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ウルトラマリン、自然派カリフォルニア・スパークリングの頂点

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 カリフォルニアのスパークリングワインに新しい動きがある。シャンパーニュのレコルタン・マニピュランのように、単一畑、単一収穫年から造る少量生産のワインが各地で登場している。

 サンタ・バーバラのサンディ、ホナータ、ソノマのベッドロックなど、未輸入のものも多いが、私がここ数年、注目している分野だ。真打ちは「ウルトラマリン」。UCバークレーで生化学を学び、博士号を取得したマイケル・クルーズが、自然派のアプローチで造る。自然酵母で発酵し、醸造過程で酵素の添加や低温安定化処理は行わない。スパークリングが技術的なワインであることを自覚した上で、できるだけ介入を避けている。自然なワインを造るには化学を知らなければならない。かつて、マルセル・ラピエールが説いたのと同じ理屈だ。

 ブドウは、ソノマ・コーストのチャールズ・ハインツ・ヴィンヤードから。リトライやフラワーズに供給する一流の畑だ。ワインは2種のみ。シャルドネで造るブラン・ド・ブランとピノ・ノワール100%のロゼ。
 「ウルトラマリン ブラン・ド・ブラン 2010」はレモンカード、ヨード、カキ殻、スリムで、ぜい肉がない。1本筋が通っている。シャープな酸があり、潮汁のように塩みが強い。ドーヴィサのシャブリ・プルミエクリュをスパークリングにしたようなイメージだ。ドザージュ表示はないが、エクストラ・ブリュットのレベルだろう。デゴルジュマンは2014年9月。裏ラベルに手書きで書いてある。

 「ウルトラマリン ロゼ 2010」はオレンジがかったピンク色、オレンジの皮、ベルガモット、ルバーブのジャムのエキゾチックな香り。セニエ方式のせいか、ややフェノールとほろ苦みを感じるが、テクスチャーはクリーミィで、果実の透明感は一貫している。きれいに統合されていて、ペン先のように細くなるフィニッシュ。こちらもドザージュは少なめでドライ。自然派のレコルタン・マニピュランのようにピントが合っている。にがり塩のような後味が残る。ドザージュは2014年9月。

 カリフォルニアにもようやく、ジャック・セロスやシャルトーニュ・タイエと並べて語れるスパークリングが出てきた。カリフォルニア・スパークリングの最高峰は、ロデレール・エステートとシュラムスバーグのトップキュヴェだが、ウルトラマリンは別の道を行くテロワールのワインだ。2010がデビュー年。今はもっと進化しているだろう。
 ウルトラマリンを今飲むのは、15年前にセロスを飲むのと同じくらい価値がある。

2016年7月8日 自宅で

ウルトラマリン ブラン・ド・ブラン 2010
94点
ウルトラマリン ロゼ 2010
93点
実売:いずれも1万1000円前後
輸入元:TYクリエイション

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