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サントリーは日本を代表するワイン生産者の1つだ。山梨・甲斐市の登美の丘ワイナリーから自園ブドウで産する登美と登美の丘シリーズを核に、長野県産ブドウ100%の塩尻ワイナリー・シリーズ、産地と品種の可能性に挑戦するジャンパンプレミアム・シリーズを展開している。
日本ワインの定義が明確になり、日本とEUのEPA発効により、日本ワインがヨーロッパでもきちんと評価される土台が整った。日本ワインのリーダーであるサントリーの、3シリーズを代表するワイン16銘柄をブラインドで試飲した。テイスターは、スペインでワインを造る世界的なワインコンサルタントのサム・ハロップMWとアンドレアス・クバックMW、日本から大橋健一MW、テイスター&ソムリエの大越基裕さんと山本昭彦の5人。サムとアンドレアスは日本ワインの経験は多くない。
甲府の西北に広がる登美の丘ワイナリーは、1909年の登美農園の開園から1世紀以上にわたり、歴史を刻んできた。国際コンクールでの入賞歴も多い。茅ヶ岳山麓の南斜面に広がる畑から、自園産ブドウで生産する。栽培も醸造も世界標準に達している。除梗機、選果台、小型ステンレスタンクを導入し、垣根式栽培も取り入れて、ヨーロッパ系品種だけでなく、土着の甲州の栽培面積も増やしている。
フラッグシップの登美シリーズは、ボルドー・ブレンドの赤、シャルドネとリースリング・イタリコの貴腐「ノーブルドール」、長熟タイプのボルドー・ブレンド「登美 レゼルヴスペシャル」の4銘柄からなる。
登美の丘シリーズは、ボルドー・ブレンドの「赤」、「シャルドネ」、「甲州」、「甲州スパークリング」、「メルロ&カベルネ・ソーヴィニヨン・ロゼ」、「リースリング・イタリコ」、山梨27号とマルベックの交配種「ビジュノワール」、「ブラック・クイーン&マスカット・ベーリーA」の8銘柄からなる。
塩尻ワイナリーは、1936年に開設された。自社管理畑とともに契約栽培農家と提携して、岩垂原や桔梗が原などの産地で知られる長野県のテロワールを映すワイン造りに取り組んでいる。2013年には大規模な醸造設備の刷新を行い、小型の発酵タンク、選果システムを導入した。
標高の高い塩尻市から産する「塩尻マスカット・ベーリーA」、ミズナラ樽の香ばしさを生かした「塩尻マスカット・ベーリー A ミズナラ樽熟成」、塩尻市産の「塩尻メルロ」、セニエの「塩尻メルロ ロゼ」、冷涼な塩尻市岩垂原地区産の「岩垂原メルロ」の5銘柄を産する。
ジャパンプレミアムは、品種、産地、スペシャルアイテムの3シリーズに分かれ、計18銘柄。品種シリーズは、固有品種とヨーロッパ系品種で、品種の個性を引き出す。「マスカット・ベーリーA」「甲州」「マスカット・ベーリーA ロゼ」「リースリング・フォルテ」「メルロ」「シャルドネ」の6銘柄。
産地シリーズは日本を代表する長野、青森、山形県の4産地の農家と連携し、最適品種で生産する計11銘柄。長野県からは、北信エリアの上高井郡高山村から「高山村産 シャルドネ」と「信州産 シャルドネ」の2銘柄。中信エリアの北安曇郡池田町から「安曇野ソーヴィニヨン・ブラン」と「信州産 シャルドネ」の2銘柄
青森県津軽地区からは「津軽 ピノ・ノワール」「津軽 ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール」「津軽産 シャルドネ」「津軽産 ソーヴィニヨン・ブラン」の4銘柄。蔵王連峰に囲まれた山形・上山市からは、「かみのやま産 カベルネ・ソーヴィニヨン」「かみのやま産 メルロ」「かみのやま産 シャルドネ」の3銘柄が生産されている。
さらに、スペシャルシリーズとして、ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト・ラフィットとのコラボレーションで、日本産ブドウとボルドー品種をブレンドしたデュオダミがある。
サム・ハロップMWはIWCの元コー・チェアマンで、世界的に評価されるコンサルタントの1人。ナチュラルなワイン造りに取り組むアンドレアス・クバックMWと共同で、スペインでワインコンサルタント企業を運営している。コンペティションと同じ厳格な基準で、ワインの品質評価を行った。2人の評価はワインメーカーだけに、醸造技術を精査し、日本人テイスターより厳しい評価となった。
そのため、16銘柄のうち平均85点以上を獲得したのは7銘柄だった。トップは同点で「登美 赤 2014」と「登美の丘 赤 2016」。登美の現行ヴィンテージは2016で、熟成が少し進んだ2014と共に試飲した。熟成した2014の方が2016より評価が高かったが、ブレットの影響で点数が下がった。これに、「高山村 シャルドネ」「登美の丘 甲州」と続いた。
優良(85-89.9点)の7銘柄はこちら
山本昭彦「登美の丘ワイナリーを訪ねると、人間はもちろん、栽培にも醸造にも十分なリソースをつぎ込んでいるのがわかる。甲州の栽培面積を増やしているのも期待できる。ジャパンプレミアムは、契約栽培の部分もあり、発展途上のものも見られた。シャトー・ラグランジュの例を引くまでもなく、ワイン造りは時間のかかる仕事であり、日本のリーダーとして発展に期待したい」
大橋健一MW「1つ1つ丁寧に造り込んでいて国際的に高く評価されるレベルに達し始めていると感じる。少し残念なのはポートフォリオの立ち位置の一貫性に欠けるところ。登美と登美の丘、それにジャパンプレミアムのどこが違うか、パッケージングも含めてわかりにくい。発展したニュアンスのワインもあり、酸素の役割を踏まえたワイン造りが求められている。サントリーの水準が上がれば、日本全体の水準向上にも確実に貢献すると思われる。期待している」
サム・ハロップMW「重量感や熟度に欠けるワインがあり、やや期待を裏切られた。低価格帯のワインはクリーンでフレッシュ、よく出来ているものもあった。ブレットのワインも見受けられ、樽に問題があるようだ。日本だから生産コストは高いのは理解できるが、さらに収量を下げ、亜硫酸を減らす努力が必要に思える」
アンドレアス・クバックMW「全体的にはサムの意見に同意する。技術は高いのだろうが、酸化的で、ブレッティ、乾いたテクスチャーのワインも見受けられた。果実の力強さがもう少し欲しいところ」
大越基裕「日本のワインをずっと見てきた僕にとっては、今回選ばれたワインは、世界レベルのワインからすると味わいの一貫性にまだまだ欠けるものの、過去のワインよりずっと評価されるべきものとなっていると思いました。凝縮度を出すのが難しい産地ですが、昨今の世界の料理スタイルには、取り込める可能性もコストの問題を除けば十分にあると思う」
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