マスター・ソムリエの技量、ロスト＆ファウンドのピノ・ノワール

　忘れ物預かり所。覚えやすい名前を持つこのワインには、忘れられない思い出がある。3年前に参加した「カリフォルニア・ワインサミット」で、このワインとクッチのピノ・ノワールに出会って、カリフォルニアの新潮流を初めて実感した。
　その時は元サンフランシスコ・クロニクル編集長のジョン・ボネのセミナーも聞いた。彼が選んだ「次世代の造り手」の1人がボネだった。ボネがそれからほどなく刊行した「ニュー・カリフォルニア・ワイン」にも、ロスト＆ファウンドは含まれている。

　ロスト＆ファウンドの共同経営者ジェフ・クルスは、2008年にマスター・ソムリエ（MS）に合格し、非営利団体「ギルド・オブ・ソムリエ」会長として活躍する。難関のMS試験を描いた映画「Somm: Into the Bottle」を共同プロデュースした。ソノマ郡ロシアン・リヴァー・ヴァレーの1つ星レストラン付きリゾートホテル「ファームハウス・イン」を所有するバルトロミー家とクルスがタッグを組んで、バルトロミー家が所有する古くからの農園にピノ・ノワールを植えた。2010年がデビュー・ヴィンテージだ。

　　3年前に飲んだ2011年は、冷涼なヴィンテージのせいもあってやや未熟感があったが、2012年はカリフォルニアらしい太陽の力を、ブルゴーニュ的なスタイルに落とし込んでいる。ジェイミー・クッチの正確で、焦点のあったワイン造りもいいが、かすかにゆるいロスト＆ファウンドも悪くない。
　クルスはファームハウス・インのワインディレクターとしてバルトロミー家との関係を築いた。マスター・ソムリエだから世界中のワインに精通している。料理に合わせて生きるソノマのピノ・ノワールだ。

2016年7月29日　自宅で

ロスト＆ファウンド　ピノ・ノワール　ロシアン・リヴァー・ヴァレー　2012
91点
希望小売価格：8600円
輸入元：ilovecalwine