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お値打ち赤と優れた白、右岸のトップを行くラフルールの挑戦 (ボルドー・プリムール2017)

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 プリムール試飲ではペトリュスとシャトー・ラフルールを連続して訪れるのが常だ。ペトリュスの駐車場から、ラフルールの畑を抜けて、1、2分でラフルールの石造りの館に着く。両者の関係は深い。ペトリュスを所有するジャン・ピエール・ムエックス社は、ラフルールの販売を支えてきた。1983年と1984年のラフルールは、ペトリュスの醸造責任者ジャン・クロード・ベルーエが醸造した。
 2017年4月の霜害も両者が共同で対策にあたった。1991年の霜では、ペトリュスが生産できなかった。ラフルールは8樽しか生産できず、すべてをパンセ・ド・ラフルールに格落ちさせた。今回は両者ともダメージを避けられた。共同でロウソクを購入し、冷気が畑に降りないように風を起こすタービンを設置した。JPムエックス社も関わっている。
 このロウソクは金属製のバケツに入れた大きなもの。火勢が安定している。これを4.5haの畑に5mおきに置いた。ポムロールの生産者は左岸と比べると圧倒的に規模が小さい。今後も温暖化で発芽が早まり、霜のリスクが高まるのは間違いないから、同様の取り組みが求められるだろう。
 「2017はだれもが霜のことばかり言うが、2つの物語があるんだ。4月の霜と夏の干ばつだ。ラフルールは霜のダメージはなかった。霜の後は良好に成熟が進み、夏の干ばつで凝縮した小粒の実をつけた。我々には2つの家族がいる。ラフルールとグラン・ヴィラージュだ」
 醸造責任者のオムリ・ラムが語る。スペインやニュージーランドで研修し、モンペリエで学んだイスラエル出身のきれる男だ。
 「シャトー・グラン・ヴィラージュ」(Chateau Grand Village)はフロンサックとコート・ド・ブールの中間にあるムイヤック(Mouillac)村にあり、ラフルールを所有するギノードー家が、ラフルールのチームを動員して同じ情熱でワイン造りに注力している。14haの畑は粘土石灰岩土壌。メルロ80%とカベルネ・フラン20%を栽培。グリーンハーベストや除葉を行い、化学薬品は使わず、収穫は手摘み。厳しい選別の後、区画別に小型タンクで発酵し、樽で12か月間、熟成する。ボルドー・シュペリウールで価格もお手頃。手の届かないラフルールに入門する姉妹ワインは「ミニ・ラフルール」として探す価値があるワインだ。

 「シャトー・グラン・ヴィラージュ 2017」(Chateau Grand Village 2017)は霜で2区画が全滅して平年の9%の生産量。例年は半分近いカベルネ・フランを3%しか使えず、残りはメルロ。フレッシュで、ダークチェリー、なめらかなタンニン、心地よい塩気を帯びていて、キレのよいフィニッシュ。徐々に値上がりしている右岸衛星地区の隠れたお買い得。2015年は3000円を切っており、ケースで買う価値がある。89点。

 「アクト 9」(Acte 9」はフロンサックから造られる同様のプロジェクト。3haの粘土石灰岩土壌から。2009年に「Acte」として始まり、9年目の2017は「Acte 9」を名乗る。2017の生産量は平年の10%。90%を霜で失い、カベルネ・フランが使えずメルロ100%。グラン・ヴィラージュより濃厚で、深みと長さで上回る。ブラックプラムにレッドベリーが混じり、柔らかいテクスチャーは広がりがある。なめらかに抽出されたタンニン。これも2017を上回る2015が3000円台で売られ超お買得。2017は90点。

 本家のシャトー・ラフルールはペトリュスやラフルール・ペトリュスと近接するが、土壌は異なり、サンテミリオンのシュヴァル・ブランに近い。ここがポムロールの面白いところだ。4.5haの畑はメルロとカベルネ・フランがほぼ半々。北西部は砂質粘土の上に砂利(1.4ha)、南部と東部は粘土の上に砂利(1.5ha)、中心部は砂利(0.95ha)と複雑な土壌構成。それらを区画別に醸造することでペトリュスとは異なる偉大なポムロールが出来上がる。クリスチャン・ムエックスが「ペトリュスと並ぶか、上回るポテンシャルがあるのはラフルールだけ」と語った話はよく知られている。

 「シャトー・ラフルール レ・パンセ・ド・ラフルール 2017」(Chateau Lafleur Pensees de Lafleur 2017)はメルロ52%、カベルネ・フラン48%。レッドチェリー、バラの花芯、砂利、ヴェルベッティで、クリーミィなタンニン、十分に濃密だが、重さはない。メルロのしなやかさとカベルネ・フランの繊細さがきれいに調和している。ラフルールとは別区画の0.67haから生まれるパンセはセカンドワインではないとシャトーは言う。92点。

 「シャトー・ラフルール 2017」(Chateau Lafleur  2017)の収穫は9月8日のメルロに始まり、29日のカベルネ・フランで終えた。9月中旬の雨が、8月の干ばつでストレスを受けたカベルネ・フランにフレッシュ感を与えたという。濃密で、力強く、シルキーで流麗なテクスチャー。プラム、ダークチェリー、ミント、ほのかに海砂のヨード感、しっかりした背骨に貫かれ、グラスを回すたびに香りが発展する。折り重なった果実はち密に構築され、継ぎ目のないフィニッシュが長く続く。偉大な2015、2016に全くひけをとらない。97点。

 ラフルールの試飲で、最後の2銘柄は白ワインとなる。右岸の白ワインの開拓に取り組んでいる。
 シャトー・グラン・ヴィラージュ・ブラン 2017」(Chateau Grand Village Blanc 2017)はサンセールから持ってきたクローンのソーヴィニヨン・ブラン70%とセミヨン30%のブレンド。グラッシーで、パッション・フルーツ、パイナップル、じゃ香のすがすがしい香り、パレットは厚みがあり、オイリー。さわやかな酸に支えられている。2017年の白は左岸だけでなく、ごく少数の右岸もいい。91点。

 「レ・シャン・リーブレ 2017」(Les Champs Libres 2017)は2013年に始めた。グラン・ヴィラージュの畑から選ぶ優れた古木のソーヴィニヨン・ブランだけで仕込む。ボルドーとブルゴーニュの3分の2新樽でバトナージュして熟成する。ノンマロ。生き生きしていて、クリーミィ、フラワリーで、マイヤーレモン、白桃、ナッツ、バランスがとれていて、心地よいフレッシュ感。塩気を帯びたミネラル感を伴うフィニッシュは焦点があっている。「ブラインドで飲めばピュリニー・モンラッシェと間違えるだろう」というラムの言葉はおおげさではない。生産量は平年の30%に減った。93点。

 「歴史的に、ボルドーには白ワインが多かった。右岸には粘土石灰岩土壌がいたるところに広がっている。可能性はある。黒ブドウから白ぶどうへの植え替えにコストはかかるが、そこはラフルールでまかなう。ブルゴーニュのような緊張感とエネルギーのある偉大な白ワインが目標だ」とラムは熱い。
霜対策で設置されたタービン
セラーを改築中
醸造責任者のオムリ・ラム

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