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ミスター・サンジョヴェーゼの入門編、フェルシナのキアンティ・クラッシコ

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 イタリア・トスカーナには、大勢のエノロゴ(醸造家)が活躍している。カルロ・フェリーニ、フランコ・ベルナベイ、ニコラ・ダッフリット、ヴィットリオ・フィオーレ、ルーカ・ダットーマ、アルベルト・アントニーニ、リカルド・コッタレッラ……きりがないが、「ミスター・サンジョヴェーゼ」の名がふさわしいのは、フェリーニとベルナベイではないか。
 ベルナベイの経歴を振り返ると、1978年のファットリア・ディ・セルヴァピアーナに始まり、81年にはフォントディのフラッチャネッロ・デッラ・ピエーヴェ、83年にはファットリア・ディ・フェルシナのフォンタローロを手掛けた。その後は、ヴェローナやヴェネトでも働いている。サンジョヴェーゼを30年以上も扱うスペシャリスト。キアンティの地勢も知り尽くしている。
 彼のワインは、サンジョヴェーゼの酸をきれいに保ちながら、柔らかいテクスチャーとなめらかなタンニンを備えた調和のあるスタイルだ。キアンティのトップを行くフォントディとフェルシナのいずれにも共通する。フェルシナは、フラッグシップのIGTのフォンタッローロに注目が集まりがちだが、私が好んで飲むのは「ファットリア・ディ・フェルシナ キアンティ・クラッシコ・ベラルデンガ 2012」。早くから楽しめる。食卓で最良のフード・フレンドリーワインである。
 明るいルビーレッド、レッドチェリー、タバコ、ドライトマト、ローズマリー……キアンティの丘で風に吹かれている時の思い出がよみがえる。心地よい酸とジューシーでたっぷりした果実、こなれて濡れたタンニンが継ぎ目なく一体化している。うまみと深みのあるセクシーな味わいだ。無駄のない細身のボディで、湿った石灰岩の香りがするフィニッシュ。
 優れた造り手でも、ベーシックなキアンティ・クラッシコは、どこか酸が強かったり、タンニンが粗かったりするのだが、フェルシナに関しては細部までゆるみがない。ベルナベイとジュゼッペ・マッツォコリンが30年間にわたり築き上げてきた不動のスタイルだ。私の経験では、驚くほど熟成力もある。
 キアンティ・クラッシコ南東部のカステルヌォーヴォ・ベラルデンガの温暖なテロワールを表現した、いつ飲んでも裏切られないキアンティ・クラッシコである。バターよりオリーブオイルを多用する家庭には、ピノ・ノワールよりもはるかにサンジョヴェーゼの方が活躍する。

2016年8月8日 自宅で

ファットリア・ディ・フェルシナ キアンティ・クラッシコ・ベラルデンガ 2012
90点
購入価格:楽天市場で2500円
輸入元:テラヴェール

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