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ネゴス的なイングリッシュ・スパークリング、ディグビーの冷涼感とマロのバランス

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 シャンパーニュがスパークリングワインの頂点に立つのは、リソースが豊かだからだ。多彩な畑があり、リザーヴワインの蓄積も豊富にある。ブレンドの自由度が、歴史の浅い産地より大きい。イングリッシュ・スパークリングが、ブラインド試飲でシャンパーニュに勝つ例が出ているが、総合力では追い付いていない。
 そんな中で、ディグビーは興味深い挑戦をしている。ノンヴィンテージを生産し、複数の産地のブドウをブレンドしている。発想がネゴシアン的だ。ヴィンテージ物が中心で、産地が限られるイングリッシュ・バブルの中では珍しい。ケント、サセックス、ハンプシャー、ドーセットの白亜質土壌の畑から調達し、ナイティンバーを世界舞台に上げたワインメーカーのダーモット・サグリューがコンサルタントしている。トレヴァー・クロウとジェイソン・ハンフリーが設立し、2009年ヴィンテージを2013年にデビューさせた。
 その「ディグビー ファイン・イングリッシュ レゼルヴ・ブリュット 2009」は青リンゴ、柑橘系果実、白桃のフレッシュな香りから、温度が上がるとリンゴタルトに進化する。ビビッドな酸が極めて冷涼な産地の涼しいヴィンテージであることを連想させるが、部分的にマロラクティック発酵を導入し、まろやかなタッチで包みこんでいる。ドザージュはリットル当たり8グラムとやや控えめ。ミネラルに縁どられ、ハーモニアスなフィニッシュ。ステンレスタンクで60か月間熟成した。
 シャルドネ65%、ピノ・ノワール18%、ピノ・ムニエ17%。ブラインドなら、酸の強い2008年のような年のコート・デ・ブラン地区のグローワー(レコルタン・マニピュラン)と答えるだろう。タイトなパレットからくる厳格さを、マロラクティック発酵できれいにまとめている。デゴルジュマンは2014年9月17日。ほぼ2年間の熟成で、酸の角が取れ始めたところだ。
 ディグビーに興味を持ったのは、このデビュー作が、トム・スティーブンソン、エッシ・アヴェランMW、トニー・ジョーダン博士の選ぶシャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権2014で、いきなりベスト・イングリッシュ・スパークリングワインに選ばれたから。それだけのことはある。イスラエルからの長旅から帰国してすぐに飲んで、時差が吹っ飛んだ。

2016年10月2日 自宅で

ディグビー ファイン・イングリッシュ レゼルヴ・ブリュット 2009
Digby Fine English Reserve Brut England 2010
デゴルジュマン:2014年9月17日
92点
希望小売価格:1万1000円
輸入元:モトックス

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