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メゾンのシャンパーニュ造りでは、企業の総合力が問われる。資金力、販売網、宣伝。どれも重要だ。お金がなければ、熟成期間を長くとれない。星付きレストランや高級ショップに常に在庫しなければ、ソムリエや消費者から忘れられる。醸造責任者やアンバサダーが主要な市場を巡回しないと、高いイメージを保てない。
日本でトップシェアを占めるブランドはそこがうまく回っている。クリュッグ、ドン・ペリニヨン、サロン、ベル・エポック、ルイ・ロデレール。醸造責任者や幹部が年に何度も来日し、プロや消費者向けイベントを開く。ラグジュアリーなイメージと高品質が、市場に浸透している。
シャルル・エドシックは違う。1985年にレミー・コワントローの傘下に入ってから、販売と宣伝がうまく行っていなかった。スピリッツ事業はシャンパーニュ・メゾンと親和性があるが、エドシックには力を注がなかったようだ。ステファン・ルルー代表は、ラグジュアリー企業のEPIが買収した2011年には「シャルル・エドシックは死にかけていた」と、ドリンクス・ビジネスのインタビューで明かした。現在の成功の出発点は、家族企業の下で独立した販売網を築き、ブランドのことを忘れていた若手ソムリエたちに創業者「シャンパン・チャーリー」の物語を語ることだったという。
日本でも状況は同じだった。輸入が再開された昨年夏に、ブランドをよく知らないプロが多かった。十数年間も不在だったのだから無理もない。復活したのは、プロモーションの成果もあるが、品質がぶれていなかったのが大きい。先日、トップテイスターたちとブラインドで試飲した際も、おしなべて評価が高かった。
「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ」は熟成の長さを感じさせる黄金がかった濃厚な色調、アプリコット、ブリオッシュ、クリーミィなテクスチャー。熟度と酸のバランスに優れていて、きれいに統合されている。チョーキーなフィニッシュは焦点があっていて、ほのかにブラウンバターの香り。開けて3日後に完全に開いた。コアのエキスがある。
高品質のカギは熟成期間の長さだ。ベースとなる収穫年は1年前が2007年だったので2008年だろうか。大手メゾンの現行NVのベースは通常は2012年以降だから、最低4年は長い。リザーヴワインの比率は40%。5-15年間熟成した10以上のヴィンテージのリザーヴをブレンドする。クリュッグのグランド・ヴィンテージと同じく、マルチ・ヴィンテージと言ってもおかしくない。ドザージュはリットル当たり9グラム前後。少ないわけではないが、バランスがとれている。
キャッシュフローは良くなかった時期に仕込んだはずなのに、手抜きがない。市場にあるノンヴィテージの中で最も明確に熟成感を感じられる。大手メゾンのNVを集めて比較すると、その違いがよくわかるだろう。
2016年8月6日 自宅で
シャンパーニュ シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ
94点
価格:7500円
輸入元:日本リカー
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