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ミネラル感と熟成能力、ルイ・ジャドのオレゴンプロジェクト「レゾナンス」の進化をたどる

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 ブルゴーニュのメゾン、ルイ・ジャドが米オレゴンで取り組んでいるプロジェクト「レゾナンス」のプロモーションで、ワインメーカーのジャック・ラルディエールが来日した。デビュー・ヴィンテージの2013から現行の2015まで試飲し、進化の軌跡を確認した。

 ルイ・ジャドは、1826年にボーヌ・クロ・デ・ズルシュルの畑を初めて購入し、1859年に設立された。レゾナンスは初めて海外で展開するプロジェクト。ウィラメット・ヴァレーのヤム・ヒル・カールトンにあるレゾナンス・ヴィンヤードを2013年に購入するところから始まった。初ヴィンテージは2013年。14年にダンディー・ヒルズのデクヴェルト・ヴィンヤードを購入し、2018年中にレゾナンス・ヴィンヤードの隣に醸造所を建設予定。

 ラルディエールは1948年生まれ。パリのパスツール研究所で、ボージョレの自然派ワインの祖ジュール・ショヴェの指導を受けながらマロラクティック・バクテリアについて研究。研究所を支援していたルイ・ジャドの先代社長アンドレ・ガジェが採用し、1970年にメゾンに入社した。ビオディナミを駆使して、エネルギーあふれるワインを生み出し、ルイ・ジャドの屋台骨を支えた。42年間働いた後、65歳の定年を迎えて2012年に引退。翌年から、ピエール・アンリ・ガジェの息子ティボーと共に、オレゴンのプロジェクトに専念している。
 
 カリフォルニアにはソノマ・コースト、カーネロス、サンタ・リタ・ヒルズなどブルゴーニュ品種に適した産地が多いが、オレゴンを選んだのは、ドルーアンが88年に進出していて冷涼な気候を知っていたのと、ブルゴーニュのように小さなコミュニティだったから。今では、ルイ・ミシェル・リジェ・ベレールやジャン・ニコラ・メオ、ドミニク・ラフォンらブルゴーニュのトップ生産者が進出している。

 オレゴンは1万1300ha以上でブドウが栽培され、18のAVAに700軒のワイナリーが存在する。ピノ・ノワールの代表的産地ウィラメット・ヴァレーは、カリフォルニアより冷涼な夏だが、秋には雨が降りやすい。ジ・アイリー・ヴィンヤードのデヴィッド・レットが1965年に初めてピノ・ノワールを植えて成功。ジョゼフ・ドルーアンが88年にドメーヌを設立し、世界に知られるようになった。カリフォルニアのポマール、スイス生まれのヴェーデンスヴィル、ディジョン777の主なクローンで栽培されてきた。

 ウィラメット・ヴァレーには6つのサブアペラシオンがある(図参照)。2013年に購入したヤム・カールトンAVAのレゾナンス・ヴィンヤードは、古い海洋性堆積物のウイラケンジー、玄武岩のヤム・ヒル土壌が広がる。81年に植えられた自根の樹は灌漑せずに栽培される。南から南東、南西向き。14年に購入したデクヴェルト・ヴィンヤードはすり鉢状の地形で、粘土、ロームを含むジョリー土壌。99年に接ぎ木で植えられた。

 「レゾナンス ウィラメット・ヴァレー ピノ・ノワール 2015」(Resonance Willamette Valley Pinot Noir 2015)はレゾナンスとデクヴェルトと購入した複数の畑のブドウのブレンド。2015は2年目。20%新樽で13か月間のブレンド。レッドチェリーにダークチェリーが交じり、湿った黒い土、肉厚なテクスチャー、精妙さよりはおおらかさが目立つ。スパイシーで、火山岩を感じさせるミネラル感、フィニッシュは塩気をたっぷりと帯びている。5800円。90点。

 「レゾナンス レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2014」(Resonance Resonance Vineyard Pinot Noir 2014)は新樽50%で15か月間の熟成。クリームをまぶしたストロベリー、レッドチェリー、クリスマスのスパイスボックス、ジューシーで、生き生きしている。丸いテクスチャー、力強く、ダシ的なウマミ、横に広がったヴォリューム感が幅広さを保ったまま垂直に落ち、フィニッシュは細く引き締まる。空気に触れて甘みが出て、ビターチョコ、ほのかにタバコ、鉄っぽいニュアンスが最後まで残る。8800円。93点。

 うれしい驚きだったのは「レゾナンス レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2013」(Resonance Resonance Vineyard Pinot Noir 2013)。2016年2月に試飲したものに再会した。複雑に発展していて官能的。アーシーでスモーキー、森の下草、ソノマコーストかと思わせるエレガントな果実と生き生きした酸、シルキー、正確で透明感のあるテクスチャー。長いフィニッシュに、ごく軽い酢酸のタッチがあり複雑性を高めている。手探り状態の最初のヴィンテージがきれいに熟成しているのは、畑のポテンシャルの高さを物語る。2年半前の試飲では、それを見抜けなかった。最初から完成度は高かったのだ。92点

 「レゾナンス デクヴェルト・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2014」(Resonance Decouverte Vineyard Pinot Noir 2014)はラズベリー、オレンジの皮、クローブ、岩を砕いたようなミネラル感、躍動感があり舌の上でよく動く。ぽってりとした豊かな味わい、ドライトマト的なうまみ、熟度と酸のバランスがとれハーモニアス。エネルギーがあり、重厚さを残すフィニッシュ。やや厳格さがあり、コート・ド・ボーヌ的。92点。

 最初からいきなり高水準に到達するのがさすがはジャック。彼のワイン造り歴はほぼ半世紀。ブルゴーニュ不遇の70年代から、有機的な取り組みが始まった90年代を経て、現代まで一線で活動し続ける数少ない醸造家だ。ルイ・ジャドが手がける多彩な産地を手がけてきた。科学的な知識も備えており、テロワールの力を見抜く洞察力に優れている。ド・ヴォギュエのフランソワ・ミエやクロ・デ・ランブレイのティエリー・ブルーアンら偉大な醸造家は、新旧世界を問わず、いいワインを造れる能力を有している。

 レゾナンスはルイ・ジャドの2014、2015のヴィラージュと比較試飲したが、最高醸造責任者がフレデリック・バルニエに代わってからのヴィンテージのせいもあるが、エネルギー量の大きさではレゾナンスが圧倒的に上回る。ビオディナミによって2つの畑がさらに向上していくのは間違いない。自根のレゾナンス・ヴィンヤードの火山岩土壌と海洋性土壌の入り交じった土壌は、潮のしぶきと鉄分を感じさせる独特のミネラル感を感じさせる。

 ブルゴーニュに通じる「センス・オブ・プレイス」がオレゴンにはある。トップドメーヌがオレゴンを開拓しているのも、その可能性にひかれているからだろう。メオ・カミュゼのジャン・ニコラ・メオは「フレンチ・パラドックス」とブルゴーニュを連想させるオレゴンの将来性を評した。今後も注視すべき発展の楽しみな産地だ。

 輸入元は日本リカー。 
レゾナンスは畑によって色が違う
オレゴンの18AVA

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