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おきて破りのブレンド、細腕のアキコ・フリーマンが造る「涼風 シャルドネ」

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 米国で成功するのは、その分野で頂点に立つことを意味する。あらゆる分野で世界一を目指す大国だから。ワインでも、旧世界と新世界の優劣は脇に置いて、ホワイトハウスの公式晩さん会で供される意味は重い。それを成し遂げたのが、小柄で自然体の日本人女性アキコ・フリーマンさんだったから、驚きは大きかった。私の会ったアメリカン・サクセス・ストーリーの体現者は、いずれも強烈な上昇志向の持ち主だった。

 カリフォルニア州ソノマ群のロシアン・リヴァー・ヴァレーのセバストポールに本拠を置くフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーを訪ねて、安倍首相の2015年4月の訪米時に供された「フリーマン 涼風 シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー」の2014と2011を試飲した。

 晩さん会で供されたのは良作年の2013。2014も劣らずにいいヴィンテージだ。メロン、レモンカード、ヘーゼルナッツ、熟した果実が力強く迫ってくるが、引き締まった酸に支えられていて、後半でだれることがない。生き生きしたフレッシュ感を保っている。ミネラリーなフィニッシュ。2011はより緊張感が高く、冷涼なヴィンテージであることが伝わってくる。やや細みのスタイルだが、後半に果実が持ち上がり、フィニッシュの焦点があっている。日本人好みの味筋で、本人も好きなヴィンテージだという。

 女性だからエレガントな味わい。というのは大ざっぱすぎるが、どこまで果実感を保つかという点で、ドメーヌ・デュジャックを好む日本人ワインメーカーの抑制されたスタイル志向が表れている。カリフォルニアのワインメーカーにすればおきて破りでもある。スパークリングワインも造られるオキシデンタルの町の南東にある海に近いハインツランチと、やや内陸のふっくらした丸みのキーファーランチ。キーファーランチはフェイラが、ハインツランチはリトライが畑名表示ワインを生産している。普通なら、別々のキュヴェで仕込む銘醸畑をブレンドした。その結果、酸と果実のバランスがとれている。

 チャールズ・ハインツの所有するハインツランチは、長いウェイティングリストのある人気の畑。ブドウはトン当たり5000ドル近い高値だ。それを混ぜるのだから、ぜいたく。学校ではなく、エド・カーツマンから現場でワイン造りを学んだ彼女ならではの大胆な決断である。2002から2009までエドの下でアシスタントを務め、2010からはチーフ・ワインメーカーを務めている。ワイン造りは細かい選択の積み重ねだから、エドの教え方もよかったし、飲みこみも早かったのだろう。

 ホワイトハウスのワインディレクター、ダニエル・シャンクスは2015年最初に、いきなり「サンプルを送って」と電話してきたそうだ。すべてのワインを送ったら、シャルドネが気に入って採用されたという。シャンクスは2009年にワシントンDCのレストランで既に、シャルドネを飲んでいた。公式晩さん会は年に数回もないが、彼がワインを選ぶ昼食会やイベントは年間280回もある。そのために試飲を欠かさないプロが選んだのだから、意義がある。

2016年8月21日 カリフォルニア・ソノマのフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーで

フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー 涼風 シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2014
89点 
希望小売価格:7400円
フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー 涼風 シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2011
90点
輸入元:ワイン・イン・スタイル

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