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福島の原発事故の痕跡、カリフォルニワインから発見されるが害はなし

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 東京電力福島第一原発の事故で放出された放射性物質の痕跡が、カリフォルニアのワインから発見されたことを、フランス・ボルドー大の原子物理学者チームが発表した。2011年以降のワインは事故前より、含有されるセシウム137の濃度が増加していたが、ワイン・インスティテュートはカリフォルニアワインが健康への害を及ぼすことはないと強調している。

 ボルドー大のボルドー・グラディニャン原子力研究所の研究者チームは、2009年以降のカベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュのロゼ18本について、核実験や原発事故で放出されるセシウム137の濃度を検査した。カベルネの大半はナパヴァレー産で、ロゼはリヴァモア・ヴァレーとセントラル・ヴァレー産のブドウから造られたもの。その結果、2011年の事故後のワインの濃度は高まっていて、カベルネは2倍になっていた。太平洋を横断してカリフォルニアに届いたとみられる。

 ただ、濃度は極めて低く、人体に害悪は及ぼさない。年間に4万本以上のワインを飲まないと影響を受けないレベルだという。

 セシウム137は1945年の広島・長崎への原爆投下によって地球上に放出され、50年代に相次いだ米国やソ連の核実験、86年のチェルノブイリ事故などでも大量に放出された。ネバダで核実験が行われた57年のワイン1本に含まれていたセシウム137の濃度は今回の数百倍とも言われる。

 今回の研究者チームのフィリップ・ユベールは、1945年より前のワインにはセシウム137が含まれないことに基づいて。セシウム137の測定をワインの真贋鑑定に応用した。有名なのは、亡くなったワイン収集家ハーディ・ローデンストックが発掘した「ラフィット1787」トマス・ジェフーソンボトルだ。このワインを購入した米国の億万長者ウィリアム・クックは、ユベールに測定を委ねて、18世紀に生産されたかどうかを判定しようとした。大気中のガンマ線を遮断した地下で検査した結果、ワイン内にはセシウム137が含まれなかった。1945年以前のボトルであることが判明したため、偽造ワインと断定する決め手にはならなかった。
ワイン中で測定されたセシウム137 南仏で測定 (C)Centre d'Études Nucléaires de Bordeaux-Gradignan

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