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右岸ビオの先駆、熟成待ちたいシャトー・フォンロック2010

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 ボルドー左岸でビオが広がっている。ポンテ・カネやギローはビオディナミの認証を得た格付けシャトーとして知られ、パルメも2017年の認証を目指している。だが、ビオの動きで先駆けたのは右岸だ。コート・ド・ボルドーのシャトー・ル・ピュイは農薬を長らく使わず、1990年に酸化防止剤の添加を止めた。ポンテ・カネのチームが、ジャン・ピエール&パスカル・アモリュー親子に、ビオディナミやワイン醸造の教えを請うたのは、あまり知られていない。
 右岸は左岸より規模が小さく、家族経営のシャトーが多い。オーナーの責任で、リスクをとって早くからビオに取り組めた。サンテミリオンのグランクリュ、シャトー・フォンロックも、2002年からビオロジックにトライし始めた。2006年にはビオロジックのアグリキュルチュール・ビオロジックの認証を受け、2008年にはビオディナミのビオディヴァンに加盟した。裏ラベルにそれらのロゴを示している。
 偉大なヴィンテージ2010年をじっくりと試飲した。9月に開かれた「ボルドーの近未来」を探るパネル・ディスカッションで、持続可能なワイン造りのテーマを探る際に、手本として供されたワインだ。このワイン選択には私も助言させていただいた。メルロ85%、カベルネ・フラン15%。
 畑は台地と斜面の、粘土、石灰岩、砂の比率が異なる土壌に広がる。2010ならではの凝縮度と14.5%のアルコール度を備える。抽出は強くないが、濃厚な果実と頑強な骨組みがあり、ウルトラシルキーではないがなめらかなタンニン。ブラックチェリー、キルシュ、五粉香の香り、タイトニットでミネラルの堅い殻に包まれている。グラスに30分程度では容易に開かない。ほのかにフェンネルの香りがするフィニッシュはフレッシュ感がある。
 ピュアな果実は自然な畑仕事をうかがわせるが、タンニン処理は改善の余地がある。2010年の右岸の優れたシャトーは、早くから楽しめるしなやかさを備えている。ビオディナミの生産者にたまにあるが、栽培の水準に醸造が追い付いていないと言えるかもしれない。
 ムエックス一族のアラン・ムエックスが2001年からかじ取りする。規模が小さければビオに転換できるが、それでも、ボルドーの醸造には投資とノウハウも必要となる。バランスが難しい。今飲むなら2時間はデカンタージュしたい。あるいは最低でも5年は待ちたい。

2016年10月7日 自宅で

シャトー・フォンロック 2010
89点

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