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コルナスは、日本ではコート・ロティやエルミタージュより知名度が劣るかもしれないが、北部ローヌきっての高級ワイン産地である。ジビエ料理に合わせたくなるイメージがあったが、実際には多彩な顔がある。
色調が濃く、黒系果実のアロマに、スパイシーなヒントを持ち、タニックでリッチ。アラン・ヴォージュのヴィエイユ・ヴィーニュやオーギュスト・クラープのルネッサンスは、その良い例だが、ドメーヌ・クルビのレ・ゼゲやポール・ジャブレのドメーヌ・ドゥ・サン・ピエールを飲むと、印象が違う。冷涼な標高300mの砕けた花崗岩ベースの砂地で、除梗された涼しげな印象のワインである。生産者の手腕、思想、クリマの違い、ヴィンテージ。色々な要素が絡まる中に、アペラシオンの素顔が浮かび上がる。リューディの特徴を考察して、コルナスというワインを解体する。
コルナスは、サン・ジョゼフと同じローヌ右岸にある。同じ花崗岩質土壌でありながら格が違う。香りよりも、味わいの深遠さや、濃密さ。よりダークで、重量感がある。その差はどこからくるのか。一つの理由が熟度の違いである。コルナスの北に位置するアルレット山塊が、ローヌ渓谷に吹きすさぶ冷たいミストラル(北風)を防ぎ、南方のトゥーロー渓谷から温暖な風が流れ込む。そのため、コルナスはエルミタージュやサン・ジョゼフより1週間早く完熟する。もう一つ重要なのが、北のアルレット山塊と南のクルソル山塊のジュラ紀キンメリッジアン紀の石灰質に囲まれているということ。
「これがコルナスの土壌のpHを上げる一つの要因」とヴァンサン・パリスは語る。サン・ジョゼフの花崗岩土壌のpHは5.0前後とかなり酸性だが、コルナスは7.0前後。「低い酸性の土壌から出来るワインは、丸みと力強さ、果実味、リッチさ、そして深遠さが得られる」とエルミタージュのジャン・ルイ・シャーヴも語る。
コルナスの5つの丘にはそれぞれ異なったクリマがあり、ワインの味わいに大きな影響を与える。北西の高台、中部丘陵の斜面、西側のローヌ河に近い低地の3つのゾーンに大別できる。
北西の高台は、「標高の高さが最も重要。高ければ高いほど収穫は遅れる」と言われるようにとても冷涼なエリア。丘を登ると、風の通り道になっていて、常に凄まじい北風で吹き飛ばされんばかり。陽光や暴風に削られた花崗岩は、細かい砂状になっていて、土壌は軽い。標高300mに達するサン・ピエールや、レ・ゼゲ、アルレットなどの区画は、いずれもチャーミングでフルーティな赤果実の香り。マチュー・バレ、リオネの他、新しく開拓した他の村の生産者が所有しているゾーンである。
中部の丘陵地は、東・東南・南向きが中心の花崗岩の急斜面である。北は石灰質粘土の影響を強く受け、中心部は花崗岩の岩石、南側は風化して砂化した花崗岩の土壌と、南北で性格が異なる。最も有名なリューディはシャイヨ(Chaillot)。高い場所は花崗岩質だが、下部は石灰質も豊富。何よりも粘土質のテロワールで、基本的に力強く、ぎっしりと詰まったフルボディでタンニンの豊富なワインとなる。多くの生産者が所有し、単一畑を造るが、オススメは、ギョーム・ジルやヨハン・ミッシェルのもの。エネルギーに満ち、凝縮しかつ、バランスが絶妙である。
レナール(Reynard)は、コルナス最良の畑と言われる。花崗岩の急斜面で、谷の奥に位置するから風の影響を受けにくい。日光が降り注ぎ、力強さとスパイシーな個性を与える。「このワインのテクスチャーは、花崗岩のお陰でよりミネラルに富む」とティエリー・アルマンは語る・彼のワインはエレガンスに満ちた、花の香り高い優美なワインである。まさにコルナスのグラン・クリュ。ジェナル(Geynal)、ラ・フォンテーヌ(La Fontaine)、ラ・コート(La Cote)、マザール(Mazard)の上部、サブロット(Sabrotte)、パトゥ(Patou)などの優良畑があり、コルナスの中核を成している。
全体の4分の1程度だが、西側の低地にも畑が存在する。風化した花崗岩の石ころ、砂、赤粘土、そして石灰質の土壌である。場所によって礫岩が豊富な場所もある。機械のよる耕作が可能で、仕事は中腹に比べると楽だが、ワインは概しておおらかで、密度が厚くなる。ブレンドされることが多く、ここのリューディだけで造る生産者は少ない。代表的なものは、シャンペルローズ(Champelrose)とマザールの下部。
コルナスは絶壁の斜面のワインである。基本的な味わいは垂直的で、メリハリがあり、強い。シラーから造る濃厚で、スパイシーな風味だから、古来よりジビエに合うといわれるが、ジビエといっても種類が多い。どちらかというと、トリ系のジビエに良い。青首鴨のように主張の激しいジビエは、中部区画の畑(シャイヨ、マザール)のもの。鶉や森鳩などは上部区画(サン・ピエールやレ・ゼガ)のゴール土壌のもの。
概して、ブレンドしたものの方が、複雑な料理に適し、単一畑は素材そのものを主体にした料理に。2015年や2013年、2009年、2007年のような力強いヴィンテージは、濃厚なソースでもよいが、2014年や、2012年、2010年のような軽やかなヴィンテージは、さっと炭火で焼いて塩で。ジューシーな盛り合わせものには、全房発酵したワインを。
単純にコルナスを「ジビエに合うワイン」ととらえるのではなく、リューディ、生産者、ヴィンテージなどを手掛かりに「どの種類のジビエに合うワイン」なのかと考える方が楽しいし、コルナスのより深い理解につながる。
色調が濃く、黒系果実のアロマに、スパイシーなヒントを持ち、タニックでリッチ。アラン・ヴォージュのヴィエイユ・ヴィーニュやオーギュスト・クラープのルネッサンスは、その良い例だが、ドメーヌ・クルビのレ・ゼゲやポール・ジャブレのドメーヌ・ドゥ・サン・ピエールを飲むと、印象が違う。冷涼な標高300mの砕けた花崗岩ベースの砂地で、除梗された涼しげな印象のワインである。生産者の手腕、思想、クリマの違い、ヴィンテージ。色々な要素が絡まる中に、アペラシオンの素顔が浮かび上がる。リューディの特徴を考察して、コルナスというワインを解体する。
コルナスは、サン・ジョゼフと同じローヌ右岸にある。同じ花崗岩質土壌でありながら格が違う。香りよりも、味わいの深遠さや、濃密さ。よりダークで、重量感がある。その差はどこからくるのか。一つの理由が熟度の違いである。コルナスの北に位置するアルレット山塊が、ローヌ渓谷に吹きすさぶ冷たいミストラル(北風)を防ぎ、南方のトゥーロー渓谷から温暖な風が流れ込む。そのため、コルナスはエルミタージュやサン・ジョゼフより1週間早く完熟する。もう一つ重要なのが、北のアルレット山塊と南のクルソル山塊のジュラ紀キンメリッジアン紀の石灰質に囲まれているということ。
「これがコルナスの土壌のpHを上げる一つの要因」とヴァンサン・パリスは語る。サン・ジョゼフの花崗岩土壌のpHは5.0前後とかなり酸性だが、コルナスは7.0前後。「低い酸性の土壌から出来るワインは、丸みと力強さ、果実味、リッチさ、そして深遠さが得られる」とエルミタージュのジャン・ルイ・シャーヴも語る。
コルナスの5つの丘にはそれぞれ異なったクリマがあり、ワインの味わいに大きな影響を与える。北西の高台、中部丘陵の斜面、西側のローヌ河に近い低地の3つのゾーンに大別できる。
北西の高台は、「標高の高さが最も重要。高ければ高いほど収穫は遅れる」と言われるようにとても冷涼なエリア。丘を登ると、風の通り道になっていて、常に凄まじい北風で吹き飛ばされんばかり。陽光や暴風に削られた花崗岩は、細かい砂状になっていて、土壌は軽い。標高300mに達するサン・ピエールや、レ・ゼゲ、アルレットなどの区画は、いずれもチャーミングでフルーティな赤果実の香り。マチュー・バレ、リオネの他、新しく開拓した他の村の生産者が所有しているゾーンである。
中部の丘陵地は、東・東南・南向きが中心の花崗岩の急斜面である。北は石灰質粘土の影響を強く受け、中心部は花崗岩の岩石、南側は風化して砂化した花崗岩の土壌と、南北で性格が異なる。最も有名なリューディはシャイヨ(Chaillot)。高い場所は花崗岩質だが、下部は石灰質も豊富。何よりも粘土質のテロワールで、基本的に力強く、ぎっしりと詰まったフルボディでタンニンの豊富なワインとなる。多くの生産者が所有し、単一畑を造るが、オススメは、ギョーム・ジルやヨハン・ミッシェルのもの。エネルギーに満ち、凝縮しかつ、バランスが絶妙である。
レナール(Reynard)は、コルナス最良の畑と言われる。花崗岩の急斜面で、谷の奥に位置するから風の影響を受けにくい。日光が降り注ぎ、力強さとスパイシーな個性を与える。「このワインのテクスチャーは、花崗岩のお陰でよりミネラルに富む」とティエリー・アルマンは語る・彼のワインはエレガンスに満ちた、花の香り高い優美なワインである。まさにコルナスのグラン・クリュ。ジェナル(Geynal)、ラ・フォンテーヌ(La Fontaine)、ラ・コート(La Cote)、マザール(Mazard)の上部、サブロット(Sabrotte)、パトゥ(Patou)などの優良畑があり、コルナスの中核を成している。
全体の4分の1程度だが、西側の低地にも畑が存在する。風化した花崗岩の石ころ、砂、赤粘土、そして石灰質の土壌である。場所によって礫岩が豊富な場所もある。機械のよる耕作が可能で、仕事は中腹に比べると楽だが、ワインは概しておおらかで、密度が厚くなる。ブレンドされることが多く、ここのリューディだけで造る生産者は少ない。代表的なものは、シャンペルローズ(Champelrose)とマザールの下部。
コルナスは絶壁の斜面のワインである。基本的な味わいは垂直的で、メリハリがあり、強い。シラーから造る濃厚で、スパイシーな風味だから、古来よりジビエに合うといわれるが、ジビエといっても種類が多い。どちらかというと、トリ系のジビエに良い。青首鴨のように主張の激しいジビエは、中部区画の畑(シャイヨ、マザール)のもの。鶉や森鳩などは上部区画(サン・ピエールやレ・ゼガ)のゴール土壌のもの。
概して、ブレンドしたものの方が、複雑な料理に適し、単一畑は素材そのものを主体にした料理に。2015年や2013年、2009年、2007年のような力強いヴィンテージは、濃厚なソースでもよいが、2014年や、2012年、2010年のような軽やかなヴィンテージは、さっと炭火で焼いて塩で。ジューシーな盛り合わせものには、全房発酵したワインを。
単純にコルナスを「ジビエに合うワイン」ととらえるのではなく、リューディ、生産者、ヴィンテージなどを手掛かりに「どの種類のジビエに合うワイン」なのかと考える方が楽しいし、コルナスのより深い理解につながる。
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