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ロシアが国内で生産されたスパークリングワインだけを「シャンパン」として販売でき、シャンパーニュを「スパークリングワイン」と表示して販売するべきという新法を採択した。生産者団体「シャンパーニュ委員会」(CIVC)は、シャンパーニュのすべての生産者にロシア向けの出荷を停止するよう求めている。GIをめぐってEUとロシアの摩擦に発展する可能性がある。
プーチン大統領が2日に署名した新法は、ロシアのスパークリングワイン生産者に、ロシア語でシャンパンを意味する「シャンパンスコエ」(Shampanskoye)と表示できる。一方で、シャンパーニュを含む外国のスパークリングワイン生産者はすぐに、ボトルの裏にスパークリングワイン(sparkling wine)と表示しなければならくなった。
「シャンパーニュ」は世界の120か国以上で認められている地理的表示(GI)。CIVCは「シャンパーニュ」という名称を含むアイスクリームや化粧品に対して名称の変更を求めて、厳格に保護してきた。日本では、ロックバンドの「Champagne」が2014年に「Alexandros」に名前を変えた例がある。
ロシアの新法を受けて、LVMH傘下のワイン&スピリッツ部門モエ・ヘネシーに属するモエ・エ・シャンドンは裏ラベルを変更するために、ロシアへの出荷を一時的に中断した。修正後に供給を再開する予定と見られる。ロシアのスパークリングワインは1本千数百円で販売されている。シャンパーニュはロシアで消費されるスパークリングワインの13%を占める。
CIVCは「シャンパーニュ地方の人々は、この受け入れがたい法律を修正するよう、フランスとヨーロッパの外交に呼びかけている」と声明を発表。加盟する生産者に当面、ロシアへの出荷を停止するよう求めた。フランスとロシアは20年以上にわたり、シャンパーニュの原産地保護の協議を続けてきた。
フランスのメディアは、今回の動きが国内のスパークリングワイン産業を復活させる努力の一環ではないと指摘している。ロシアが2014年に併合したウクライナのクリミアをめぐっては、ヨーロッパ産のチーズを禁輸して、国内のチーズ生産者の追い風となった。
2020年のシャンパーニュのロシア向け輸出額は3503万ユーロで、世界で15番目。出荷量は188万本。ロシアは戦前、シャンパーニュの重要な出荷先で、アレクサンドル2世が特注したクリスタルはよく知られている。モエ・ヘネシー傘下のヴーヴ・クリコもロシア市場で発展した。
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