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セントラルオタゴを開拓、プロフェッツ・ロックのピノ・ノワールとリースリング

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 セントラルオタゴはニュージーランドで高水準のピノ・ノワール産地として定着したが、新たな可能性が開拓されている。一つがリースリングだ。北のワナカから流れてきた氷河が土壌を形成したベンディゴ地区はシストを主体とし、粘土、石、石灰岩などが混じる。
 シストは変成岩の一種であり、スレートより変成の度合いが強い。ややこしいことに、ドイツ・モーゼルで知られるシーファー(粘板岩)はシストとスレートの両方を指している。アルザスの有名なバイオダイナミックス生産者マルク・クライデンヴァイスは、グランクリュのカステルベルグのシスト土壌から優れたリースリングを造っている。クンツ・バーの醸造責任者を務めたポール・プジョルはだから、セントラルオタゴのリースリングの可能性に最初から気付いていた。
 1月末に開かれた「セントラルオタゴ ピノ・ノワール・セレブレーション 2018」のウェルカム・パーティでも10年以上熟成したリースリングが供され、世界から来た参加者の注目を集めていた。ダンスタン湖東岸のベンディゴにあるワイナリーでの試飲は、リースリングから始まった。
 「プロフェッツ・ロック ドライ・リースリング 2015」(Prophet's Rock Dry Riesling 2015)は青りんご、グレープフルーツ、チョーキーなミネラル感、ライトボディだが、キレのよい酸が背骨を形成している。温暖なヴィンテージを反映して、果実の充実度が高め。最高地点の標高は350mに達する険しい斜面のロッキー・ポイントの畑から。水はけがよいシスト主体の土壌である。4300円。90点。
 「プロフェッツ・ロック ドライ・リースリング 2010」(Prophet's Rock Dry Riesling 2010)は、洋ナシ、ウールのセーターを思わせるラノリン、硬質なテクスチャー、透明感があり、ハーモニアス。うまみが後を引く精妙なフィニッシュ。きれいに熟成したドイツのリースリングを思わせる。91点。
 リースリングの生産量は300-400ケース。残糖はリットル当たり6-9グラム。フェルトン・ロードのブレア・ウォルターはモーゼルのファンで、いいリースリングを生産している。セントラルオタゴで今後、注目すべき品種と言える。
 セントラルオタゴはアロマティック品種も可能性がある。ポールはピノ・グリも手掛けている。ロッキー・ポイントとそれよりさらに標高の高いホーム・ヴィンヤードから造る。320-380mの北向きのホーム・ヴィンヤードは夜間が涼しく、粘土とチョーク主体でシストや石英が混じる。ニュージーランド航空の優良ワインに選ばれている。ポールは今後はミュスカも手掛ける予定。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・グリ 2016」(Prophet's Rock Pinot Gris 2016)は黄桃、パイナップ、フェンネル、柔らかい口当たり、クリーミィなテクスチャー、甘やかさと酸のバランスがとれている。フィニッシュに白コショウのヒント。残糖は10グラム。野生酵母で発酵し、オリと共に熟成する。4200円。89点。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・グリ 2010」(Prophet's Rock Pinot Gris 2010)は洋ナシ、熟した黄桃、アカシアのハチミツ、とろりとしたテクスチャー、甘やかさがうまみに変わり、塩気を帯びたフィニッシュはミネラル感に富み、焦点が合っている。90点。
 ピノ・ノワールは5種。畑違いのロッキー・ポイントとホーム・ヴィンヤード、ジョルジュ・コント・ド・ヴォギュエのフランソワ・ミエとコラボしたキュヴェ・オー・アンティポード、5年熟成したレトロスペクト。それに、2016年から新たに始めたロゼ的な造りのインフュージョン。
 「プロフェッツ・ロック インフュージョン ピノ・ノワール 2016」(Prophet's Rock Infusion Pinot Noir 2016)は手摘みして除梗。10日間の低温浸漬後に、48時間のスキンコンタクト。果皮を除いてオリと共に野生酵母で発酵させた。ロッキー・ポイント80%、ホーム・ヴィンヤード20%。タヴェルのロゼのように濃いルビー、フラワリー、砕いたストロベリー、モレロチェリー、丸くて、長い。ピノ・ノワールのアロマとエキスのみを純粋に抜き出したブドウ果汁のようにピュアな液体。マロをせずきわめてフレッシュ。「Infusion」はフランス語でハーブティー。気のきいたネーミングで、まさに果実を煎じている感じ。112ケース生産。4900円。90点。
 「プロフェッツ・ロック ロッキー・ポイント ピノ・ノワール 2016」(Prophet's Rock Rocky Point Pinot Noir 2016)は抑制されていて、明るいダークベリー、甘草、タイム、シナモン、酸は高めで、硬質なミネラル感に富む。口がすぼまるようなタンニンはきれいに抽出されていて、継ぎ目のないフィニッシュ。4700円。90点。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール 2014」(Prophet's Rock Pinot Noir 2014)はホーム・ヴィンヤードから。レッドチェリー、砕いた岩、レッドペッパー、シルキーなテクスチャー、濃密で、ピュアな果実、うまみがじわじわと広がるパレット。ストラクチャーはしっかりしており、フィニッシュを持ち上げる酸がある。十分に長い。5900円。93点。
 フランソワ・ミエとのコラボワインは2年目に入った。ポールが2009年にヴォギュエで修業し、フランソワの息子がプロフェッツ・ロックで修業した縁からプロジェクトが生まれた。フランソワはブルゴーニュ以外でピノ・ノワールの可能性がある産地として、セントラルオタゴを挙げている。畑の土壌を調査して、石灰岩が多く含まれる区画を選び、ブルゴーニュと同じ器具を輸入して造っている。ホーム・ヴィンヤードのその「フランソワズ・ブロック」はワイナリーすぐ下の斜面だ。厳格なカノピー・マネージメント(樹冠管理)で、生理的な成熟を実現している。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール キュヴェ・オー・アンティポード 2016」 (Prophet's Rock Pinot Noir Cuvee Aux Antipodes 2016)は、寡黙なのに多くのメッセージを発するフランソワのスタイルがより明確になった。柔らかい口当たり、しなやかなテクスチャー、抽出は軽やかで、ラベンダー、ダークベリー、甘草、スパイシーで、きれいに統合されている。フレッシュな酸があり、リニア、細く長いフィニッシュに果実の甘やかさとチョーキーなミネラル感が絡みつく。95点・
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール レトロスペクト 2013」 (Prophet's Rock Pinot Noir Retrospect 2013)はホーム・ヴィンヤードから仕込んだワインを5年間熟成して世に出す。クラクラするような香り高さ、ダークベリー、腐葉土、砕いた牡蠣殻、豊満な果実としみじみとしたうまみが調和している。シルキーなテクスチャー。エネルギーあふれるきわめて長いフィニッシュ。さらに10年は軽く熟成するだろう。96点。
 ポールはシャルドネも取り組んでいて、こちらでもレトロスペクトを出す計画という。フランソワは2015年からヴォギュエのミュジニー・ブランを復活させた白の名手もあるからこちらも楽しみだ。ピノ・グリのヴァン・ド・パイユも少量生産している。フランス人の父を持つポールは、規制の少ない新世界で活躍の場を得た。
 輸入元はGRN。
ポール・プジョル(左)とフランソワ・ミエ
キュヴェ・オー・アンティポードを生むフランソワズ・ブロック
畑のシストを花壇の仕切りに使用

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