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10年熟成のセロス・ロゼと30年熟成のコート・ロティ・ムーリンヌ、熟成の意味を考える

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 いい造り手の優良年のワインは、なかなか開けられない。飲み頃なのはわかっていても、自前で10年近く寝かせていると思い入れも深まる。お世話になった方が退職したお祝いの会があり、ようやく開ける理由が見つかった。シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ローヌを代表する造り手のボトル3本を選んだ。

 シャンパーニュはクリュッグやルイ・ロデレールも考えたが、手持ちが多いジャック・セロスからロゼを選んだ。デゴルジュマンは2009年4月。ほぼ10年近く寝かせていたことになる。60ユーロで買えた時代に手に入れた。

 「ジャック・セロス ロゼ ブリュット」(Jacques Selosse Rose Brut)はさめたオレンジの色調、瓶底にタンニンがオリとなって沈んでいる。マーマレード、チャツネ、シナモン、折り重なった赤系果実の厚みとグリップのあるタンニンが、シャルドネからくるチョーキーな酸と美しく統合されて、繊細さと力強さの両面を表現している。エグリ・ウーリエのコトー・シャンプノワを連想させるストラクチャーを有する。赤ワイン的な熟成をし、タバコ、腐葉土のトーン。果実、酸、フェノリックスのバランスがとれて、ハーモニーがある。ミネラル感に富むフィニッシュの長さは特筆もの。ロゼは熟成させると甘くなりがちだが、これは重厚な辛口。数%しか加えられていないフランシス・エグリのピノ・ノワールのエネルギーを感じるとともに、セロスがロゼ・シャンパーニュを造る意味がわかった。デゴルジュマンは2009年4月27日。95点。

 ブルゴーニュはドメーヌ・ルロワのコルトン・レナルド1990。カプセルはメゾン物のように白いが、米国が輸入したドメーヌ物であることはコルクで証明された。2026本生産されたうちのボトリング番号は415番。

 「ドメーヌ・ルロワ コルトン・レナルド 1990」(Domaine Leroy Corton-Renardes 1990)は、腐葉土、ブラウンシュガー、湿った枯れ葉、なめらかだが、しっかりしたストラクチャーに支えられ、コルトンらしい厳格さを残している。ハーモニアスで、濃密なエキスが詰まっている。スモーキーで、エキゾチックなスパイス、なめし革、力強いタンニンのグリップがあるが、フィニッシュはかすかに乾き気味。1990年は偉大なヴィンテージだが、最初からビオディナミに転換したドメーヌはまだ創設3年目。コルトンをモワンヌ・ユドロ家から購入したのは90年の話で、完成の域に達していないのかもしれない。94点。

 ローヌからはギガルの単一畑で最も好きなコート・ロティ・ラ・ムーリンヌ1988。ロバート・パーカーが2度にわたり100点をつけている。ラック・コーポレーションが古いヴィンテージを放出した際に3万2000円で購入した。

 「ギガル コート・ロティ・ラ・ムーリンヌ 1988」(Guigal Cote Rotie la Mouline 1988)はエッジは薄いが、コアに黒みを残している。軽いブレット、凝縮度が高く、タンニンも力強いフルボディ。10%前後のヴィオニエを含むムーリンヌは、コート・ロティの単一畑の中で最もエレガントだが、1988は巨大で濃厚、男性的。黒トリュフ、煮詰めたオレンジの皮、砕いた炭、黒鉛、スムーズだが、線が太く、酸味とうまみが乗っている。フィニッシュは長大。30年めを迎えたこのワインはさらに20年は成長するだろう。96点。
オレンジの色調
底にタンニンのオリが蓄積
ギガルのコルクは比較的短い

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