスのスーパーで売れているという。


ノー・アルコールや低アルコールの飲料市場は世界で拡大


 ノー・アルコールや低アルコールの飲料市場は、世界的に拡大している。アルコール飲料の市場調査企業「IWSR」が今年2月に発表したNOLO Winesの「戦略的研究 2021」によると、オーストラリア、英国、米国、カナダなど、世界のNOLOアルコール消費量の75%以上を占める10か国で、無添加・低アルコールのビール、ワイン、スピリッツ、(RTD)レディ・トゥ・ドリンク製品に対する消費者の需要が、2020年には飲料用アルコール市場全体の3%を占めるまで割合が拡大している。


 特に、NOLOワインは4.9%増加し、米国と英国で最も大きな伸びを示し、2020年から2024年にかけての年間複合成長率は8%と予測されている。NOLOビールは2019年から2020年にかけて0.5%増のフラットな成長を記録し、NOLOアルコール市場全体の92%のシェアを占める。大手ギネスのほか、中小のクラフトビールメーカーも参入している。NOLO市場で0.6%のシェアしかないスピリッツ・カテゴリーは、数量売上高が32.7%増加し、2020年から2024年にかけて急速な成長が予想されている。レポートでは、すべてのNOLO製品において、この4年間で31%の数量成長が見込まれている。


 NOLOワインは、パンデミックでいきなり登場したわけではない。21世紀に入って、高いアルコール度と熟度を好んだ評論家ロバート・パーカーの影響力が低下するのつれて、産地や品種の多様性を探る動きが活発化した。その中で、旧世界だけでなく、ニュージーランド、オーストラリア、カリフォルニアなど新世界でも、冷涼な産地から低いアルコール度でバランスのとれた国際品種や土着品種の開拓が進んだ。


 そのために、酸とフェノリックの熟度を適正に保つキャノピー・マネージメント(樹冠管理)、最適な熟度での収獲、糖度を上げすぎない醸造など、栽培・醸造の工夫が、グローバルなネットワークを通じて新旧世界に広がった。


 NOLOワインの発展が、世界的なパンデミックによる人の動きや集会の減少、飲酒が健康に及ぼす影響などの再考、若者層のライフスタイルの変化で起きたのは間違いない。ただ、アルコール度が低いだけでバランスのとれていないワインも、NOLOワインにくくられているリスクがあることを忘れてはならない。

 

NOLOワインは慎重に選んで購入すべき


 日本市場では非常事態宣言の影響もあって、料飲店でノー・アルコールのワインや飲料の注目度が上がっている。ただ、アルコール度が低いだけでバランスの悪いワイン、アルコール度が元々8-10%前後と低いワイン、ノー・アルコールのワインなどが混在して、プロモーションされている。

 

 ワインのアルコール度は産地のテロワールや歴史を反映している。NOLOワインだから飛びつくのではなく、自らのライフスタイルと志向を見つめ直して、銘柄の選択には慎重さが求められる。

ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ

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