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世界で人気上昇中のプロヴァンス・ロゼを一気に試飲

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 ロゼワインの人気が世界的に高まっている。

 フランスの年間生産量は、約2500万ヘクトリットルで世界のロゼの生産量の10%を占めるが、消費大国でもある。ロゼワインの消費量は白ワインを上回り、3本に1本はロゼ。平均で年間20本のロゼを飲んでいる。米国もロゼブームだ。ニールセンによると、テーブルワインに占める消費比率は1.5%と低いが、2016年から2017年で53%も販売額が増えた。ミレニアル世代の人気を集めている。

 背景には、淡白で、軽やかな味付けの料理に移行している食のトレンドや健康志向のライフスタイルがある。ロゼワインは赤ワインと白ワインの中間を行く味わいなので、和食とも合わせやすい懐の深さを持っている。日本では海外ほど人気が加速していないが、ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリーの造るミラヴァルなど、注目を集めるロゼの登場もあって、関心が高まっている。

 今回の産地別比較試飲では、中華圏初のマスター・ソムリエであるヤン・ルーMSをテイスターに迎えて、日本市場に入っているプロヴァンスのロゼを試飲した。プロヴァンスワインの中でも、全生産量の95%を占めるコート・ド・プロヴァンス、コトー・デクサン・プロヴァンス、コトー・ヴァロワ・アン・プロヴァンスの3つのアペラシオンに絞った。

 10年前、フランスのロゼワインは国内市場向けが大半だったが、今は輸出が増えている。中心となる産地はプロヴァンスだ。米国では2017年、2200万本のロゼワインが販売され、プロヴァンスのロゼが量の43%、金額で半分を占めた。

セニエ法と直接圧搾法 フレッシュなうちに飲むべき

 主要品種は白ブドウがロール(ヴェルメンティーノ)、ユニ・ブラン、クレーレット、ブールブラン、グルナッシュ・ブラン。黒ブドウがシラー、グルナッシュ、サンソー、ティブーラン、ムールヴェドル、カリニャン、クーノーワーズ。

 ロゼワインの醸造法はセニエ法と直接圧搾法の2つに大別される。セニエ法は、黒ブドウの果皮をマセラシオンの初期に短かい間、浸漬して、色づいた果汁を分離し、白ワインのように発酵させる。濃厚でしっかりした味わいになる。直接圧搾法は、黒ブドウを破砕後すぐに圧搾し、果皮の色素でほんのりと色づいた果汁を発酵させる。皮や種との接触がほとんどないため、淡く、渋みも少ない。プロヴァンスのロゼは、セニエ法が多いが、品種によって直接圧搾法を取り入れたり、多様性がある。ステンレスタンクで醸造する生産者が多いが、一部に樽も導入している。

 今回は、シャトー・ミラヴァルの2014-2017の垂直を含めて、国内で入手できる主要なコート・ド・プロヴァンスを中心に21アイテムをブラインドで試飲した。2000-5000円の入手しやすいワインが主体だが、世界で最も高価なシャトー・デスクランのガリュだけは含めた。4人のテイスターの平均点が85点に達しなかったワインは掲載していない。

 傑出(90点以上)はなく、優良(85-89点)はミラヴァル、シャトー・デスクラン、エスタンドンなど10銘柄だった。
個別の評価はこちらhttps://www.winereport.jp/archive/1832/

山本昭彦
日本人の1人当たりの年間消費量は4本に満たない。掛け声が高まるのに、ロゼが日本に広がらないのは、ワインが普及してないからだ。評価の高かったワインは、フェノリックスの抽出と樽の使い方が洗練されていて、ワインとしてのバランスがとれているもの。ミラヴァルのいくつかがきれいに熟成していたのは発見だったが、全体的にはリリースから1年以内に飲むのに適している。日本人はペアリングにこだわるのが好きなので、エスニックや中華のレストラン、カジュアルなカフェでのバイ・ザ・グラスを地道に行うことで、ロゼを飲む習慣が広がるのではないか。オフの市場では、手頃なスパークリグと同じように気楽に開けることを勧めたい。

大橋健一MW
ロゼは1万円を超す値段のワインがほとんどないことや、実際にロゼだけに執心したワイナリーがほぼ存在しないせいもあって、研究や技術的な探求が白や赤以上に行われていない傾向は否めないであろう。商社や酒販店も、使用品種、そしてダイレクト・プレスかセニエかを区別する程度で、それ以上の探求心を持って勧めない傾向があるように見受けられる。ロンドンやニューヨーク、シドニーのように、ワインがコモディティ化している市場はそれでも良いが、そうでない日本で専門家たちが深く考察せずに売るのは望ましくない。日本人はスペインやチリと、プロヴァンスのロゼのどちらを選ぶだろうか。インパクトの強いチリを好むかもしれない。シリアスなロゼを造る場合、樽に頼りがちだが、ミラヴァルのように樽を多用しなくても、シリアスで熟成力のあるロゼがあったのはよかった。

大越基裕
ロゼは結構、使っている。最近の世界の食の流れの中では、赤ワインよりロゼやオレンジの方が、ハイエンドなレストランに入り込む余地がある。ただ、オレンジほど品質が光るものに出会えず、苦味が気になるのもある。ミラヴァル以外にも、価値あるものに出会えたのは発見だった。AnDiの料理トマトのクリアーなスープとゆで春巻きの料理にはチャーミングなベリー風味のロゼがよく合う。イメージは冷菜だが、樽感がきれいなものは温菜にも使える。ギリシャ・ナウサの生産者ティミオプロスのクシノマヴロロゼや豪ヴィクトリア州の生産者ファー・ライジングのロゼなど、やや果実感が先行している方がペアリングには使いやすいが、プロヴァンスのロゼは控えめな香り中にシリアスなバランス感があるのが、魅力的なポイントになっている。

ヤン・ルーMS
ロゼは、ロンドン、パリ、ニューヨークのような成熟した市場に適していて、中国のような新興市場には向いていない。プロヴァンスのロゼは赤の副産物であり、魚のスープや軽い魚料理など地元料理向けのワインであることを理解しておく必要がある。現在のロゼブームは20年前のボージョレ・ヌーヴォー・ブームと似ている。多くのロゼは高い収量で、フェノリックスが熟していないうちに早摘みされる。産業全体は利益が出ているようだが、新興市場で商業的に成功するかは疑問。中国人はロゼは飲まない。アルザスがいい例だが、料理とのペアリングをPRすると中国人は関心を持たない。個人的には、アペリティフとして飲むことはない。

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